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強運の探偵

 12月下旬。新潟県。一面が銀世界で覆われている。そんな雪原にひっそりと建っている山荘に柊と夏海は訪れた。

 

 山荘の玄関のドアを開けるとオーナーらしき男が2人を出迎えた。男の特徴は背が高く黒い眼鏡をかけている。服装は黒いスーツ姿だ。

「柊様と夏海様ですね。私はこの短冬山荘オーナーの村上要むらかみかなめと申します」

「他の晩餐会参加者は」

「はい。他の皆様は取材に出かけられました」

 柊たちは取材と聞き首を傾げた。

「取材というのは何でしょうか」

「ご存じないのですか。今晩この山荘に集まる皆様はドラマの撮影スタッフ。脚本家のテレサさんはロケハンの宿泊先としてこの山荘を予約されました」

 柊たちがリビングに入ると、玄関のドアが開き、6人の男女が入ってきた。オーナーの村上は彼らに一礼する。

「皆様。お帰りなさいませ。中で柊様方がお待ちです」

「柊様方って誰だ」

 若い茶髪の男が呟くと、金髪碧眼の女が頬を緩ませた。

「今晩のゲストだよ。彼らがいたら今晩は退屈しないでしょう」

 6人の男女がぞろぞろとリビングに入った。金髪碧眼の女は暖炉の前にいる柊たちに握手を求める。

「初めまして。私は脚本家のテレサ・テリーです」

 柊とテレサは握手を交わした。

「初めまして。柊探偵事務所所長の柊と申します。ところで今晩の晩餐会参加者はこれで全員でしょうか」

「そうですよ。この山荘の客室は8室。1人1室で予約しました。まあこの山荘の客室は8室しかないから、今晩は我々の貸し切りだけどね」

 テレサの言葉を聞き柊はため息を吐いた。そんな柊を心配してテレサは声を掛ける。

「どうしたのですか」

 夏海は柊の代わりにテレサの質問に答えた。

「気にしないでください。面識のないテレサさんに呼ばれたのは、江角千穂さんの推薦だと思ってここにやってきただけですから」

 夏海の口から思いがけない名前が聞こえテレサは驚く。

「嘘。もしかして江角ちゃんの知り合い」

「ああ。千穂ちゃんとは探偵同士の合コンで知り合った。江角ちゃんと呼んだということは、テレサさんが彼女の友達ということか」

 立ち直りの早い柊はテレサに質問する。テレサは微笑みながら答えた。

「友達。そんな物だとよかったけど、彼女とは少し因縁があるんだよ。長くなるから詳しくは話さないけどね」

「それでなぜ我々をこの晩餐会に招待しようと思ったのか説明してくれないか」

「江角千穂ちゃんが悪いんだよ。彼女が現実の事件を解決しないから。どこの馬の骨だか分からない探偵コンビが現実の殺人事件を解決したと聞いた時は驚いたよ。まさか江角千穂ちゃんより先に現実の殺人事件を解決する探偵が現れるなんて思わなかったから」

「千穂ちゃんと推理対決をした覚えがないが」

「推理対決なんてしなくても分かるよ。運が良かったから江角千穂ちゃんより先に現実の殺人事件に遭遇した。そしてその現場で見事に事件を解決した。ただそれだけの話でしょう。あなたたちは運が良かっただけで、その現場に江角ちゃんが居合わせたら、あなたたちより先に真相を見抜いたということが言いたい訳」

 運が良かったとは侵害だと柊たちは思った。柊たちは好きで殺人事件に巻き込まれた訳ではない。運が悪かったのだ。人が一生の内に殺人事件に巻き込まれる確率は少数だろう。


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