終章
ケヤキ並木の木漏れ日のもとで、ワタシとヒカリは木製ベンチに腰かけて、失われた時をとり戻すように長い時間話しをした。
ヒカリは、未熟児網膜症のため生まれながら目が見えなかった。五体満足に生まれた自分を申し訳なく思うとともに、もっとも最低なウゾウムゾウの自分を恥ずかしく思った。
しかし、ヒカリの左手首にも白いサポーターが巻いてあり、ワタシは、ヒカリの左手首の白いサポーターの上にそっと手を乗せて尋ねた。
──この白いサポーターは?
ワタシも白いサポーターをしているのよ。
ヒカリは、恥ずかしいそうに躊躇いながらも応えてくれた。
──リストカットしていたから。
それでサポーターで隠しているの。
──ワタシも同じよ!
リストカットの痕なんてほかの人に見せられないもの。
でも、この傷痕は、きっと弱きものの世の中への復讐の証ね!
ケヤキたちがまた風に揺れた。ワタシは、ケヤキたちが笑っているように思えた。
ケヤキたちの樹冠から陽光が漏れる。今日もすべての生命を育む太陽が存在している。ヒカリは太陽の光をじかに見ることはできないが、強く感じることができるといった。
まことのひかりとは、ヒカリが感じているひかりかもしれない。
またケヤキたちが風に揺れた。
すぐそばの、木漏れ日が円を描いて点在する遊歩道を、ベージュの髪のオトコと、1匹の白にゴールドの体毛の小犬が、なにかを希求するようにケヤキたちを見あげながら散歩していた。
するとヒカリが、微笑みながら風のように囁いた。
──小犬がいるわ!
つぶらなくもりのないまなこの小犬ね。




