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十二環界と天塔の魔王  作者: ぷやっさん
第二章 二番島《工環ペリカンテ》

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23/25

第22話「契約の心臓・中心炉へ」

鉄扉が軋みながら開くと、

奥から熱気と、低い唸り声のような振動が押し寄せてきた。

「うわ……風が熱い……」

ミナは目を細め、リオの腕にそっと触れた。

蒸し焼きにされるような空気。

鉄が悲鳴を上げる匂い。

そして、涙ぐむような“怨嗟”が風に混じっている。

(嫌な気配だ……

ここが島の“心臓”か)

ベルモンドは顔を顰めた。

中心炉コントラクト・フォージ……

大ギルドだけが触れられる“契約の炉心”だ。

ここで契約札が生まれ、島中に運ばれていく」

(契約を量産する仕組み……

ペリカンテの闇の本丸ってわけだ)

少年が震えた声で呟く。

「……来たことはないですけど……

ギルド長が“恐怖はここで煮詰めるんだ”って……

よく言ってました……」

(恐怖を……煮詰める……?

最低のやり方だな)


扉をくぐると、巨大な空間が広がった。

中央には溶岩のように赤く輝く“炉心”。

その周囲を、無数の契約札パイプが血管のように巡っている。

さらにその上には——

黒と白の契約陣が層状に重なり、ゆっくりと浮遊していた。

「こ、こんな……

これ……生きてる……?」

ミナが息を呑む。

リオも一歩踏み入れた瞬間、

胸の奥がズキンと痛んだ。

(塔の脈動が……さっきより強い……!)

炉心の脈動と、リオの胸の鼓動が同期していく。

——ゴウン、ゴウン。

(契約の心臓……

塔と……何かしら“繋がってる”?

まさか……同じ原理……?)

その時、ミナが顔をしかめた。

「せ、先生……聞こえます……

“助けて”って声が……!」

「声?」

「うん……いっぱい……!

怒ってる声、泣いてる声、

傷ついて、苦しんで……!」

(契約に込められた“恐怖と怒り”……

ミナはそれを感じ取ってるんだ……!)

ベルモンドが震える声で呟く。

「……これが、恐怖契約の源か。

島の連中の恐れや不満を全部吸い上げて、

札に加工してるんだ……!」

(そんなの……契約じゃねぇよ。

ただの搾取だ)


炉心のそばに近づくと、

床に巨大な刻印が刻まれていることに気づいた。

その形は——

「これ……十二の島をつないだ“環界図”じゃないか?」

十二の島が輪になった構造。

そして中心には、塔を模したような“柱”の刻印。

「……契約の中心が……十二環界の構造と重なってる……?」

ミナが息を呑む。

「先生……

この“中心の柱”……

塔の脈動と……同じ響きがします……!」

(まじか……

契約の中心と、塔の脈動が……一致してる……?)

(つまり……十二環界の“根源の仕組み”に、

契約魔法も関わってる……?)

すると——炉心の奥から声がした。

『……珍しいな。

契約の核心へ足を踏み入れる者が現れるとは』

「誰だ!?」

リオは身構える。

影の中から現れたのは——

光戒師団の制服を着た男。

だが普通の隊員ではない。

白銀でも黒でもない、

“灰色の紋章”を胸に刻んだ異様な隊服。

「私は——光戒師団《灰紋アッシュ・シグル》だ。

王国が“大規模契約干渉”のために創設した特務部隊だ」

(灰紋……!?

王国がそんな部隊まで……!?)

男は薄く笑った。

「恐怖陣が破られ、契約術師が倒れたと報告があってな。

お前たちを“直接”確認しに来たのだ」

「直接……?」

「もちろん、王命だ」

ミナが震えながら袖を引く。

「せ、先生……あの人……

王様の光に似てる……

でも……もっと冷たい……」

(アーサー王の……

“影の直轄部隊”ってことか)


「契約が歪み始めた理由が知りたいか?」

「答えろ」

灰紋隊員は炉心を見下ろしながら言った。

「この島の契約の源……

“中心炉”は元々、

十二環界の理をならすための“調律炉”だった」

「調律……?」

「そう。“平衡”の装置だ。

恐怖も希望も、嘘も誠も……

すべてを混ぜて一定値に均す炉だった」

(契約とは、本来“世界の平衡”を守るための術……?

だから十二環界の構造に似てるのか……!)

「だが……

“王の光”が炉に触れた瞬間……

恐怖だけが突出したのだ」

「王が……この島の契約炉に触れた……?」

「そうだ。

白銀の王は祝福を与えるためと言ったが……

実際は“恐怖の偏り”を大きくしていった。

王の光は祝福ではなく……

“破壊の性質”を持っているからな」

(破壊……

ミナが感じた“冷たい光”……

俺が感じた“違和感”……

やっぱり、王の光は……完全に偽りだ)

「故に、契約は歪んだ。

恐怖が膨れ上がり、

人の負の感情だけが炉に集まり……

この島は狂い始めた」

「なぜそんな危険なことをする?」

「“新たな契約体系”を作るためだ。

魔術でも勇者でもない新たな支配形態。

“恐怖による統治”。

王国は十二環界全体にこれを広げるつもりらしい」

(ふざけんなよ……

そんな支配形態、子どもたちが生きられるわけがないだろ……!)

灰紋隊員が皮肉げに笑った。

「……まぁ、王の光は止まらん。

誰にも止められん。

唯一止められた存在は——

“以前の魔王”だけだったがな」

(……!)

塔の脈動が胸に刺さる。

——ゴウン。

(やめろ……!

今そこで答えに近づくな……!

まだ……)

ミナがリオの手を強く握る。

「先生……

先生の黒いオーラが……また大きくなってる……!」

「ミナ……」


中心炉が轟音を上げ、

黒金の光を放った。

『——来い』

リオの胸に直接響くような低い声。

(……なんだ……今の……!?

中心炉……か?

塔……か?

それとも……俺自身か……?)

ミナが怯えながらも叫ぶ。

「先生!!

中心炉が……“先生を呼んでます”!!

すっごい強い意志で……!」

(呼んでいる……?

俺を……?)

灰紋隊員が口角を吊り上げる。

「どうやら“炉”が興味を持ったようだ。

恐怖の契約にも、

王の光にも、

お前の“黒いオーラ”にもな」

リオは中心炉を見据えた。

「行くぞ、ミナ。

この島の“本当の契約”を取り戻すために」

「……はい!」

リオは熱気の吹き荒れる中心炉へと踏み込んだ。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!


※本作の執筆にあたっては、

一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。

物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、

すべて作者自身の手で仕上げています。

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