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十二環界と天塔の魔王  作者: ぷやっさん
第二章 二番島《工環ペリカンテ》

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第21話「契約の歪み、その中心へ」

恐怖陣が崩れ落ちてから、

工場の空気は嘘のように静まり返っていた。

契約術師マルクは膝をつき、

砕け散った陣の残骸を震える指でなぞっている。

「……ありえない……

恐怖陣が……砕かれた……

この私が……契約の理が……!」

その声には怒りも誇りもなく、

ただ“恐怖に依存していた者が空洞になった”ような震えがあった。

「マルク。まだ戦うつもりか?」

リオの問いに、マルクは顔を上げた。

「戦う……?

……違う……もう私は戦えん……

お前の“黒いオーラ”が……恐怖を拒絶した……」

(黒いオーラ……? 俺の……?)

胸の奥がざわつく。

ミナが心配そうに寄ってくる。

「先生……大丈夫……?

さっき……先生の後ろに……

“色のない黒”が立ってて……すごく大きくて……」

(ミナも見えてたのか……

本当に……なんなんだ俺は)

塔の脈動が胸をかすめる。

——ゴウン。

(今は考えるな……進む方が先だ)


マルクは鉄床に座り込んだまま、

乾いた声で語り始めた。

「……この島は……もう本来の契約では動いていない」

「本来……?」

「契約は、元々“対等の約束”で発動する。

恐れは、あくまで人が約束を守るための“補助”だ」

(やっぱり……そうだよな)

ミナが問いかける。

「じゃあ、なんで……この島では……

恐怖だけが強いんですか……?」

マルクの眼差しが、静かにミナへ向いた。

「簡単だ。

恐怖の契約を……“誰かが強化している”。

それも……“島ごと”だ」

「島ごと!?」

リオが息を呑む。

(契約魔法そのものが……改造されてる……?)

マルクは震える手で契約札の破片を拾い上げた。

「この札……

本来は“恐怖側”だけを残すことなどできん。

だが最近は……どの札も“恐怖だけ燃える”仕組みに変わってしまった……」

ベルモンドが舌打ちする。

「やっぱり救世庁の“契約変換術”か?」

「いや……違う」

マルクは首を振った。

「光審庁でも光戒師団でもない」

「じゃあ誰が?」

マルクは震えながら言った。

「“王の光”だ」

空気が一瞬止まった。

「王の光……?」

「アーサー王の……あの光こそが……

契約の恐怖側を“肥大化”させている。

あれは祝福ではない……

“破壊を隠す仮面”だ……」

(やっぱり……!

ミナが感じた“暖かいのに冷たい”違和感……

俺が感じた“あの味”……

全部繋がる……!)


「じゃあ……どうしてペリカンテが?」

「この島は……十二環界で唯一……

“契約魔法を量産できる島”だからだ」

「…………」

「契約を歪めたい者にとって……

ここは最も都合がいい。

島ごと契約を塗り替えれば……

十二環界全域にも影響が及ぶ……!」

ミナの顔が青くなる。

「十二環界……全部……?」

「そうだ……

契約は本来、島ごとに小さな制度でしかなかった……

だが“王の光”が介入し……

恐怖が一気に共鳴し始めた……

十二の島の契約が連鎖し……

世界の法則が歪みつつある……」

(世界の法則……

契約魔法はただの島の術じゃない……

もっと根本的な“理”……)

塔の脈動がまた胸を叩く。

——ゴウン。

(塔も……これを知ってる……?)


「リオ」

ベルモンドが真剣な声で言った。

「お前が倒したのは、あくまで契約術師の一人だ。

この島の“核心”はもっと奥にある。

大ギルドの“心臓部コア”……

恐怖契約を生み出す中心炉コントラクト・フォージだ」

「中心炉……」

「あそこを壊さない限り……

契約の歪みは止まらん」

「でも……そこには……」

ミナが小声で呟く。

「怖さが……詰まってる……

この島で生きる人たちの……

全部の……苦しさ……」

(ミナの感覚……そこまで読めるようになったのか……)

リオは深く息を吸った。

(中心炉……

ここが第二島のボス……

そして王国の計画の鍵)

「行くぞ、ミナ。

この島の契約を元に戻すために」

「……はい」

ミナの瞳には、恐怖よりも強い“決意の光”が宿っていた。


「リオ……」

マルクが呼ぶ。

「……お前には……気をつけろ」

「?」

「お前の中には……

契約を……恐怖を……拒絶する“黒いオーラ”がある……

あれは……人の理の外の……“異物”だ……」

(……俺の黒いオーラ……?)

「だが……それは……

“王の光”と……同じ根……

いや……逆方向の……対……」

そこでマルクの意識が落ちた。

「契約術師……!」

ミナが駆け寄ろうとするが、ベルモンドが肩を掴む。

「大丈夫だ、気絶してるだけだ。

もう戦えない」

ミナは胸を押さえて呟いた。

「先生……

先生の“黒いオーラ”……

こわいけど……でも……私、嫌じゃない……」

(ミナ……お前……

俺の何を見たんだ……)

塔の脈動が、また胸を掴む。

——ゴウン。

(分からない……でも進むしかない)


リオは振り向き、

工場の奥へ続く巨大な鉄扉を見た。

そこには禍々しい契約紋と、

十二環界の輪を模した奇妙な刻印が彫られている。

「ここから先が、“島の心臓”か……」

「ええ……ここで全部が動いてる……」

ミナが呟く。

「行こう。

この島を救うために」

鉄扉が——

ギィィィ……と音を立てて開き始めた。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!


※本作の執筆にあたっては、

一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。

物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、

すべて作者自身の手で仕上げています。

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