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芸能界の闇

 今から7か月前、西木野正樹はドラマのロケハンの宿泊先、東京ミネルヴァホテルにやってきた。そこで彼はホテルの看板娘、村上姫香に出会う。西木野正樹は彼女の可愛らしい美貌に一目ぼれした。婚約者の谷村あかりのことを忘れるほどに。

 

 ドラマのロケハン最終日、西木野正樹はさりげなく彼女に自分の携帯電話のメールアドレスを渡した。それから西木野正樹と村上姫香はメールをする仲となった。


 西木野がオフの日、村上姫香と彼は毎週のようにデートを重ねた。そして記念すべき十回目のデート。夕日が沈みかけた頃、遊園地で村上姫香は告白を始めた。だがこれは愛の告白ではなかった。

「私。ホテルの看板娘を辞めて女優になるから。そうしたらあなたと一緒にいる時間が長くなるでしょ」

 彼女の決意は固かった。西木野正樹は彼女を後押しするしかなかった。この時2人は知らなかった。2人の恋は終わりを迎えようとしていることを。


 翌日西木野正樹は関川監督に呼び出された。緊迫した空気の中関川は重たい口を開く。

「実は君が一般女性と交際しているという情報が週刊誌に載ろうとしている。さらに君が主演する映画のオーディションに君と交際している一般女性が参加するらしい。そんなことも週刊誌にバレたら、君のイメージが悪くなる」

「イメージアップのために彼女と別れろということか」

「確か君には婚約者がいたよな。その事実と一般女性と交際しているという事実が重なれば、二股疑惑として俳優生命が絶たれることとなる。いずれにしろ君は終わりだよ。彼女と別れない限り」

「それなら彼女をオーディションに受からせたらいいでしょう。そうなれば事実を映画の宣伝として隠蔽することができる」

「それはダメだ。あのオーディションは出来レース。主演女優は既に黒崎愛衣に決まっている。それだけは変えられない。それに事実を隠蔽したとしても、ヤラセ疑惑が晴れない。スキャンダルとなれば映画がお蔵入りとなる」


 それから何もできないまま、村上姫香はオーディションに落ちた。その夜、村上姫香はビルの屋上にいた。彼女の手には携帯電話が握られている。彼女は西木野正樹に最期のメールを打つ。

『関川監督にオーディションの時、才能がないって言われた。さらに『あなたと別れないとあなたが大変なこととなる』とも言われた。夢が壊された気分がする。あなたの夢を守りたいから死にます。さようなら』

 そのメールを打つと彼女はビルの屋上から身を投げ出した。


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