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第32話 大失敗

 フェス行き旅行二日目。

 ついに森を抜けることに成功した。ここまでは空から見ても一面全部森だったからね。岩場が目の前に広がってるのを新鮮に感じる。


 うーん、岩場というか山だね。ところどころに低木が生えてるし、ちょろちょろと水も流れてるけど全体的には岩。その間に人が通れそうな道のようなものが続いているけれど、あれ人が作ったのかな?それとも自然にできたのかな?


「ヒゲナシ君。この道をまっすぐでいいの?」

「※※※※」


 頷いている。ということは良いと言っていると思う。もし違うって言っていたら困るけどね、迷子になっちゃうから。いいんだよね?


 そんな感じでふわふわと飛びながら山を越え、山を越え、山を越え、この辺り本当に山しかないね。進んでいくとそこに見たものは……結局山だった。

 

「※※※※!」


 また山かーって感じだけれどヒゲナシ君が叫んでいるのでその山の前に降りる。いや、これはもしかして岩山じゃないのかな?岩に巨大な門が設置してある。


「あ、人だ!」


 第一村人発見!!門の前に二人のもじゃもじゃがいた。髭をたくさん生やした人だからもじゃもじゃでいいよね?

 

 うーん……デジャブ!

 

 ヒゲナシ君の変身前の姿に似てる!背格好も同じくらいだから同じくらいの年の子供なのかな?子供が門番をしている?それともヒゲナシ族はこの背丈が普通なのかな。


「こんにちはー、フェスの会場はここですか?」


 疑問はともかくまずは挨拶とフェス会場の確認だ。

 どんなバンドが集まっているのか、どんな曲が演奏されるのか、早く会場に行きたい!見たい!聴きたい!ここでいいんだよね?

 ヒゲナシ君が案内してくれたのだからきっとここで間違いないと思う。そんな期待にあふれる私に対して門番たちが……。


「「※※※※」」


 ちょっ……なんで笑うの?言葉は分からないけど笑っていることくらい分かるよ!

 なぜか二人のもじゃもじゃは私たちを見て大笑い。あ、ヒゲナシ君が二人を殴った。なぜに。暴力反対!


「ちょっ、やめなよ」


 よく分からないけれど顔を真っ赤にしているヒゲナシ君をみんなで引きはがす。喧嘩はダメだよ喧嘩は。で?で?入っていいの?フェスはいつ開始なの?はよっ!はよっ!


「入っていいの?もう入っちゃっていいの?」


 そんな期待をしながら見ているとヒゲナシ君はもじゃもじゃたちと仲直りしたのか門が開き始めた。よかったー、入っていいみたいだ。

 

 それにしてもでっかい門だねー。君たち小さいのにこんなにでっかい門が必要なの?それともヒゲナシ族は大人になったらでっかくなる種族なのかな。


「いっくしっ!」


 門が開いた時、嫌な風が中に吹き込んだからかくしゃみをしてしまった。あら、やだ。恥ずかしい。そんなに見つめないでもらえます?乙女のくしゃみはスルーが基本でしょ。


「おおー、すごい」


 門から中に入るとそこには大都市が広がっていた。岩の中をくり抜いて作ったののかな。これはすごいね。思わず思い出箱からカメラを取り出してパシャリ。フェスの思い出に撮っておこう。

 

 見たところ一応地上だけど地下都市みたいな感じだ。まるで彫刻みたいに岩を削り出されて建物になっている。ほえー、でっかいなー。


 きょろきょろとお上りさんみたい……というか私は完全に森から出てきたお上りさんなんだけど挙動不審な動きの私たち一行はその中で一番大きな建物の前まで案内された。


「ここが……フェス会場!?」


 でっかい!まるでお城みたいにでっかい会場だ。そこでもヒゲナシ君がまたモジャモジャたちに笑われて殴り合ってというやり取りがあった。あのやりとり毎回やらないといけないの?もしかしてアポなしじゃないよね。無理やり参加したいとか思ってないからね。


「※※※※」


 ヒゲナシ君はずんずん道を進んでいく。

 よかった。多分フェスへの参加チケットは持っているようだ。ん?なんか部屋に通されたよ。ここで待っていればいいの?


「※※※※」


 ヒゲナシ君がいなくなった部屋で私たちは待つことにする。開催まで時間があるのかな。開催日も知らないし、もしかしたら別の日かもしれない。でも……。


「今日かもしれないよね」


 だったら楽器のチューニングを確認しておこう。ピアノにエレキギターにベースにドラム。うん、大丈夫そうだ。問題がないのを確認して思い出箱にしまっているとヒゲナシ君が戻ってきた。


「ついていけばいいの?」


 手招きをするので再びヒゲナシ君についていく。

 階段を上って進んで上って進んでまた階段を上って……この建物大きすぎない?

 

 到着したのは赤じゅうたんの大きなお部屋。


 パラパパッパッパッパー!ダダダダダダダン!ジャーン!


「!?」


 なにごと!?

 部屋に入ったとたんに壁の方にいたもじゃもじゃたちが楽器を鳴らしたんだけど!もしかしてあの人たちもフェス参加者?ということはここが本当の控室……には見えないなぁ。


「※※※※」


 なぜなら部屋の中の高い位置に何人か椅子に座った人たちがいるのだもの。

 ということはここって……審査会場ということね!そしてあの一番高い位置にいるもじゃもじゃが審査委員長なんだよ!


「※※※※(では皆さん採点を)」

「※※※※(10点)」

「※※※※(9点)」

「※※※※(8点)」


 こんなことを言っている(と思う)。何点を付けられたか知らないけれど壁際のバンドチームは微動だにしない。点数低かったのかな?結構上手かったと思うけど、どんまいだよ。


「※※※※」


 なんか審査委員長のもじゃもじゃが『こっちゃこいこい』とジェスチャーしているので私たちは開いているスペースに立つことになった。


 なるほど、ここで演奏を見せてみろと?よろしい、ならば戦争だ!


「いくよ、みんな!いでよ!フェスステージ会場!」


 どーんと飛び出したのはヒゲナシ君が作ったフェスステージにセッティングされた楽器の数々。

 私はパタパタと宙を飛んでいくとピアノの位置にフェードイン。準備完了!


「さぁ、みん……な?あれ?」


 あれ?私以外誰も楽器を手に取ろうとしない。

 どうしたんだろう……。モフミミ?なんで困ったみたいにきょろきょろしてるの?ギターマン?君はなぜギターを持とうとしないんだい?ダンスメイドよ、目の焦点が合ってないけど大丈夫?ヒゲナシ君、なんで頭を抱えてるの?


 なるほど……理解したわ。私も経験あるもの。これは……みんな緊張してるのね!それはそうね、初ライヴだもの。私としたことはうっかりしてたわ。


 ここは私が頑張らないと!


「みんな!大丈夫だよ!見ててね!」


 思い立った私はピアノを弾き始める。曲は私が作曲してみんなで練習してきた曲だ。当然ドラムもギターもベースもついてこないけど、まずはピアノで一通り弾き終わる。

 そして今の演奏を思い出箱に記憶!まずは私が空気を作らないとね!

 

 さぁ、どんどんいくよ!ピアノの演奏をそのまま思い出箱から再生!

 おお、ピアノの鍵盤がが勝手にさっきの演奏を再現しているね。音だけじゃなく動きも再現するとは不思議な感じだ。

 

 次に私が演奏するのはドラムだ。

 自分で演奏したピアノに合わせてリズムを刻むよ。

 そんな感じでベースにエレキギターと続けていき、ついに演奏が完成する……というところで事件が起きた。


ダダダーン!


 私のエレキギターの演奏に合わせるように打楽器の音が響き渡ったのだ。

 その音の出どころは……私の前に演奏していたバンドチームだ。なにごと?演奏の邪魔するとか喧嘩でも売ってるの?あーん?


 そんなことを思っている私を挑発するようにそのバンドチームがドラムを鳴らし続ける。


 これは喧嘩を売っているというより……もしかしてアピールタイム?自分たちのほうがフェスに相応しいってことを言いたいの?もしかしてそういう形式なの?


「だったらやっちゃうよ!」


 いいじゃない!そういうのは嫌いじゃないよ。バトっちゃう?バトっちゃっていいの!?じゃあいくよ!


 突然始まる別のバンドとのセッションバトル。私がギュインギュインギターをかき鳴らせば、相手は目にも止まらぬ速度で打楽器のビートを刻んでくる。


 熱い!熱いわ!私こういうの大好きだから!


「オオオオオオオオオ!」

 

 私はステージから飛び降りると縦横無尽に走り回る。当然ギターを演奏しながらだよ。楽しくなると誰だってこうなっちゃうよね!


 shoutをしながら髪を振り乱し、ヘドバンを決め、

はてはエビぞりで頭を地面に付けて、ぐるんぐるんと体を回転させてながら……。


「私の……私の音を聴けーーーーーーーーーーーーーーー!」


 そんな私の叫びとともにシーンと静まり返る審査会場……。


「あ、あれ?」


 相手バンドのメンバーの音が止まってる、というか目が泳いでる。審査委員たちもキョドってる。


 なんか気まずい雰囲気……。これは……。


 や、やってしまったあああああああ!そうだよ!私は以前こんな感じで熱くなって叫んだり、会場にダイブしたり、ギターで壁や床をぶん殴ったりしてバンドをクビになったんだよ……。

 あの時のバンドメンバーの目は忘れられないよ。


「……(ちらっ)」


 恐る恐るエビぞりの姿勢から審査委員長を見ると大口を開けて固まっている。うん……こりゃあかんわ……。怒られるやつだ。


 そりゃそうだよね。ぽっと出の新人バンドが何を調子に乗ってやってくれとんじゃいって感じですよねー。

 

 これは……逃げるしかない!


「て、撤収うううううううう!」


 急いで楽器と舞台を思い出箱に回収。

 モフミミたちの手を掴むと入り口までダッシュだ。モフミミが私を真似て『てっしゅー』と言っているけど意味わかっていっているのかな。


 本当にごめん、ヒゲナシ君。

 せっかく用意してくれたけれどフェスには参加できそうにないよ。君だけでも楽しんで来て……ってヒゲナシ君もついてきてるね。


「いいの?一緒に逃げちゃって」


 なんか頷いてるからいいのかな。さーて、逃げるよ。そういうことで、私たちの初めてのフェス参加は大失敗に終わったのでした。

お読みいただきありがとうございます。

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