英雄は酒ビン片手に武器を振るう3
ついに終わる彼らの遭難生活。そして続きは・・・
「…全員止まれ。」
「どうかしましたか、少尉?」
とある森林地帯を行進する10人前後の一団…。その一団は全員機械的な装甲に身を包み、各自その手には自分の身長に匹敵する重火器を装備している。
彼らはこの世界に存在する二大国家の片割れ、科学主義国家『キルミアナ帝国』の精鋭部隊『対魔装甲機兵団』である。現在、この集団は戦場の哨戒任務を真っ当していたのだが…。
「今、何か聞こえなかったか?空の方で爆音が…。」
「いえ、自分は何も…。」
「少尉!!」
突如叫んだ部下が指差した方角を見ると、上空に何かが煙を吐きながら漂っていた…。
「あれは飛行船ですかね…?」
「馬鹿な…。対空防御システムは勿論のこと、砲撃魔法が異常に発展したこの世界で航空機の類は衰退したはずだろ?」
長き戦乱の時代の結果、ほぼ確実に対象を撃ち落せる射撃システムを両陣営が開発したため、この世界で空を支配していた戦闘機や爆撃機たちは活躍の場を失った。そのため、現在では『装甲兵』や『魔導騎士』による白兵戦及び砲撃戦等の古臭い戦闘がもっぱら普通になっている。
「となると、空賊か…。」
だが、例外も存在する。それが空賊達の飛行船である。確かに航空機の類は戦場でお役御免になった。しかし、それはあくまで“戦場では”というだけであり、拠点や移動手段などに関するアドバンテージは揺らぐことは無かった。なので、真正面から真面目に戦うなんて真似をしない限り、航空機の存在価値は未だに健在なのだ…。
「墜としますか?」
「ほうっておけ。あれでは、どの道…。」
言ってる傍から上空の飛行船は徐々に高度を下げていった。思った通りあれは何らかの理由で墜落寸前だったようだ…。しばらくして飛行船はそのまま視界から消え去り、時間差で遥か彼方の方からズズンという鈍い低重音が響いた。
「墜ちましたね。」
「ふむ、船の持ち主が指名手配犯の可能性もあるな…。曹長、基地に通信!!『我敵ト思シキ船発見セシ』。」
「了解。」
慣れた手つきで通信機を起動させ、自分たちが拠点とする前線基地に連絡を取ろうとしたその時…。
「…ん?」
「対人レーダーに反応…誰か来ます!!」
「総員、警戒態勢!!」
装甲に搭載しているレーダーが何かを捉えた…。
「反応は2!!いずれも魔力反応あり、こちらに直進してきます!!」
「王国軍か…!!」
部隊長は内心で舌打ちした。自分たちは帝国最強の一角を担う精鋭…。その名声は敵国である『マルディウス王国』にまで響いており、大抵の部隊なら自分たちを確認した時点で逃げに徹する程なのだ。
しかし…それに真っ向から挑みかかり、尚且つ互角の戦闘能力を有する部隊が存在した…。
「王家直属『魔法近衛騎士隊』…!!」
魔導、魔術、錬金術…あらゆる技を巧みに操り、三千年もの間魔法に抗う術を編み出し続ける帝国を未だに脅かす存在。それが『魔法近衛騎士隊』
---通称『魔衛士』
「うろたえるな!!軍曹は伍長たちを連れて左翼、曹長は私と右翼に展開!!」
「了解!!」
「了解!!行くぞケイド伍長、カルナ上等兵!!」
軍曹と呼ばれた隊員は部下を数名連れて移動を始めた。部下たちの移動を確認した紅い(・・)装甲の部隊長は、自分の副官である曹長と数名の隊員を引き連れ、反対側に陣取る。
森の木々や草むらに潜み、会話を無線通信に切り替えつつ敵を待ち伏せた…。
『目標、依然速度を落とさずに直進中。接触まで30秒…。』
『各員に告ぐ。目標を視認しだい一斉射撃。後に私と軍曹が突撃、他は援護しろ。』
『『『『了解。』』』』
『……はぁ?…なんだこりゃあ!?』
敵との遭遇を目前に緊張感が高まったその時、レーダーを見張っていた隊員がいきなり叫んだ。何事かと思い、問いかけようとしたその時…。
「うおおおおおおお!!やべえええええええええええええええええええええええええ!!」
ほんの少し気を散らしたその時、彼方から標的の一人が全力疾走してくるのが見えた。遠目でよく確認できないが、男のようである。一昔の船乗りがよく被ってそうな三角帽子から金髪がちらついており、黒いチョッキに白いズボン、その上に蒼いコートを身に纏っていた。腰には黒いサーベルをぶら下げている…。
男が何を理由に走っているのかは理解できなかったが、自分たちが待ち伏せをしていることに気づかれる前にと思い、全員が銃の引き金を引こうとした……その時…。
「待てえええええええええ!!」
「馬鹿、こっち来るなあああああああ!!」
どうやら、もう一人の標的が現れたようだ…。もう一人はフード付のローブと装飾入りの軽鎧を身に着けており、手には1メートル弱の杖が握られていた。顔はフードのせいで確認できないが、あの装備は間違いない…。
『一人目はともかく、二人目は確実に魔衛士!!各員、狙いを二人目に集中させ…』
『少尉、やばいです!!レーダーにもうひとつ反応が!!』
今まさに攻撃の合図を出そうとしたその時、先ほど叫びだした隊員が再び声を出した。だが、聞き捨てならない内容ゆえに自分のレーダーを確認する…。
その瞬間、自分の顔から血の気が無くなっていくのがよく分かった…。
『…な、なんだこれは?』
『でかい…。』
レーダーに映ったのは明らかに巨大すぎる反応…。使い慣れた装備故に、対象のサイズがすぐに分かってしまうこの時ほど恨めしい瞬間はなかった。
『20mはあるぞ!?』
『目標、間も無く視認可能距離に!!…来たぁ!!』
『ッ!!』
わが目を疑い思わずレーダーを凝視し続けていた彼女は、部下の悲鳴のような報告を受けて顔を上げた。そして、最初に目に入ってきたのは二人の男と…。
---大口を開けて迫ってくる『竜』だった…。
「うっきゃあああああああああああああああああああああ!?」
---ゴツン
「つおおおぉぉぉぉぉぉっ!?」
「だ、大丈夫ですか少尉!?」
一週間ほど前に経験した恐怖の記憶を夢で見てしまい、思わず飛び起きたフィノーラ…。だが、何故か自身のデコに鈍い痛みと久しぶりに聞く部下の声を感じた。
「痛たた…。はっ、曹長?」
「御無事でなによりです、ヴェルシア少尉!!」
目の前に、一週間程前にはぐれた曹長が居た。どうやら自分のことを心配して顔を覗き込んだ曹長の、それも魔法の直撃にも耐えれる装甲兵のヘルメットに頭突きを喰らわせて悶絶したようだ…。
額に残る痛みに内心呻きながらも状況を確認するフィノーラ。自分の周囲には昨夜殲滅した盗賊達から強奪した食料の残り、目の前には燻ぶった焚き火に自分の副官…。
さらにその周りを見てみれば、自分の部下が全員揃っていた。フルフェイスのメットのせいで表情は見えないが、確実にどいつもこいつも笑いを堪えているのは感じた…。
「しかし焦りましたよ…。よりによって竜と遭遇したあの日、少尉の行方がわからなくなった時は…。」
「心配かけてすまん。だが、この通り私は大丈夫だ…。」
遭難生活を始める羽目になった初日、竜から逃走するドサクサに通信機が壊れたと知った時は軽く絶望した…。それでも日頃の訓練の成果もあり、死にかけることは無かった。
---なにより、あの2人が一緒だったからこそ…。
「…ん?」
そこで気づく。今、自分は遭難生活1週間目の朝を迎えたところである。自分が居る場所は間違いなく昨夜決定した自分達の寝床……そう、自分達の…。
「曹長、ここに居たのは私だけか?」
「?…はい、少尉しか居ませんでした。」
---彼らは何処に行った?
フィノーラが寝てた自分達の野営地から少し遠く離れた場所で、二人の男が並んで立っていた。片方は金髪で船乗りの格好を、もう一人は黒髪でローブと軽鎧を身に着けていた…。
「しかしまぁ、よかったのか?」
「…何がだい?」
金髪の少年…ヴィリアントが隣に立つ黒髪の少年に声をかけた。
「フィノーラと何も言わずに別れたことだよ。」
「しょうがないだろ?彼女の仲間が迎えに来たのなら、彼らと合流させる方がいいに決まってる。」
自分達は敵国の騎士と犯罪者…彼女の祖国と相容ることはできない。彼女の部下が近づいてくることを察知したときには既に迷うことはなかった。
無防備すぎるくらいスヤスヤと眠る彼女に無言の別れを告げ、二人はこっそり立ち去ったのだ…。
「それに、いつかはこういう日が来るのは分かってたさ…。」
「…そうかい。」
どこか諦めたように呟く黒髪の少年…アストの様子に、ヴィリアントはもう何か言うのは止めることにした。実際、アストの言うことは正しいと言えば正しい…。
「だからって、お前までこっちに来ることは無いだろう…?」
「僕の任務はコレの討伐。それに一週間寝食を共にした仲だろう?水臭いじゃないか。」
『グルルルルルルル…』
意識を目の前に戻す二人。するとそこには、牙を剥き出しにして唸る巨大な生物が居た。全身を赤い鱗で包み、巨大な翼を広げながら尻尾をしならせてアスト達を威嚇する…。
その大きさは圧倒的であり、全長は20mはあろうかというサイズである。その巨大な生物は、自分と比べればネズミのような存在であるアストとヴィリアントに全力の敵意を向けていた…。
「…しかし、ここまで追ってくるとはなぁ。」
「巣に宝物でも置いてたんじゃない?」
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
---3人が出会い、共に過ごす原因となった『竜』が居た…。
不意に雄たけびを上げた竜。その咆哮は森林地帯にどこまでも響き、遥か彼方にいた原生生物達が悲鳴を上げながら逃げていくのが感じられた。近くに居たであろう小動物たちに至っては気絶するかショック死したようで、逆に静かである…。
その咆哮を至近距離で感じても2人とも動揺する事は一切なかったが…。
「宝物と言えば、ホレ。」
「ん?」
ヴィリアントが何かをアストに投げ渡した。難なくそれを受け取ったアストは、それを見て意外そうな表情を見せた。
「僕が先でいいのかい?」
「いいさ。フィノーラには悪いが、今飲まないといつになるか分かんねぇし…。」
投げ渡されたそれは、遭難生活初日にヴィリアントが拾い、3人で取り合ってよく喧嘩した例の『酒瓶』である。最終的に遭難生活が終わるその日に3人で飲むことが決定していたのだが、ヴィリアントはチャッカリ持ってきたようだ…。
「抜け目無いねぇ。流石、空賊…。」
「いいから早く飲め。このトカゲ野郎が本格的にキレる前に。」
「はいはい、それじゃあ遠慮なく…。」
片手は武器である杖で塞がってたので、口で瓶のコルクを抜いてそのままグビグビと飲み始めるアスト。口の中に入った瞬間に感じるアルコール独特の苦味。長い間文明的な飲み物とは無縁だったため、薄っすら懐かしい感じもする…。ずっと持ってるだけだったので、味が気になってしょうがなかったが、成るほどこれは…。
「……安物だね…。」
「ブッ飛ばすぞテメェ…。」
魔衛士は実質エリート集団なので、アストはある程度贅沢に慣れていたりする…。
「ははは、ごめんごめん…。でも、美味しいや。」
「たっく…。そろそろこっちにも寄越せよ。」
「はいはい分かったよ、ほら。」
いつの間にかサーベルを引き抜いていたヴィリアントが催促するように手を差し出してきたのを見やり、若干めんどくさそうに酒瓶を投げ返した。投げられた瓶はゆっくりと宙を舞い、やがて突き出された手にしっかりとキャッチされた。
「…。」
「…。」
「んぐんぐ…ぷはぁ!!悪くない、むしろ美味い!!」
---二人の間に割り込んだフィノーラの手にしっかりと…。
思わず思考がフリーズする2人。馬鹿でかい銃を片手に、茶髪をなびかせながら一気飲みするその姿は、男であるアストより男らしかったが今はどうでもいい…。
どうにか我に返ったヴィリアントが先に口を開いた。アストは訳あって未だに固まっているが…。
「…フィノーラ?」
「どうしたヴィリアント?」
「『何でここに居る』とか『俺の分は残せよ』とか色々言いたいことはあるがとりあえず…。」
ヴィリアントはフィノーラが手に持つ瓶を指差し、そしてアストのことを指差して一言…。
「間接キス。」
「ッ!!?」
「…。///」
自分がノリで何をやってしまったか今更ながら気づき、アストと同じように顔を赤くしながら固まるフィノーラ…。うろたえる様にアストと酒瓶を交互に見ていたが、やがて…。
「…んぐ!!」
「あぁ、テメッ!!」
ヤケクソ気味に全部飲み始めた…。ヴィリアントの声を無視するように飲み続け、まだ半分以上は残っていた中身を最終的に空っぽにした。顔が更に赤くなったが、その理由の大半がアルコールでは無いというのは確実だろう…。
結局拾った本人が一口も飲めずに終わるという結果になった…。
「ぷはぁ!!」
「…で、何でここに居るんだ?」
フィノーラに若干涙目で訊ねるヴィリアント。それに対して彼女は当然のように答えた。
「部下と合流したのだ。ならば、本来の任務に戻るのは当然…。」
「…。」
「ッ…。」
無言のヴィリアントに対し、アストは一瞬だけ体を震わせた…。こうなると思ったからこそアストは黙って彼女と別れたのだ…。
---惚れた相手と殺しあうことになるのを恐れて…。
そのことを知ってか知らずかフィノーラはアストを真っ直ぐ見ながら言葉を紡ぎ始めた。アストは思わず視線を逸らすが彼女は続ける…。
「貴様らと戦いにきた。」
「…。」
「……フィノ…。」
思わず杖を握る手が強張る…。この1週間で彼女の実力はよく理解していた。自分と互角なのも、手加減が通じる相手では無いということも…。
故に、戦って迎える結末は確実に悲しいものになる…。
「……やっぱり、こうなるのか…。」
「当然だろう?」
「どうしても戦うのかい?」
「私は帝国の軍人だ。そして貴様は王国の騎士だ…。」
そう言い放つ彼女の瞳に迷いは無い。本来なら彼女の方が正しくて、自分の方が間違っているのだろう。戦争相手の国の軍人に恋をするなんて…。だが、それでも自分は彼女のことが…フィノーラのことが…。
---好きなんだよね…。
「何か言ったか?」
「何でも無いよ…。ただ、僕達は会うべきじゃ無かったと思っただけさ…。」
こんなことになるぐらいなら、最初から会わなければよかったと…いっそ彼女に殺される方がマシだったとアストは思った…。そうすれば、こんな状況には…。
「…アスト、何か勘違いしてないか?」
「え…?」
憂鬱の思考にのめり込む直前にフィノーラが口を開いた。逸らしていた視線をフィノーラに向けると、彼女は悪戯が成功したような微笑を浮かべていた…。
「言葉が足りなかったようだな…。私は、貴様らと“共に”戦いに来た!!」
フィノーラの言葉とほぼ同時に、アストとヴィリアントは背後に気配を感じた。後ろを振り向くと、全身に装甲を纏った帝国の精鋭部隊である『対魔装甲機兵団』が十人程立っていた。
それを一瞥しながらフィノーラは視線を前方の竜に移し、声を張り上げる。
「各員、破壊目標を目の前にいる竜に固定!!他には目もくれてやるな!!」
「「「「「「了解!!」」」」」」
「魔衛士と空賊はどうしますか?竜と戦ってる最中に“うっかり”逃げられるかもしれませんよ?」
「竜が相手なら仕方ない!!」
「ですよね~、竜が相手なら“仕方ない”ですよね~。」
目の前のやり取りに唖然とする二人…。戦うことを覚悟していたアストに至っては呆然としていた…。だが自然と笑みがこぼれてきたことを考えると、このことを自分でも喜んでいることが分かる…。
「フィノ、君って奴は…。」
「せめて一言ぐらい言ってから居なくなれば、私だってこんなことしなかったさ…。ましてや怒り狂った竜の相手なんて…。」
ようは仕返しを兼ねてさっきの紛らわしい台詞を言ったようだ…。タチの悪いドッキリをされ、それが分かったアストは脱力しそうになったが、フィノーラがこっちを見ていたので堪えた。
「それにだ…。」
「ん?」
「一週間、寝食を共にした仲でしょう?水臭いわよ。」
綺麗な微笑を浮かべ、緑色の瞳で見つめながら彼女はそう言った…。
「フィノ…。」
「オイお前ら、いい加減にしろよ…。」
一瞬意識が飛びかけたアストだったが、二人のやり取りで空気になってたヴィリアントがついに空気を読むことを辞めた…。この1週間で大分見慣れたつもりだったが、やはり独り身の自分には辛い…。
「ついでに二人とも、後を見ろ…。」
「なに?」
「…げ。」
言われて振り向くと、そこには依然として彼女の部下が立っていたのだが様子がおかしい…。なにやらブツクサ言ってるようだが遠くてよく聞こえなかった。だが、人より耳がいいアストには彼らの会話がしっかり聞こえていた…。
「あ、あの少尉が微笑んだだと!?」
「しかも滅多に体験できない少尉の女口調まで!!」
「許せん妬ましい羨ましい悔しい!!俺達でさえ未経験なのに!!」
「曹長、奴の抹殺許可を。王国の騎士なら殺しても問題無い筈です。」
「落ち着け馬鹿共。少尉の恩人達に手を出すことは許さん。」
これが終わったら全力で逃げることを決意したアストだった…。ヴィリアントは内心『ザマァ』とか思っていたが口には出さない。
結果的に自分以上に空気を呼んで待ち続けてくれてる竜の相手をしないと可哀想だからである…。
「さ~て、なんとも奇妙な結末だな。竜から逃げて始まり、竜と戦って終わるとは…。」
---自身のサーベルを竜に向け、苦笑いしながら呟くヴィリアント。
「ある意味、王道じゃないかな?…物語の終わりにしては。」
---アストは杖を構え、その先端に魔力を集中させ始める…。
「2人とも…終わり終わりって言うけど、これでサヨナラなんて言わないでよ?…寂しいから……。」
---担いだ銃の安全装置を外し、フィノーラは銃口を竜に向けながら言葉を紡ぐ…。
それに合わせるように背後の装甲兵達も武器を構え、銃の引き金に指をやる。対する竜も再度張り詰めた雰囲気を感じたのか、全身を屈めるような体制を取った。そして…
「それじゃ行きますか!!」
「遅れんなよ酒飲み16歳!!」
「貴様らと2歳しか変わらんわ!!」
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
---互いに敵同士で場所は戦場。本来ならば怒りと憎しみしか存在しない筈のその空間。にも関わらず、3人の声はどことなく楽しげだった。まるで、生涯に渡って長い付き合いになる仲間のように…。
この後、竜を撃退した装甲機兵団は2人の空賊と魔衛士の身柄を拘束した。ところが、部隊の全員が“うっかり”閃光弾を落としたことにより部隊は混乱。そのスキに逃亡されたのこと…。
空賊は仲間と合流したのか新たな船で相変わらず帝国と王国にちょっかいを出しており、魔衛士は惚れた相手に会うために前線に居座ったそうな…。彼の気持ちを知ってか知らずか、それに応えるように彼女もまた前線の基地に留まり続けている。
こうして3人の出会いは終わった。だが、同時に彼らの物語が始まるのだった…。
「フィノ、それ投げちゃえ!!」
「せい!!」
「あぁ!!せめて瓶くらい持ち帰らせろよ!!」
次回から連載形式で続き書きます。