神殿
「……先ほどは大変申し訳ありませんでした」
神殿。正直あまり馴染みがない建築物である。
まぁ神社とか寺に馴染みがあるかと言えば精々初詣程度の人間ではあるが
それはさておき目の前の彼女である。一目で神職に携わる方であることが見て取れる
わかりやすい服装をした女性。ティア、と言ったか。彼女は深々と頭を下げ謝意を告げた。
「まさかそのままで言葉が通じるとは思わず、驚いてしまって。
大変ご迷惑をおかけしました」
「いえ、まぁ気にしないでください」
手首に残った縄の後を少し擦りながら苦笑いを浮かべる。
――彼女、ティアさんはあの後こちらの言葉に驚きながら『ぴゃー』みたいな
言葉にならない声をあげながら部屋をでていきどんがらがっしゃんと色々とひっくり返しながら出て行ってしまい、その後声を聞いてぞろぞろとやってきた兵隊なのかなにかと思しき方々に侵入者と誤解されて拘束されたのであった。すぐにティアさんが戻ってきて解放されはしたものの、寝起きの頭の思考回路はショート寸前。
「というわけで改めてシルヴァへようこそ漂流者さん」
「ようこそと言われましても」
そも、漂流者とはなんぞや。シルヴァとはなんぞや。
という状況である。まして自分がここに居る意味も理由もわからない。
おおよそ地獄でも天国でもない場所であるということだけはわかるが、
「あぁっと、そうでした! 重ね重ねすみません、いつもなら翻訳の魔法が使える方が
そのまま説明等を行うので……」
「えぇっとえぇっと」と口にしながら少し天を仰いで困った様子。
より困っているのは間違いなくこっちなのだがそれを言っても詮無いこと、
黙って彼女の説明を聞くこと体感で半刻。
「つまり要約するとここは異世界である、ということですね」
シルヴァは国名、漂流者とは別の世界から流れてきた人。
「そうですね。うちの神殿には大体2~3ヵ月に1人くらいのペースで漂流者の方がいらっしゃいます」
意外と多い。が、同時に言葉が喋れることに驚く理由も察せられる。
つまり過去に来た漂流者は皆々この世界の言語を理解できず、それが当たり前と認識していたのだろう。
「えぇ、そうです。どうして喋れるのかわかりますか?」
「いえ皆目見当はつきませんね」
仕事で必要になる為英語と中国語くらいは多少は喋ることができるがそれだけ。
聞いた事もない国の言語を話せるような素養は自分にはない。
「では祝福の関係でしょうか?」
また知らない単語がでた。いや、祝福という単語自体は知っているが
言葉を解せる理由としてその単語がでてくるのがわからない。
「いや、でも……うぅ~ん」
悩んでいるのはわかる。その原因が自分であることも。
ただまぁなんにせよ。
「……あの、場所変えていただけませんかね?」
そろそろ冷たい石の床に座っているのは限界と思いそう提案していた。




