第21部「狙撃の静音域 -Silent Range-」
午後11時、港区・国際物流管理センター跡地。
“赤腕”の残党が武器取引のため、夜間の港湾施設を一時占拠しているとの情報を受け、ユズリハと咲に密偵任務が下された。
今回の目的は、敵の構成・武器種・取引相手の確認と妨害。
咲が潜入、ユズリハが狙撃で援護するという新たな連携ミッションだった。
咲はその小柄な体躯を活かし、建材用パレットの隙間や、配線ダクトのトンネルを這い進んでいく。
(狭いほど、落ち着く……)
P90は外付けスリングで背中に固定。
前方にCZ75を携え、足音ひとつ立てずに建物内へ。
施設内部には8名の武装兵。
MP5やグロック17、ショットガンなどが散見される。だが、配置は甘く、通路ごとの連携も薄い。
咲は壁際の陰に伏せ、無線でユズリハに連絡を送った。
「三番通路、ショットガン持ち。視界、良好。排除、お願い」
そのころ、施設から200m離れた港のクレーン上。
ユズリハは**FN SCAR-H(7.62×51mm)**に、
シュミット&ベンダー製の高倍率スコープを装着して狙撃体勢に入っていた。
風速:2.4m/s、湿度と気温を加味し、呼吸を整える。
「位置、捕捉」
パンッ。
消音器越しに重い銃声。
7.62mm弾が通路奥の照明を割り、反射で浮かんだ敵兵の肩を貫く。
咲が即座に移動。
伏せた敵兵を踏み台にして上階へ滑り込む。
第2ポイント。コンテナの隙間から敵が身を乗り出し、無線で増援を呼ぼうとする。
咲はP90を構え、フルオートで手元を狙撃。
パパパパパン!
腕とトランシーバーが同時に砕け、男は絶叫。
が、致命傷ではない。
「話せば助かる。配置、教えて」
咲はナイフを抜き、男の首元にそっと当てた。
「4人、南側のコンテナ……伏せてる」
無線でその情報を送ると、すぐにユズリハがスコープ越しに反応。
「補足完了」
パン! パン! パン! パン!
咲が耳にしたのは、銃声ではなく“順に崩れ落ちる音”だった。
ミッション終了後。
ふたりは施設裏の海岸で合流した。
「咲、完璧だったわ。あんなルート、私じゃ絶対無理」
「でも、撃つのは任せた。私、あれだけ離れると当たらない」
「だから二人いる。ひとりじゃ届かないところ、あなたが入る」
咲は少し照れたように笑った。
「今夜も、守れたね」
「ええ。でも、これからよ」
月明かりの下、ふたりの少女はそれぞれの得意分野で戦場を生き延びていく。




