第3章
ラブホテルから出ると、すっかり空は暗灰色の雲に覆われ雨が降っていた。すぐにワタシは、ウゾウムゾウの中年男性から逃げるように駆けだした。背後から中年男性の叫ぶ声が聞こえたが、もちろん無視をした。
晩翠通りから一番町商店街へ向かって走っているあいだ、ブルーのキャスケットをぬいだ顔には雨粒が降りそそぎ、涙まで流してくれた。
この地球では、むかしから雨は循環している。だから「森」に降った雨も、樹々が雨滴を吸収しやがて蒸発して水蒸気になる。
でも水蒸気もそれだけでは雲になれない。
空気中のちりやほこりにくっついてはじめて雲になれる。そしてその雲から、また雨が地上へと降り注ぐ。
ワタシたち生き物も、太陽の光がなければすべては成り立たない。恒星である太陽の光がワタシたちを育んでいる。
それは宇宙の声!
ひとつの宇宙の照明がすべてを照らしている。
まことのひかりが……
ずっとワタシは、まことのひかりをさがしてきた。
一番町のアーケード商店街まで走った。お気に入りの子犬のイラストが描かれたタオルハンカチで濡れた髪をぬぐい、ブルーのツバの短いキャスケットをまぶかにかぶった。
ショーウィンドウに映ったワタシは、濡れた野良猫みたいだった。
お気に入りの仙台三越の地下1階にある食料品売り場で、新作のショートケーキを2つ買った。ママと食べようと思ったから……
仙台三越を出てから、都会に浮かぶ湖のような定禅寺通りの中央分離帯の遊歩道を歩いた。通りは欅の豊潤な葉叢に覆われ、おおかた雨もふせいでくれる。
ケヤキの1本1本はとても逞しく、暗灰色の太い幹から分かれた太い枝々には、豊潤な葉がおい茂っていた。
ケヤキの葉叢が風に揺れた。ケヤキたちが何か囁いているように錯覚する。いつもここに来ると、日常生活の煩わしさや辛さを忘れさせてくれる何かがある。
もしかしたら双子のもうひとりの兄弟とも、こんな場所で会えるかもしれない。きっと兄弟もケヤキたちの囁きに耳を澄ませたいと願うだろう……
しかしママは、双子の兄弟について詳しいことを教えてくれたことはなかった。




