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はぁ。もうクタクタだ。課長の奴、飲みに行きたいからって私に仕事を押し付けて勝手に帰ってさ。積み上げられた書類の数、思い出すだけで辟易しちゃうよ。
「君は独身だから遅くまで仕事しても問題ないでしょ?」
って余計な一言も付け足して。訴えてやろうかな。
犯罪にならなければ今頃グーパンだよ。
はぁ、一度セクハラ紛いに触られた時口頭じゃなくてボッコボコにしてやるべきだった。
お陰でもう23時。電車の中には私と同じ疲れ切った顔をしたサラリーマンやOLの方々がチラホラ乗っている。仲間だ。みなさんお疲れ様です。
『次はー⭕️✖️町〜⭕️✖️町〜』
うつらうつらと途切れそうな意識を呼び戻しながら眠気と戦っていると最寄の駅に着いたみたいだ。
この時間はもう、バスも走ってない。タクシー乗ろうかな。いや、月末だからお金も心許ない。
うぅ……疲れてるけど歩いて帰るかぁ。
電車を降りて階段を登り、改札を出てタクシーに乗り込む仲間たちを横目に歩く。
暗い夜道を街灯と明るい月に照らされながら限界まで疲れ切った体に鞭を打って歩き続ける。
今日は月が綺麗だなぁ。まんまるだ。
こんな事を思えるうちはまだ心までは疲れていないはず!よし!少し走っちゃったりして。
スーツのボタンを一つ外す。腕まくりをしてぴょんぴょんと軽く跳ねて走る。運動は苦手じゃない。むしろ得意だ。
風を体で感じて心地良い。
何かの真後ろにいる。
気配を感じた。
変質者?それとも何か落とした?でも人通りもないから怖くて振り向けない。そうだ、走るスピードをあげよう。
そう思って走る速さを上げても、気配は消えない。ぎゅむ!ぎゅむ!と足音を立てて何かが付いてくる。
ぐぬぬ。しつこい……これは変質者だね。
なら手加減は不要、重い一撃を食らわせてあげる!
足を踏ん張りブレーキをかけて突っ込んでくるであろう変質者に蹴りを食らわせてやろうと体を捻る。
遅れて遠心力を利用して蹴り足を前に出す。
「……ありゃ?」
蹴りは思いっきり空振った。誰もいなかった。
ターゲットを失った私の体は思いっきり尻もちをついてしまった。
あいたた。誰もいないなんてめっちゃ恥ずかしい人じゃん。
と思っていた。
目の前に、2本の短い足で大地を踏み締めながら私にハンカチを差し出している兎?がいた。
身長は60センチくらい。全身はピンクでずんぐりむっくりなスタイルだが青い狸ほど頭は大きくないが3頭身。目は楕円を横にした感じに瞳にハートを浮かべている。
特徴的なのは頭から垂れている長い耳。これが無ければ兎だとは思わなかった。
片手には釘バットを持っている。兎?がズイとハンカチを持った手を近づけてくる。
あら、私のハンカチだ。
「あ、ありがとう」
恐る恐るそれを受け取ると、兎は抱きついてきた。
暖かい。マジかー生きてるのかー。
確かにこの町には金髪の男の娘伝説とか蛙の神様がいるーとか色んな都市伝説染みた話が蔓延してるけどさ。
私みたいなただのOLの前に現れなくてもよくない?
私の胸にぎゅむぎゅむと顔を埋める不躾な兎?
「あれ……背中にジッパーがある」
これを下ろすと小さいおじさんが出てきたりするのだろうか。
すんごい息が荒いし、一心不乱にぎゅむぎゅむしてるから本当におじさんが出てきそう。
その時は私の拳で制裁を加えよう。大丈夫、私の戦闘力は53万です。
兎?のジッパーに手を伸ばす。パシッと弾かれた。
もう一度伸ばす。やっぱり弾かれた。
この子、後ろにも目があるのかしら。
しょうがない。兎の股下辺りに手を差し入れてブツがついてる辺りを掴む。
……ない。おじさんでも無い。だと?
兎?が顔に手を当てイヤンイヤンと首を振っている。
「女の子なの?」
フンス!と鼻息を出して得意気な表情を取っている。




