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十二環界と天塔の魔王  作者: ぷやっさん
第一章 一番島《黎明王国アウロラ》

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第10話「始まりの潮路——先生と生徒の“世界へ”」

 学校の灯りが遠ざかった。

何度も見たはずの校舎が、今夜だけは妙に小さく見える。

「先生……学校、もう見えなくなりました」

「ああ。……なぁ、ミナ」

「はい?」

「行くなら振り返るなよ。

後ろを見ると、足が止まるぞ」

「……はい」

ミナは唇を噛み、ぱちんと顔を上げた。

泣いてはいない。

でも、その目はほんの少し赤い。

(……強い。

この子は、本当に強い)

リオは歩調を少し緩め、ミナの手を引いた。


南門を離れ、街外れに続く土道へ出る。

夜風が肩を撫で、星が頭上へ広がる。

王国の喧騒とは違う、静かで柔らかい音だけが響いていた。


「……先生」

「ん?」

「こんなに……星って見えるんですね」

「学校や街にいると気づかないよな。

夜空は、案外うるさいところでは隠れちまうから」

ミナは見上げたまま、ぽつりと呟く。

「逃げてるのに……ちょっと、綺麗だって思ってしまいました」

「逃げる道だって、悪い景色ばっかじゃないさ」

(……昔、俺もこんな夜空を見たことがある気がする。

いつだ……どこで……)

胸の奥がまた、小さく疼いた。

その疼きに合わせて、影がほんの一瞬だけ揺れた気がした。

(また……これか。

なんだよ……一体……)


「そういえばミナ、荷物は?」

「これだけです!」

ミナは小さな布袋を掲げた。

そこには、水筒、手帳、乾パン、包帯、そして……

「……本?」

「勇者学の教科書です! 勉強しながら旅します!」

「……本当にえらいな、お前」

「えへへ。先生のクラスですから!」

(……ん?

このやりとり、なんか……心が救われるな)

逃避行の真っ最中なのに、

不思議と“旅の始まり”として心が軽くなる。

「先生は荷物少なすぎません?」

「おっさんの荷物なんてこんなもんで充分だ」

「おっさんって言いました!? 先生はおっさんじゃないです!」

「いや、年齢的にはおっさんだろ」

「違います! かっこいい先生です!」

「……はいはい」

(……なんだか、救われる)


王国の影が遠のいていく。

「先生……」

「どうした」

「誰か、ついてきてませんか?」

「……!」

ミナが立ち止まり、夜の森の先を見つめる。

「気のせいかもしれませんけど……

なんか……さっきから、視線を感じるんです」

(俺には……感じない。

だがミナの勘は、侮れない)

「……伏せろ、ミナ」

「!」

リオは身構え、周囲に這う影を探る。

だが敵の気配はない。

「……いません、ね?」

「いや……こういう“感じない敵”が、一番厄介なんだ」

(黒影獣のときもそうだった。

ミナだけが捉えていた……“何か”を)

「……ミナ。

もしまた何か感じたら、すぐ言え。

お前の勘は……俺より当てになる」

「え……!?」

「正直言うと……

俺も今回の件で、自分が信じられなくなりつつあってな」

「先生が……?」

「でも、お前は違う。

お前は曇ってない目をしてる。

だから——頼りにしてるよ」

ミナの表情がぱっと明るくなる。

「……! が、頑張ります!」


その時だった。

――ゴッ……。

遥か遠く。

十二環界の中心——天塔アルカブラの方角から、

脈動が届いた。

地面が揺れたわけじゃない。

風も吹かない。

なのに、胸の奥だけが「鳴った」。


「せ、先生……!」

「……ああ。俺も感じた」

(どういうことだ……

王国を離れたら、むしろ脈動が強くなる?)

塔の鼓動は、時間が経つごとに鮮明になっていく。

まるで——

「こっちへ来い」

と呼ばれているようだった。

(なんなんだよ……塔と……俺……)

ミナも胸を押さえていた。

微かに震える指先が、塔の脈動に共鳴しているように見えた。

「……行くぞ、ミナ。

急がないと、本当に追いつかれる」

「はいっ!」

二人は夜の森を抜け、

王国の灯りが完全に見えなくなるまで歩き続けた。


夜が明け始めた頃、

森がゆっくり開け、

海の匂いが押し寄せた。

ついに“第二島”へ続く港が見えてきた。

「先生! 海……!」

「やっと見えてきたな」

海沿いの町はまだ眠っていたが、

その奥の小さな港には、

十二環界を巡るための“沿岸船”がいくつも並んでいた。


「ここから……第二島《工環ペリカンテ》へ行けるんですか?」

「そうだ。工環ペリカンテ——技術と機巧の島だ。

ここからが本当の意味での旅だ」

ミナは大きく息を吸い込み、

ぎゅっと拳を握った。


「……先生。

私、絶対に足引っ張りませんから!」

「引っ張っても別にいいけどな」

「ダメです! 引っ張りません!」

「……本当に、お前は……」

(この子がいてくれてよかった)

そんな気持ちが自然に浮かぶ。


「行くぞ、ミナ。

第二島《工環ペリカンテ》へ——俺たちの道を開くために」

「はいっ!」


朝の光が二人の背を照らし、

新しい海の風が吹き抜けた。

こうして俺たちの“十二環界の旅”は、

本当の意味で動き始めた。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!


※本作の執筆にあたっては、

一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。

物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、

すべて作者自身の手で仕上げています。

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