第0話「天塔の最上にて」
——塔が鳴いている。
天塔アルカブラ。
十二の島を従えるように天へ伸びる、黒き世界柱。
その最上階、玉座の間で——
一人の男が静かに腰を下ろしていた。
魔王ヒイロ・アルカブラ。
世界の均衡を保つために選ばれた“闇の王”。
その足元には、四つの影が跪いている。
「……陛下。来ます」
紅き竜騎士が炎槍を構え、
雷霊の王が空気を震わせ、
影の巨人が沈黙の拳を握り、
時の魔術師が月光の詠唱を紡ぐ。
塔の外で、世界そのものが震えていた。
十二の島の海流が逆転し、空が裂ける。
「遅かったな、“勇者”。
いや——災厄の器よ」
魔王は立ち上がる。
玉座のそばに立て掛けられた黒杖が、
その一挙動に呼応して淡く脈動した。
白銀の鎧を纏った青年が現れる。
その手には光り輝く剣。
救済の象徴とされる“勇者”。
だが、その光は——
祝福ではなく、断滅の色をしていた。
「世界を終わらせに来たか」
「世界は滅ぶべきだ。
あなたが造った均衡は、もう保てない」
勇者は静かに剣を構える。
その瞬間、魔環四帝が同時に動こうとし——
魔王が手を伸ばし、制した。
「下がれ。これは私の役目だ」
塔が叫ぶ。
世界が泣く。
光と闇が衝突し、階層が砕け散る。
魔王は悟っていた。
このままでは世界が壊れる。
「……ならば私も、役目を果たそう」
黒い力が魔王の全身を包む。
勇者を押し返しながら、
塔の最深部に隠された“転生の儀”へと歩む。
「陛下! まさか——」
「私は戻る。
いつか、世界が私を必要としたときに」
ヒイロの身体が黒い結晶の光に包まれ、
世界の中心が反転する。
勇者は叫んだ。
「逃がすかあああああ!!」
光と闇が爆ぜ、
塔が崩れ落ちる音だけが、最後に響いた。
——魔王は死んだ。
だが魂は、環の始まり《一番島》へと落ちていく。
これがすべての“始まり”になるとも知らずに。
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※本作の執筆にあたっては、
一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。
物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、
すべて作者自身の手で仕上げています。




