第5話「王国の影、迫る」
基本プロフィール
名前:ガルス・ヴァン・レグナード
年齢:34歳
元・王国第四師団 副師団長
現在:王国第四師団 師団長
◆ 外見
190cm近い長身
鋼のような体格
無精髭と鋭い目つき
だが笑うと優しい
右目に古い傷(リオを庇った時のもの)
軽装の鎧を好む(重装は嫌い)
◆ 性格
不器用で無骨
嘘がつけない
正義感は強いが、王の“光の正義”には懐疑的
リオに対しては絶対的な信頼
子どもには優しい
光戒師団を心底嫌っている
だが王国への忠誠は捨てていない
校庭での黒影獣事件の後、しばらくは静かだった。
生徒たちは教室に戻り、日常の喧騒が戻ってくる。
だが俺の胸騒ぎは、逆に強まっていく。
(あの影……どう考えても自然発生じゃない。
王の“光”の残滓……。
つまり、王が生み出した“影”だとしたら——)
そこまで考え、頭を振った。
(馬鹿な。考えすぎだ。
王がそんな危険な力を……使うわけが……)
そう否定しながらも、胸の深いところで
“別の自分”が、不気味にざわついていた。
痛みではない。
懐かしさでもない。
——警告。
説明できない警告だけが残る。
授業準備室に戻る前に、ふと足が止まった。
校舎の裏側——影が濃く落ちる場所から、
微かな“揺れ”を感じた。
(……またか)
黒影獣の気配とは違う。
もっと深く、重く、古い。
校舎裏へ回り込むと、
夕日で伸びた影が、風もないのに揺れていた。
「……そこにいるのは分かってる。出てこい」
声をかけた瞬間——
影が“盛り上がる”ように形を変えた。
黒い霧が凝縮し、
輪郭が固まり、
巨大な“腕”が影からゆっくりと現れる。
そして——
校舎の壁に寄りかかるように、
巨大な影の巨人が姿を現した。
身長は三メートルを超える。
全身が黒い霧でできているのに、
その存在は岩のように重く感じられた。
(……黒影獣とは違う。
格が違う……!)
巨人はゆっくりと顔を上げ、
赤い光点のような目で俺を見下ろした。
敵意はない。
だが、無害でもない。
「……誰だ」
問いかけると、影の巨人はわずかに首を傾けた。
その動きは、まるで“言葉を探している”ようだった。
そして——
地鳴りのような低い声が、影の奥から響いた。
「……リオ……」
「……俺の名前を……知ってるのか」
巨人はゆっくりと頷いた。
「……探して……いた……」
(探していた……?
俺を……?)
影の巨人は一歩前に出た。
その足が地面に触れた瞬間、
校舎の影が“震えた”。
胸がズキッと痛む。
(……まただ。
塔の鼓動と同じ……!)
影の巨人は、俺の胸元をじっと見つめた。
「……目覚め……つつ……ある……」
「目覚め……?」
問い返すと、巨人は首を横に振った。
“まだ言えない”というように。
そして、影が揺れた。
まるで風に溶けるように、巨人の輪郭が崩れていく。
「待て。お前は何者だ」
影の巨人は最後に、低く、静かに言った。
「……影は……主の傍に……」
その言葉を残し、
巨人は影の中へと沈み、完全に消えた。
校舎裏には、ただ冷たい風だけが残った。
(……影は主の傍に?
主って……誰だ。
俺のこと……なのか?)
胸の奥が、また疼く。
塔の鼓動と同じリズムで。
「リオ」
校舎裏から戻ろうとしたところで、また声がした。
「……ガルス」
第四師団時代の副隊長——ガルスが、建物の影に立っていた。
「黒影獣を倒したらしいな」
「噂になるの早いな……誰から聞いた」
「王都からの“監視者”だ」
俺は胸の奥が冷たくなるのを感じた。
「“監視者”……?」
「ああ。式典後の陛下の様子は伝えたと思うが、
まさか『様子を探れ。問題があれば排除せよ』……とまでおっしゃっているとは」
俺の背に汗が伝った。
「……まさか。
黒影獣は……そのために?」
「恐らくは“試験”だろう。
お前がどれほどの力を隠しているのか、確かめに来たんだ」
「試験……ね。
ずいぶん物騒な“試験”だ」
「お前を恐れている。
陛下は……お前が“何か”を隠していると思っているんだ」
(……何か。
俺の中の……何だ?)
胸が、ずきりと痛んだ。
まるで、記憶の底で誰かが扉を叩いているような。
「先生ーっ!」
ミナが駆けてきた。
その顔は心配と不安でいっぱいだった。
「あのね……教室のみんなが怖がってて……
さっきの黒いアレ、すごく怖かったって……
でも、それより——」
「それより?」
「先生の方が心配だって……みんな言ってる!」
(……そうか。あの子たち……)
心に、少しだけ温かいものが灯った。
「大丈夫だよ。俺はこう見えて丈夫だからな」
「でも、王様の人たちが先生を見てました。
黒い服の……なんか、怖い人たち」
「ミナ……詳しく覚えてるか?」
「うん!
えっとね、肩に“光の紋章”がついてて……
先生の方を、じーって見てたの」
(……王直属の“光戒師団”か。
厄介な連中まで動き出したか)
胸騒ぎが、いよいよただの予感ではなくなってきた。
「先生……」
ミナが袖を掴む。
「絶対に……先生、危ない目に遭わせたくない」
「……ミナ。
逆だろ、守るのは俺の役目だ」
「でも……!」
「でも……先生は一人で全部抱えすぎです!」
(……なんだ、それは……)
胸が、少し痛い。
だがそれは塔の鼓動ではなく——
ただの、優しさ。
「……ありがとう。
でも大丈夫だ。
ミナたちは俺が守るから」
「……絶対ですよ?」
「ああ」
その時だった。
校庭の方で、教師たちの叫び声が聞こえた。
「な、なんだあれは……!」
「王国の……騎士……?」
「校内許可は……!」
窓の外を見ると——
白銀の軍装をまとった一団が、校門を突破してくるのが見えた。
肩には光の紋章。
剣は無造作に下げ、
目は冷え切っている。
(光戒師団……!
本当に学校に来やがった!)
ガルスが険しい顔で言う。
「……まずい。
あいつらは“王の命令”があれば、学校だろうと子どもだろうと関係なく踏み込む連中だ」
「目的は……俺か?」
「恐らくは」
ガルスは剣の柄に手を伸ばす。
「リオ。逃げろ。
ここで戦えば……被害が出る」
だが俺は静かに首を振った。
「逃げたら……子どもたちはどうなる」
「……!」
「この学校は、俺の教室は、ミナたちは……
俺が守る」
ミナが息を呑んだ。
「先生……!」
ガルスは低く笑った。
「……変わらないな。
“元”師団長は、やっぱり師団長ってところか」
「違う。俺は教師だ」
扉の向こうで、光戒師団の足音が近づく。
——カツ、カツ、カツ。
その足音の規則正しさが、恐ろしく静かだった。
(来る……)
胸の奥で、“塔の脈動”が強まる。
(……分からない。
けど……この鼓動が言っている。
“構えろ”と)
「ミナ。離れるな」
「……うん」
ミナは俺の背にぴたりとつく。
扉が開く。
光戒師団の隊長が、冷たい目でこちらを見た。
「——教師リオ・ヴェルナー。
王命により、貴殿を拘束する」
その宣告に、
俺はゆっくりと息を吸った。
(……まったく。
教師としての静かな生活は遠ざかるばかりだ)
「……悪いな。
俺はまだ、授業中なんだよ」
教室を守るように一歩前へ。
——この瞬間、リオの“教師としての戦い”が本格的に始まった。
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※本作の執筆にあたっては、
一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。
物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、
すべて作者自身の手で仕上げています。




