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ギルド受付で働いてますが、攻略して欲しいのは自分ではなくクエストです  作者: 柚鼓ユズ


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覚悟を決めて報告を行います

「……随分と遅かったじゃないか。君たち二人ならボクの見立てではあと二日は早く戻ってくると思っていたんだけれど?……まさか、二人で何やら良からぬ事に及んだりはしていないだろうね?」


 街に戻り、エリア内での刃鱗獣の生息地で亜種の存在を報告し、諸々の手続きを済ませて急ぎ足でナナカさんと師匠の元へ向かい館に着くと開口一番に師匠からそう言われた。


「えぇと……話せば長くなると言いますか……」


 恐る恐る口を開くと同時、師匠が自分に詰め寄ってくる。


「……ちょっと待て!どうした!?何だ君の体の傷は?隠していても分かるぞ!ナナカ!詳しく説明しろ!いや、まずは触診する必要がある!今すぐ服を脱ぐんだアーク!」


 言うが早いか師匠が自分の服を脱がせにかかる。必死に抵抗しつつ慌てて説明を試みる。


「落ち着いてください師匠!服が千切れますから!ナナカさんが適切な治療を施してくれたので問題ないです!むしろ師匠の握力で怪我してしまうので勘弁してください!」


 そこまで自分が言ったところで師匠の動きがぴたりと止まる。同時に、地の底を這うような低く重々しい声が部屋に響く。


「……どういう事だ?詳しく説明しろ、ナナカ」


「ひっ!」


 名前を呼ばれびくりと背筋を伸ばすナナカさん。張り詰めた空気に固まっている。自分も思わず緊張してしまう。


「……俺から説明します。依頼された素材を集めている際、急なトラブルがあって……」


 そこまで言いかけたところで師匠が自分を手で制す。


「アーク。君には聞いていない。ボクは今ナナカに尋ねているんだ。さぁ、出来る限り簡潔にかつ的確に説明したまえ」


 師匠にそう言われ、怯えた表情を浮かべるもののすぐに背筋を正してナナカさんが話し始める。


「……はい。アークさんと素材集めの最中、地面が崩落し崖下へ二人とも落下したっす。自分は幸い軽傷でしたがアークさんが自分を庇いその際に負傷し、自分が応急処置を施しました」


 腕を組みながら無言で話を聞いている師匠。自分も口を挿む事なくナナカさんの報告を聞く。


「……その後、素材集めを再開したところで刃鱗獣の群れと遭遇。二人で討伐の判断を取り大半を初動での拘束に成功するものの、本来このエリアに存在しないはずの亜種が群れの中にいて予想外の行動を取られたため私が動揺してしまい、アークさんを更に負傷させてしまいました。その後、アークさんの一喝で私が立ち直り亜種を討伐。その後アークさんの回復を待って素材採取を再開。完了後に戻った次第です」


 ここに戻るまでにナナカさんと師匠にどのように報告するかを二人で話し合った。最初の方は自分が口裏を合わせる方向でいたのだが、互いに師匠を良く知る者同士で考えた結果、嘘を嫌う師匠にその場しのぎで嘘をついても逆効果ではないかとの意見に至った。


 結果、自分たちの意見は『嘘偽りなく真実をありのまま伝える』という事になった。もちろん、それによってナナカさんが責められた場合は全力で擁護に回るといった形で。最初はそれすらも固辞し、罰を甘んじて受け入れると言ったナナカさんであったがそれは自分が説得し擁護に回る事を了承して貰った。


(……もし、これで師匠がナナカさんに対して理不尽な罰や対応をするようであれば自分にも考えがある。とにかく、自分は全面的にナナカさんの擁護に回らせてもらう)


「……報告は以上かい?アーク。君も内容に異論は無いかい?」


 ナナカさんの報告を聞き終えた師匠がこちらを向いて問いかけてくる。即座に自分もそれに答える。


「はい。ナナカさんの言う通りです。異論はありませ……」


 そう自分が言い終えるよりも早く、師匠がどこからか取り出した分厚い魔導書で自分の後頭部をすぱぁん!と叩く音が周囲に鳴り響いた。


「い……痛ってぇえええ!!」


 突然の出来事と後頭部に走る痛みに思わず大声で叫ぶ。目の前の出来事にナナカさんも思わず口をぽかんと開けたまま立ち尽くしている。自分が何か言うよりも先に師匠が口を開く。


「情けない!情けないぞアーク!今は現役を退いているとはいえ、その程度のアクシデントでそこまでの怪我を負うなんて!今までの君ならナナカを抱えて安全に着地する事も出来たし、初めて遭遇した魔獣といえどももっと冷静に反応して対処出来たはずだ!まったく……君の怪我の度合からしてもっと重大な事態が起きたかと思い話を聞いてみればまさかその程度の事だったとは……あぁもう!」


 ……そうだった。この人はこういう人だった。自分への期待の現れだと思うが師匠は昔から自分の事を過大評価し過ぎるきらいがある。


 それでも現役時代はどうにか期待に応える働きは出来ていたと思いたいが、ハンターを退いた今もそれが続いているとは。思えば確かにギルドの受付で働くようになってからも自分に何かにつけて鍛錬を怠っていないか聞かれていた事を思い出す。


「た、鍛錬を怠っていたつもりはありませんが、今回は不意の事態が重なったため……」


 弁明しようとするものの、また師匠が魔導書を振りかざしながら口を開く。


「いいや!君なら今でもその程度の事態なら対処出来るはずだ!……やはり、今後は受付の勤務時間以外はボクと同じ空間を過ごしてボクと寝食を共にする必要が……」


 不穏な言葉を口にしようとする師匠に慌てて異議を唱えようとしたその瞬間、ナナカさんが会話に割って入ってくる。


「違いますっ!!アークさんは何も悪くないっす!悪いのは……全部私ですっ!!」


 ナナカさんの大声が館に響き渡った。


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