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午前の部その3 海獣ショーと昼食





凄まじく短い癖に前回より更新遅くなってやんの……

―11:30・ショースタジアム―


 足場つきのプールを取り囲む階段状の座席は、既に大勢の観客でごった返していた。幸いにも一行は早めにたどり着いたため余裕を持って席を確保できたようだが、中には本来座席でない場所に座っている観客や、立ち見をしている者までいる。


「凄い人……やっぱり人気なんだね」

「イルカにアシカ、アザラシだからな。家族連れはこぞって見たがるだろう」

「もしくはトレーナーが滅茶苦茶美人のお姉さんだったりとかじゃね?」

「いやそれ、シオンさんの願望じゃないですか……」

 一行があれこれと暫く適当に語らっていると、やがてショー開演のアナウンスが響き渡る。

「おっと、そろそろ始まるようだな。言い忘れていたが、この水族館の海獣ショーは獣もさることながらトレーナーが名物でもあるのだ」

「って事は、やっぱり美人で巨乳の……」

「いや、面白いってだけで女性とは限らないんじゃないですか?」

「まあ、見ていればすぐわかるさ。本当にキャラの濃い奴なのでな……」

 そうこう言い合っている内に水槽仕立ての半円形プールへと三頭のイルカが、ステージへとアザラシやアシカがそれぞれ放たれ、陽気な音楽に合わせた華麗な泳ぎで観客を出迎える。そして音楽が終わりに差し掛かった時、イルカの一頭に押し上げられるようにして水上空高くへと何かが躍り出る。


 突然の出来事に息を呑んだ観客たちが目の当たりにしたのは、イルカの跳躍力を借りて空中で華麗に宙返りを決める人影――より厳密には、ウェーブがかった銀の長髪を棚引かせた体格スタイルのいいコーカソイドと思しき女――であった。黒いウェットスーツに身を包んだ女は雄々しくも華麗にステージへと着地して見せる。その動きには一切の無駄がなく、観客席は少しの沈黙の後割れんばかりの拍手と盛大な歓声に包まれた。

『はい、どうもー!どうもあんがっとーぅ!いやマジであんがとーぅ!』

 ウェットスーツの女はマイクを片手に軽々しく陽気な挨拶で観客席に愛想を振り撒きながら、適当なトークを交えながら相方である海獣達を紹介していく。


「見ろ皆、彼女が先ほど言った"名物トレーナー"その人だ」

「ほう、あれが……」

「ほれ見ろワラ!やっぱり俺の予想は間違ってなかった!名物トレーナーってのはやっぱり美人で巨乳のお姉さんだったんだよ!」

「あーはいはい、そうでしたねぇ。それでコドセルさん、あのトレーナーさんってどんな人なんですか?」

「うむ。彼女の名はリューラ・フォスコドル。モデルやグラビアアイドルとしても十分通用するといわれる美貌とスタイルに、プロのアスリートにも引けを取らない凄まじい身体能力、そして元軍人で現役狩人兼コメ農家兼海獣トレーナーという真偽不明な上によくわからん肩書の持ち主でもある」

「うわぁ、本当によくわかんないわねその肩書……」


 そうこうしている内に、ステージに(恐らく立体映像によるものであろう)コミカルにデフォルメされた動物のキャラクターが現れた。枯れたような声とクールかつワイルドな喋りから察するに雄であるらしいそのキャラクターは、トレーナーのリューラと漫才めいた掛け合いを繰り広げる。それと同時にイルカやアシカ、アザラシという海獣達も本格的な曲芸を開始し、音楽に合わせた派手で豪快なように見えて無駄のない動きで観客たちを魅了する。


「あのキャラクターの名前はケートス君と言う。水族館に存在するマスコットキャラクターの一つだ。不思議な隕石の力で化石から甦った古代クジラという設定らしい」

「何なんだそれは……」

「隕石万能過ぎじゃね?」

「しかも古代生物の割に世間知らずということはなく、わりと複雑な現代事情にも深く通じているとか」

「益々わけわかんない設定ね……」

「因みに声を当てているのはこの水族館に勤める古参飼育係のバシロ・ジゴール氏らしい」


 その後もコドセルはタイミングを見計らいながら海獣ショーに関するあれこれを解説していった。その解説が果たして意味を成したのかどうかは分からないが、ともあれショーはトレーナーとマスコットの漫才を交えて進んでいき、遂に後半へと差し掛かる。


『有ん難ぉーぅッ!有ん難ぉぅッ!』

『愛してんぜ観客共っ!お前ら最高だぁ!』

『さぁ、そんでもってショーも後半、いよいよ佳境って所なわけだが……』

『おおっと、もうそんな時間か。だったらあいつ等を呼ぶっきゃねーなぁ!』


「あいつ等?」

「この海獣ショーが人気である要因の一つだ。見ていればわかる」


『さぁ呼ぶぜ皆っ!』

『腹ン底から声張り上げろ!』

『『『『『アンボイニャーン!』』』』』

 トレーナーやマスコットの呼び声と観客達の声援に促されるようにスタジアムの壁に備わったモニターへ電源が入り、海底都市を思わせるアニメーション映像が映し出される。ライブステージのようなそこには四人組のバンドマンと思しき者達が佇んでおり、それらは何れも海洋生物をヒト型にしたような姿をしていた。


「あれがケートス君に並ぶこの水族館のマスコット、有毒系バンド『ザ・デンジャー・アンボイニャン』だ」

「有毒系バンドって……」

「読んで字の如くだ。彼等は何れも毒を持つ海洋生物をモチーフにしたバンドマンのキャラクターだからな。彼ら自身を始めとする、海洋生物をテーマにした楽曲を演奏しているらしい」

「いや、それは分かるが何故毒を持った生き物なんだ?」

「何でも『海の面白さと危険についてより深く知って貰う為』だというぞ。因みに声を演じているのは『ザ・ブッコロガシ・クロッカス』という実在するロックバンドでな。演奏も本人達のものなら楽曲も本人達が手掛けているらしい」

「CDは出しているんですか?」

「勿論だ。この水族館の売店のみの限定品だが様々なグッズが販売されていて、その中にはちゃんと音源も含まれているぞ」


 コドセルが話し終えるのと同時に『ザ・デンジャー・アンボイニャン』のライブが開始される。

 音楽に合わせた華麗な動きを披露する海獣達の姿も相俟って、ライブは始終大盛況のまま終わりを迎えることとなった。


―12:15・館内レストラン―


 海獣ショー(ついでのライブ)を見終えた一行は、腹拵えにとコドセルの案内で館内に存在する食堂を訪れていた。


「広いわね……田舎のファミリーレストランより広いんじゃない?」

「うむ。俺も最初知った時には驚いたものだが、『五感全てで海の生物を楽しんで欲しい』という館長の意向によるものらしい」

 そんなコドセルの返答に、カンナは『なるほど』と深く頷いた。

「メニューの傾向は和洋折衷何でもござれ。但しメインで使われている食材は全て何らかの海洋生物に由来するものだ」

「徹底してるんだな」


 かくして一同は館内レストランにて多種多様な海の幸をふんだんに用いた様々な料理を堪能し、コドセルの奢りで会計を済ませ観光を再開する。

次回、午後の部スタート。更新何時になるかな……

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