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第38話 モフミミ④(モフミミ視点)

 天使様に連れられて只人族の街の前までやってきた。

 モフミミがちょうど良さそうな場所を指さすと天使様は楽しそうに機材を並べ始めてくれた。天使様って本当に音楽が好きだね。

 

 ダンスメイドたちは準備をしながら只人族の街を見て眉をしかめている。確かにすごく嫌な気配……多分瘴気とか邪気とか……が見えるくらい湧き上がっているから仕方ないかもしれないけど……。


 モフミミたちの準備終わる間に只人族の人たちがたくさん門の前に集まって来ていた。その中には私に意地悪してた人たちもたくさんいて、私たちを睨んでいる。

 でも私はもう目を逸らしたりしない。私の伝えたいこと……聴いてほしいことを音楽に乗せるんだ!

 そう思ったて拳を握りしめたところ……。


「痛いっ!」


 モフミミの頭がすごく痛い。手を当ててみる……血が出ていた。ステージの脇には今までなかった石ころが転がっている。

 誰か……あそこでモフミミたちを指さしている門番の人かな……に石をぶつけられたんだ……。天使様やダンスメイドたちが怒っているけど……モフミミはやり返したいとかそういうことじゃない。

 モフミミは……私は……。


「私の歌を聴けえええええええええええええええええええええ!!」


 ステージにあるヒゲナシが作った声を大きくする魔道具を掴むと私は大きな声で叫んでいた。あまりに大きな声になり過ぎて魔道具からもキィーンという耳鳴りのような音が出ている。初めて天使様に会ったその時のように天から私の声が鳴り響いていた。

 こちらを見て罵声をあげていた人たちも黙り込んで場が静まり返っている。




 私は天使様を見る。天使様が頷いてくれた。


 ダンスメイドを見る。モフミミを励ますように両手を胸の前でガッと顎に付けている。


 ギターマンを見る。ギターマンは同意するようにウィンクをしてくれた。

 

 ヒゲナシを見る。ヒゲナシは面白そうに顎髭を引っ張ろうとして……空振りしていた。髭なくなっちゃったものね……。モフミミの毛は無くならなくて良かった。


「さあ!いってみよー!」


 天使様がそう言って右手を挙げた。私とギターマンがギターとピックを掴み、ダンスメイドがベースを抱き、ヒゲナシがスティックを掲げる。準備完了だ。


 私は大きく息を吸い込むと私の作った曲名を叫んだ。


「ラストワン!!」


 天使様が、ギターマンが、ダンスメイドが、ヒゲナシが、そしてモフミミがモフミミの作った曲名を弾き始める。イントロが終わり、モフミミはモフミミの想いを歌にのせる。


「♪何か持って生まれたわけじゃない ♪そして何も持たずに旅立つ」


 モフミミは大好きなお父さんとお母さんから生まれたけど何の力もない小さな存在だった。


「♪私は一人立ってる ♪だけど後には誰も続かない」


 モフミミは最後の獣人族。それも最後のひとり、つまり番がいない。獣人族はこれから生まれることは二度とない。


「♪それでも ♪だから ♪私は歌う ♪何かを残すために歌うよ」


 モフミミは声を張り上げる。モフミミがモフミミとしてここに生きていた意味を残すために。


「♪こんなに悲しいことも ♪つらいこともこれで終わりにしよう」


 獣人族はここで滅びることになるけど、私が最後のひとりになってしまったけど、だからと言って他の誰かが同じようになるようになるなんて絶対に嫌だ。

 ダンスメイドやギターマン、ヒゲナシだってこのまま瘴気で滅びるなんて絶対に絶対に嫌だ。


「♪誰かを羨みそれを奪うより ♪何かを守るためにそれを奪うより」


 そんな瘴気を生む只人族の心を、悪魔に魅入られてしまった心を……。


「♪自分の力で作っていこう ♪育んでいこう」


 そんな悪魔に抗うだけ強くなってほしい。ダンスメイドのように人に優しくなってほしい。


「♪いつも悪い私が囁く ♪いつも悪い私が暴れる」


 モフミミだって悔しくないわけじゃない。悲しくないわけじゃない。只人族にやり返したいとだって思ってしまうこともある。


「♪でも分かり合えないわけじゃない そう!」



 曲調が変わる。ヒゲナシの心地よいドラムの音とともに始まるのはギターマンのソロパート。音が弾けて飛んで……。



───そして……


 天使様の羽根とともに白いなにか……魔道具を只人族の方へ飛ばしていた。なんだろうあれは。白い棒?ヒゲナシの作ってたやつ?


「♪心に輝く響きが ♪希望を運んでくる」

「♪空高く舞い ♪星たちと共に」

「♪私たちの歌が世界を包む」

「♪共に歩んでいこう 未来への扉へ」


「♪私はラストワン! ♪これがラストワン!」


 でも!だからこそ!モフミミは人を傷つけたりしない。只人族を恨んだりはしない。だから只人族には変わってほしい。


 ここからは私の大好きな天使様に初めて教えてもらった『ドレミ』の歌のアレンジだ。

 気が付くと只人族たちから嫌な気配……瘴気が消えていた。そしてその手にさっき天使様が飛ばした魔道具……照明の魔道具を持って左右に振っている。


「♪最後に届いてほしい ♪さあ歌おう ♪ドレミ(ドレミ)」

 

 ギターマンがギターで音階を刻む。


「♪どんなときにも ♪レミファ」


 ダンスメイドがベースで音階を刻む。


「♪勇気をもって ♪ソシラ」


 ヒゲナシがドラムで音階を刻む。


「♪許しましょう すべてを」


「♪さあ歌いましょう ♪世界に奏でよう」


「♪天使の」


モフミミはダンスメイドを見つめる


「天使の」


モフミミはギターマンを見つめる


「天使の」


モフミミはヒゲナシを見つめる


「♪天使の音楽(ミュージック)

お読みいただきありがとうございます。

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