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十二環界と天塔の魔王  作者: ぷやっさん
第二章 二番島《工環ペリカンテ》

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第13話「契約の歯車は、誰のために回る?」

正式名称: 《ブラックレイヴン》 工環ギルド裏部門

通称: カラスの巣

位置: 工環ペリカンテの裏路地群の最深部

契約魔法の監査

ギルド間の不正調査

契約被害者の保護

王国の監視から逃れる者の避難所

裏社会の情報集積地

 裏ギルド「カラスの巣」での一夜は、思いのほか静かだった。

しかしその静けさは平和ではなく、嵐の前の“圧”そのものだった。

「先生……眠れました?」

朝。薄暗い部屋でミナが目を擦りながら聞いてきた。

「まあ……それなりにな。お前は?」

「私は……いっぱい寝ました!」

「そうか。それならよし」

(……俺はほとんど寝てねぇけどな)


昨日の契約魔法、光審庁、光戒師団の影——

全部が頭に引っかかって、結局眠れなかった。

(胸のざわつきも続いてる。塔の方向……ずっと脈打ってるみたいだ)

そんな重い思考を断つように扉がノックされた。


「よぉ、起きてたか!」

ベルモンドが顔を出す。

「おはようございます、ベルモンドさん!」

「ミナちゃんの元気は朝から変わらねぇな! よしよし!」

「む〜ッ! 子ども扱いです!」

「そりゃ子どもだからな!」

ベルモンドの豪快な笑いに、リオの表情からわずかに疲れが抜けた。


「で、少年は?」

「奥だ。まだ眠ってる」

昨日倒れていた小ギルドの少年。

部屋へ向かうと、彼はようやく意識を取り戻したところだった。


「ここは……?」

「落ち着け。ここは安全だ」

「……あの、僕……」

少年は胸に貼り付いた“焦げた契約札”を見て震えた。

「ギルド長から……嘘の契約を押し付けられて……

僕……破っちゃったから……燃えて……」

「いい。お前は悪くない」

リオは少年の肩に手を置く。

「この札……どうして僕に押し付けたんだろ……」


「理由は聞かなくても分かる」

ベルモンドが唸る。

「小ギルドは大ギルドに搾取されてる。

弱いところに“嘘の契約”を押しつけて、

責任を押しつけて捨てる……この島じゃよくある話だ」

「よくある……?」

「口惜しいがな。

契約魔法は“恐れ”を根源に作られてる。

弱い奴は、恐れで簡単に縛れるんだよ」

(恐れ……

契約が“恐れ”で動くなら——

王の“光”が消す力とも、どこか似てる気が……)

胸がざらりと震えた。


「先生……契約って……そんなに怖いものなんですか?」

ミナが不安そうに尋ねる。

「違う。

本来の契約は“約束を守るための力”だ。

信用が力になる。恐れじゃない」

「じゃあ……どうしてこの島では……?」

「それを、これから調べる」

(この島の契約魔法……どうも不自然だ。

誰かが歪めている……?

まさか王国が……?)


「……でも、僕……すごく怖かった……

契約が燃えて……

全部僕のせいにされて……

もう生きてる心地がしなくて……」

少年の震える声に、ミナが思わず寄り添った。

「私も怖かったよ。

でも……先生が助けてくれた。

だから今、ここにいる」

「先生……?」

少年がこちらを見る。

「生きてるだけで十分だ。

お前は嘘をついてない。契約も見ていた」

リオは少年の手をしっかり握った。

「嘘つきが悪いんじゃない。

嘘を押しつける“権力”が悪い。

お前は胸を張れ」

「……っ」

少年の目に涙が滲む。

(……教師でよかったと思える瞬間だ)


すると、裏ギルドの女が腕を組んで言った。

「——放っとけないね。

この少年のギルド長、きっちり罪を償わせるよ」

「できるのか?」

「裏ギルドを舐めるな。

契約を悪用するやつは、この島の“理”を乱す。

見逃せない」

ベルモンドも頷く。

「それに、リオは恩人だ。

このままにはしねぇよ」

「恩なんて——」

「あるだろ。

お前が少年を庇わなきゃ、もう死んでた」

リオは少し黙ってから、ゆっくり言った。

「……恩があるとするなら、ミナたちを巻き込まないことだけ頼む」

「任せとけ!」


そのときだった。

裏路地の奥。

暗い陰から、ひとつの“白い光”が流れた。

ミナが息を呑む。

「せ、先生……!」

「またか……!」

光戒師団ではない。

もっと冷たく、静かで……

“思考のない光”。

(これは……黒影獣の時と同じ“視線”。

王国の影か……

それとも——光審庁の別個体か?)

だが奇妙なのは、

光は攻撃せず、ただこちらを“観察”して消えたことだった。

(……何を見ている?

俺の動きか?

それとも……ミナか?)

胸騒ぎが再び強まる。


女が一枚の契約札をリオに渡した。

「さっきの少年の札よ。もう使えないけど……

ちょっと異常がある。見てみて」

「異常?」

契約札は本来、破れればすぐに“灰”になるはずだ。

だが少年の札は——

「……焦げてるだけで、まだ残ってる?」

「そう。燃えたのは“約束の面”だけ。

恐れの側面が残ってる」

(恐れの側面……

つまり……契約の“恐怖の部分”だけを残せる術者がいる?

そんなこと……)

リオは札を持つ手が震える。

(契約の片側だけ燃やす……

常識ではありえない。

人為的に“破壊”だけを操れる存在……

そんなの——)

胸の奥がズキッと痛む。

(……まさか……王……?

いや……分からない。

分かってはいけない気がする)


「リオ」

ベルモンドが真剣な声を出す。

「この島……“何か改造されてる”。

契約魔法も、運営も……全部がおかしい」

「……俺もそう思う」

「光審庁がここに“宗教区画”を作ろうとしてるって噂もある」

(光審庁が!?

王国がペリカンテを宗教支配するってのか……)

ミナが袖を強く掴んだ。

「先生……危ない島なの?」

「危ない。

だが……知る必要がある」

リオは真っ直ぐ少年を見た。

「この島で何が起きているか。

契約がなぜ歪んでいるか。

そして、お前みたいな被害者が出ないようにするには——」

ミナが続けた。

「……先生が守る、ですね?」

「そうだ」

「私も……一緒に頑張ります!」

少年が泣き笑いの顔で頷いた。

「……僕も……力になれること、ありますか?」

「あるさ。

お前が知ってることを全部教えてくれ。

それが、次の一歩だ」


こうしてリオたちは、第二島ペリカンテの核心——

“契約魔法の歪み”と“ギルド搾取構造”の調査に乗り出すことになる。

その背後には、既に光戒師団と光審庁の影が迫っていた……。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!


※本作の執筆にあたっては、

一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。

物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、

すべて作者自身の手で仕上げています。

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