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第37話 モフミミ③(モフミミ視点)

 何なのこの人!すごくキラキラしてる!翼がはえてる!それに私と同じくらいの背丈なのにすごく強そう!それに体中から音があふれてる!


 天使様から出る音はすごく大きくてとても心に響いたのだけれど、あまりにも大きくて頭がくらくらしてしまった。


「※※※※」


 天使様が何か言っている。

 周りを見ると私をいじめていた人たちは全部倒れていた。なんだか少し胸がすっとした気分になった。そして私は天使様から『モフミミ』という洗礼名を貰った。







 天使様と会ってからモフミミの生活は変わった。それに天使様は何でもできるすごい人だと思っていたけど言葉も分からないし、何かするたびに体から音楽が溢れてくるし、とても面白い人だった。

 

 モフミミも天使様も一緒に只人族の貴族に捕まってしまったけど、天使様は全くそんなことを気にしていないみたい。なんか好き勝手に行動してる。


 もしかして何も考えてない?


 どこからともなく道具を出したり、どこからともなく料理を出したりするのはすごく驚いた。

 食べた料理はどこか懐かしいような感じがした。初めて食べる料理なのになんでかな。どれもこれまで食べたことがないほど美味しかったけれど。

 あ、お肉と一緒に嫌いな野菜も入っていたけど……食べなきゃダメ?


「※※※※」


 何か怒られたので食べた。


 その後、たくさんのお湯のある部屋を天使様が出した。もうこの人は何でもありなのかもしれない。

 泡で体を綺麗にしていると天使様からまた音が漏れてくる。思わず口ずさむとその音に合わせて天使様が歌った。


「♪どれみふぁそらしど~」


 7つの音が湯気いっぱいの部屋の中に響き渡ってとてもワクワクする。モフミミはその音がすごく好きになった。


 モフミミも天使様と一緒に歌う。

 天使様も笑顔になった。きっとモフミミも笑顔になっていたと思う。

 モフミミも天使様と一緒だと楽しい事ばかりで嫌なことを忘れることができた。途中で嫌な感じのする只人族が来たけど天使様があっさり追い返していた。







 もしかしたら天使様は捕まったとさえ思っていないのでは……なんて思っていたら、嫌な感じがしない只人族の女の人が現れた。綺麗な只人族?

 むしろ綺麗な光に包まれているようにも見える。知恵の実を食べて邪気をまき散らす只人族なのに?


「お願いします。どうか、ここから逃げてください」


 その女の人が言うにはこのままここにいると大変なことになるので逃げてほしいという話だった。

 扉を開けるためのドアノブをテーブルに置いて天使様を説得しようとしているけど……駄目だ、この天使様。首をコテンと傾けてる。たぶんまったく分かってない。


 女の人もそう感じたのか今度は身振り手振りでそれを伝えようとしている。すごい動きだ。何というかキレがある。ぶんぶんと腕を振って扉へ駆けだすようなポーズで止まっていると……天使様もそれを真似て何か言っている。


「※※※※」


 またちょっとアホな勘違いをしているのかな。

 すると突然頭上から音が降ってきた。軽快な音とともに天使様が踊り出した。え、どういうこと?なんでモフミミの方を期待した目で見ているの?


「※※※※」


 でもモフミミもいつの間にか天使様に手を取られて踊っていた。天使様の動きを真似て右に行ったり左に行ったり、音に合わせて手足を動かす。なにこれ!楽しい!


 夢中になって踊っているといつの間にか女の人も踊っていた。そして女の子もダンスメイドという洗礼名を貰った。


 テテーン!モフミミに仲間が増えたよ。


 ダンスメイドの踊りはすごかった。

 なんというかキレがすごすぎると言うかリズムの方がダンスメイドに合わせているんじゃないかっていうのか、とにかくすごかった。楽しい!最後に天使様とダンスメイドと私でお尻をぶつけあって音楽が止まった。お互いに手を叩きあって嬉しさを共有する。

 只人族にもいい人がいると初めて知った。ダンスメイド好き。


「良いですか?逃げてくださいね?」


 踊りが終わってダンスメイドが恥ずかしそうにしながら念押しをして出て行ったけど……天使様は出ていこうとしない。この天使様はアレだね、うん。分かってない。分かってないよ。


 仕方ないのでモフミミがドアノブを持ってドアを開けてあげる。天使様が『おおー』とでも言いたげな顔をしている。完全に分かってなかった。







 モフミミは天使様と一緒に屋敷から逃げ出して、モフミミのなけなしの荷物を持って天使様の背中に乗り、森へとやってきた。


 天使様飛べたんだね。


 森だ……。空の上から見た大森林は鬱蒼としていてすごく嫌な感じに満ちていた……のだけど。

 

「くしゅん」


 天使様がくしゃみをすると森から嫌な感じが全部無くなってしまった。どういうことだろう。見ると森の中の怖い動物たち……魔物も大人しくなってしまっている。

 いつもはすぐに襲ってくる角うさぎも人懐こくなって天使様にじゃれついていた。あれなら簡単に捕まえられそうでちょっと嬉しくなる。


「※※※※」



 その後は天使様が何か叫ぶと家を建ったり、そこで畑を作ったり、歌を歌ったり、不思議な道具を使って勉強したり色々していると、いつの間にかダンスメイド、ギターマン、ヒゲナシの3人が天使様の家族に加わった。


 ギターマンの故郷もヒゲナシの故郷も天使様のくしゃみ一つで邪気が全部吹き飛んでいた。やっぱり天使様はすごい。


───そしてヒゲナシの故郷から家に戻ってきたとき……



 ヒゲナシが言った言葉で私は思い出した。只人族がまき散らしている瘴気の影響で獣人族は全滅しちゃったことに。

 天使様が浄化したとしても只人族は今もなお、瘴気をまき散らし続けていることに。だから私は……。


「只人族のところに行く!」

「モフミミ!起きていたのかい!?」


 深夜の密会。そこにモフミミが現れたことにギターマンが驚いている。ダンスメイドは悲痛な顔で私を見ているし、ヒゲナシの表情は同情かな。でも、そんなんじゃない。


「行って歌を歌う!」

「歌を?」

「モフミミの気持ちを歌う!」


 良く分からないけどそうしなければいけないという気持ちがどんどん湧いてくる。モフミミはモフミミの考えを3人にするとみんな協力すると言ってくれた。

 天使様は言葉が分からないけど歌が大好きだからきっと協力してくれる。私は天使様たちとともに只人族たちの前に立つことにした。

お読みいただきありがとうございます。

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