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2話 おかしくて笑った

ここは?森の中か…

周りには太い木が何本も立っていて視界を遮っている、それに獣の気配が何体か、俺一人ならば全く問題はないが…


戦う事を考えたが腕に抱えた女の子を見て止めた。


この子、ちょっと弱ってる!今の状態でやりあったらこの子が危ない。つい咄嗟にとはいえ俺が連れて来ちまったんだせめて最後まで面倒を見よう!さすがにお父さんとお母さんの所まで連れていくのは無理だけどな…取り敢えずはこの状況を切り抜けねーと!まだどんな危険な森かも分かったもんじゃねぇんだ!


「逃げよう…」


子供の体に負担をかけないように注意を払いながら進んだ。動物の気配のしない方へ方へ。

それから五分ほどたった時もうすぐで道路に出るのか動物のけはいが一切なくなり木漏れ日程度にしかなかった明かりが強くなってきた。


「やっと出てこれた。これで獣に教われる心配は無いな…人、いないかな?」


辺りを見回すがひとっこ一人いない。まぁそれもそうだろうこの道は人に手入れされていた様子があるが雑草の数、それに長さから見るにあまり人の往来が無い道と考えて良いだろう。


ま、マジかぁ!人に会うことを目的にここまで出てきたんだけど。これなら食料も取れる森の中にいた方が良かったじゃねぇか!あぁもう!どうしてこうなるの!?…ただまぁ、いきなり人にあって「助けてください!」とかおかしいからなぁ普通に考えて、その辺を考える時間が出来たと思えば良いだろう。


今日は野営かなぁ?…と、そう考えていると視界の端に馬車が一台走って来るのが見えた。


え?うそ!こんなタイミングで!?おれ完全に自分の身の上話を考える後でいいや、とか思ってたよ?いやいや!これは不意討ちだって!ズルいって!


俺は何もしてないはずなのに軽い焦りと不安を抱えたまま気付けばすぐそこにいた馬車と対峙していた…


冷や汗を流しながら相手の馬車がどう動くか様子を見ているとゆっくりと停止し誰かが中から出てくるようだ。


それは、がたいの良い大男のオッサン?一体なにもの?


「私はこの先の村の警備隊長をしている!君は何者だ!」


ま、まずい…のか?それとも事情を話した方が安全なのか?


「じ、実は!」


「そこの子供!弱っているではないか!何をしている!早く馬車の中に入らないか!急ぎ手当てをしよう」


いい加減相手が焦れて斬りかかってくるのが怖かったので、意を決して口を開こうとしたら…何か知らんが馬車に乗せて女の子を助けてくれた!そうか、いい人なんだな!


この世界で初めて触れた優しさ…!一人で勝手に浸っていると…


「なぁ、この子は随分弱っていた。今は十分な食事を与えたので問題は無いが…。君たち!一体何があったんだ?」


オッサンからの質問だ。


「そうだったな、あの。えっと~。」


俺よく考えたらオッサンのこと名前も知らない!


「あぁ、申し遅れたな。私の名前はロイドだ。」


「ありがとう。俺は…」


そういや俺誰だ?監禁部屋ではダーインスレイブとか呼ばれてたけどそれは俺の中にある魔剣の名前だし…まぁ、前世の名前通りコユキって名乗っとくか。姓名は伏せてな?この世界で姓名を名乗るってことは自分が貴族であることを示すってことらしい。そもそも平民には姓名自体がないらしいしな。

それに…どうやら俺の(ダーインスレイブ)を狙っている奴らがそこら中にいるらしい。俺を殺そうとした盗賊達もそうだったからな。最悪殺してもダーインスレイブが残るらしい…事実かどうかは定かじゃないが


「俺はコユキ。実は…」


ロイドさんにここまでの成り行きを教える。何の実験とかその辺は暈して…

だが、話が後半に近付くにつれてロイドさんが顔を俯かせて震えているんだ。

まぁ険悪な感じはしないので話を続けているが、この人もう車体が揺れるほど震えているもんでさっきから気になって仕方がない。

そして俺が話終わると遂にロイドさんは爆発した


「う、うぉぉぉおおおおん!!!!!」


大きく叫ぶとえぐえぐと泣き出したぁ!?こ、この人泣くのを我慢してたのか?


「が、頑張ったなぁ!!グスッ…一人で辛かったろうに!うぅ…頑張ったなぁ!!」


ロイドさんはそう言って強く抱き締めてくれた。ただ強く。

それだけで俺も心の中から何かが溢れだして来るのを感じたんだ…


ヤバい…泣きそう。俺だって五年間も無事だったわけじゃない、心が壊れてもうどうにでもなれって思った時だってあったんだ!!でも、誰も味方はいなくて。女の子を助けたのだってそうだ!俺はその子に自分を重ねてしまったんだ!味方だと思ってしまったんだ!ロイドさん…ありがとう…!


「うぅ…ひっく。う…うぁぁぁあああ!!」


俺もロイドさんみたいに泣いた。

前世は良い年した大人だってのに、みっともなく泣いた。

そんな俺の背中をずっとロイドさんはさすってくれていた、安心する…

前世、父さんも母さんもいなかった、俺は生まれてからずっと孤児院育ちだったんだ。

だから思った、父さんがいればこんなんなのかな?


父親がいるみたいで、嬉しくて更に泣いた。


そんで二人とも泣き声が止まると、おかしくて笑った。

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