第1話「光が揺れた日」
世界の『始まりの環』
一番島《黎明王国アウロラ》
十二環界の“最東端”に位置し、朝日が最初に差す島ということで"黎明”と呼ばれる。
歴史上 「世界の始まりはこの島から」 と語られ、
実際、この島だけ 天塔アルカブラの“残響” が最も強く届くと言われている。
島は“黎明の三帯”で構成される。
①王都アウロラ
白い石造りの城壁都市。
光が反射するよう計算された街並み。
王城と教会、勇者学校が中心に配置。
②聖光平原
王都を囲む広大な平原。
“洗礼の儀”を行う聖地が点在している。
③境界海廊
王国を取り巻く海。
潮の流れが常に一定で“整いすぎている”。
■勇者育成学校
正式名称:王立勇者育成学校
王国随一の教育機関であり、
“光の加護を持つ者”を選抜し、
王国の未来の“勇者候補”を育てるための学院。
十二の島が大海に浮かび、時計のように環を描く世界——【十二環界】。
その最東端、一番島《黎明王国アウロラ》は、文明の光がもっとも強い地と呼ばれている。
そして今——
その王国にある「勇者育成学校」で、俺は教師をしている。
「先生! またここで寝てますね!」
元気な声に目を開けると、校舎裏のベンチで見下ろす少女がいた。
横には飲みかけの紙コップと、開いたままの教科書。どう見ても“仕事中に寝てた人”の光景だ。
「あぁ……ミナか。空気が気持ちよくてな……うとうとしてた」
「始業式の日に言うセリフじゃないです!」
ミナは頬を膨らませて腕を組んでいる。
だが、その目はどこか笑っていた。
——どうやら俺は、この学校では「ゆるい教師」として知られているらしい。
注意しない、よく寝る、授業は自由。
生徒たちには「話しやすい」と評判だ。
もちろん、それは表向きの顔にすぎない。
俺の名はリオ・ヴェルナー。
本来の肩書きは「元・王国騎士団第四師団長」。
表に出ない精鋭部隊を率いていた“影の軍人”とも言われていた。
戦場と陰謀の中を生き、そんな生活に疲れてすべてを捨てて教師になった男。
当然この学校で、その過去を知る者はいない。
「先生、知ってますか? 今日の始業式、王様が来るんですよ!」
「ああ、噂は聞いた。なんでまた学校に来るんだか……」
「“勇者”だからですよ! 白銀の王、アーサー陛下……かっこいいですよね!」
ミナは目を輝かせた。
白銀の鎧をまとう若き王。
“光の勇者”と呼ばれ、民に愛される男——白銀王アーサー。
黎明王国アウロラは、
古来より“光の祝福”を受けし王家が支配する国家だ。
街は白い石造りの建物が並び、
人々は皆“光”を信じ、王家の加護を誇りにしている。
……だが俺には、どうにも馴染めない。
(あの光……どうにも苦手だ)
理由はない。
ただ本能がざわつく。
綺麗すぎる光。
均一で、揺らがなくて、あまりにも“完璧”。
その完璧さが、逆に“影を許さない”ように見える。
(あれは……なんなんだ?)
「先生ーっ、黙っちゃってどうしたんです?」
「いや。なんでもない」
話を切り上げた瞬間——
風がふっと止んだ。
——ザァッ。
「……おい、今のは?」
「風……じゃないですか?」
いや、違う。
風ではない。
空そのものが、一瞬だけ揺れた。
誰も気づかない。
ミナも、生徒たちも、街も、海風すらも変わらない。
しかし俺だけは分かった。
(塔が……鳴った?)
胸の奥がざわりと震える。
十二環界の中心。
人類未踏の巨大な塔——天塔アルカブラ。
その方角だけが、
ほんのわずかに“脈を打った”ように感じた。
(なんだ……この感覚は……)
痛くもない。
苦しくもない。
ただ胸の奥が重く引かれる。
懐かしさとも違う“深い何か”が刺激される。
「先生ーっ! 本当に遅刻しちゃいますよ!」
「ああ、悪い悪い。行くか」
講堂へ向かうと、生徒たちのわくわくした声が聞こえてくる。
「王様って何歳なんだろ!」
「どんな魔法使えるの?」
「光の加護で傷が治るって本当かな!」
「絶対優しい人だよね!」
純粋な期待が溢れていた。
その中で、ミナだけが静かに俺を見上げた。
「先生……王様のこと、なんか怖いんですか?」
「怖い? なんでそう思う?」
「先生の顔……ちょっとだけ、いつもと違ったから」
やはり勘がいい。
誤魔化すように笑い、
「別に怖いわけじゃない。ただ……強い光は、目を眩ませることもある」
「えっ、それってどういう——」
「難しい話は授業でやる。ほら並べ」
「むぅ〜!」
列に戻るミナを見送りながら、俺は歩を止めた。
この勇者育成学校——正式には【王立勇者育成学校】。
騎士科・魔法科・補助科に分かれ、王国が誇る“未来の守護者”を育てる場だ。
表向きは教育機関。
実態は——王国軍の育成施設。
生徒たちは皆、十六歳の“洗礼の儀”を受け、王家の光を体内に刻まれている。
それは祝福か、束縛か……まだ分からない。
(……胸騒ぎが消えない)
教師としての俺が不安に揺れる。
騎士団長だった頃の勘は、確実に“危険だ”と告げていた。
そして、もっと深い何か——
言葉にできない感覚が胸を掴んで離さない。
(王が怖いわけじゃない。ただ……“あの光”が……)
講堂前で息を整えた。
「……ま、どうにかなるだろ。俺はただの教師だ」
そう呟いた直後だった。
扉が外から押し開かれ、白い光が差し込んだ。
光が床を照らした瞬間、影が一瞬だけ“消えた”。
まるで、王が自身の輝きで扉を開いたかのように。
(来た——)
胸騒ぎが、図星だと告げるように激しく跳ねた。
——この出会いが、
世界の“揺らぎ”の始まりだった。
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※本作の執筆にあたっては、
一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。
物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、
すべて作者自身の手で仕上げています。




