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隠されたトリック

 テレサの推理に西木野たちは納得した。だが柊と夏海は彼女の推理には穴があると思った。

「テレサさん。あなたの推理には欠陥があると思うが。まずあなたは外部犯説を否定するために、関川さんの部屋の窓がこじ開けられていない所を根拠にした。だが現場のドアは開いていた。つまりこの部屋の窓を破ること以外の方法で外部犯が侵入したという可能性は否定できないはず。さらに外部犯は吹雪が発生する前にこの山荘に侵入したとしたら、吹雪で足跡が消えてしまい外部犯説を否定する根拠がなくなる」

「つまり柊さんはこの殺人事件が外部犯による犯行であると考えているということかな」

「外部犯も視野に入れて推理するだけだ」


 柊とテレサは対立する。吹雪の山荘を舞台にした殺人事件。そこで2人の推理対決が始まる。

「村上さんは警察に連絡。その他の人は食堂にいてください。外部犯が潜んでいるかもしれないので出歩かないでください」


 夏海は容疑者たちに指示を与える。容疑者たちは彼に指示に従い食堂の方向に歩いて行った。

 そして柊と夏海。テレサの3人は犯行現場となった関川の部屋で実況見分をする。


 まず柊と夏海は関川の遺体を観察する。関川の遺体には鋭利な刃物で刺されたような傷がある。

「殺害方法は刺殺。もしかしたらこれは20年前の強盗殺人事件に見立てた殺人事件かも。だとしたら凶器が現場から発見されなかったことも説明できるよね」

 テレサは独り言のように呟く。殺害現場にはトリックの痕跡はなかった。普通の部屋に遺体が転がっているだけ。

「つまり犯人は関川さんを刺殺しただけ。この事件にはトリックがないということか」

 柊の推理にテレサも頷いた。

「私も同じことを考えていたよ。でもトリックはこの現場にないだけだよね。アリバイトリックや凶器消失トリックとかもあるかも」

 柊たちは一通り現場検証を終わらせた。殺害現場には犯人を特定する証拠はなかった。もちろん外部犯説を否定する証拠も。


 食堂に向かっている柊たちの前に村上が血相を変えて現れた。

「大変です。電話が繋がりません。何者かに電話線が切断されたようです」

 その一言を聞きテレサは頬を緩ませた。

「これで警察の到着がさらに遅れた。この山荘では携帯電話が圏外。つまり我々は犯人によって完全にこの山荘に閉じ込められたということ。おもしろくなってきたね」


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