第29話 フェスへの誘い
吾輩は天使である。名前はまだない。
どうも、私です。
ヒゲナシ君が我が家に来て2週間ほどが経過した。
そしてなぜかヒゲナシ君も我が家から帰らなかったのよね。私以外のみんなとは仲良く色々と話をしているのをよく見るのだけれど、私とは言葉が通じないのでよく分からない。
だけどみんなで笑っている時もあるので私も一緒に笑っている。『笑ろとけ笑ろとけ』というやつだ。分からなければ笑っていれば何とかなるよ、うんうん。
ヒゲナシ君用にも家を一軒建ててあげたんだけれど、他のみんなと同じように我が家で一緒に暮らしている。さすがに5人となるとベッドが狭い。私は天使特性で全然苦じゃないのだけれどみんなは気にならないのかな。
それからヒゲナシ君は畑を手伝ったりしてくれてることになった。
手先が器用なようで他にもいろいろ手伝ってくれていて特にDIYが好きらしい。
倉庫に入ってた工具一式を渡したら色々作ってくれた。棚とか椅子は分かるけどよく分からない道具も作ったりしている。
何?この棒に細長い石をくっつけたような道具は?
「どうやって使うんだろう」
とりあえず振ってみる。ピカッと石が光った。なるほど、分からん。
♦
「ということで、ヒゲナシ君も我らがバンドメンバーに入ることなりました。拍手!」
言葉が通じていないので拍手しているのは私一人だけどね!
ヒゲナシ君も我がバンドメンバーに加入することになりました。いやぁ、一人きりで音楽活動やってたのに充実してきたねー。メンバーが5人だよ5人。最初の5倍。
いや、別に私はコミュ障とか一人が好きとかで一人でバンドやってたわけじゃないのよ。それは聞くも涙、語るも涙の話があって一人だったわけですよ。
それはさておき5人になったことでやれることも増えてきたね。これまでは私やモフミミがギターやドラムやピアノを兼任したりしてたけど、役割分担も出来てきたと思う。
ギターマンはエレキギターばっかり弾いてるから多分ギター担当。
モフミミもギターが好きそうだからダブルギターかな?
ダンスメイドはベースが上手いと思う。踊りながら弾くのはどうかと思うけどね。
ヒゲナシ君はドラムがお気に入り。休みの日は1日中叩いてたこともあった。打楽器いいよね。もうダダダダダダときてジャジャーンと細かな周りを気にせずに叩きまくるのは楽しいものね。
「それでは今日のお小遣いを配ります」
ヒゲナシ君も我が家に住み始めたし、仕事もしてくれているので毎日100円ずつ渡している。うーん、相変わらずわが社は薄給で申し訳ない。そのうち増やさないといけないかな。
そんなヒゲナシ君は最初は100円玉自体をすっごく見つめてた。そんなに珍しいものでもないと思うんだけどね。こっち世界の硬貨と違うからかな。
そしてお小遣いで何を買うのかなと思っていたら……。
「え?これが欲しいの?」
私が料理に使っていた包丁を持ってお金を見せてきた。包丁とか料金表作ってないよ。今までは肉と作物しか需要がなかったし……。
料金表作り直し!
包丁 300円
お玉 100円
金槌 300円
バールのようなもの 500円
こんなところかな。他にも欲しいものがあるようだったら追加しよう。DIYに使うんだろうしね。
───それから十数日
なんかフェスの舞台装置のようなものが出来てあがっていた。観客席もあるし、どうしたのこれ?作った?ここで演奏していい?やるじゃんヒゲナシ君。でも観客がいないんだけどね!
♦
ヒゲナシ君が来てから1か月ほどが経過した。
最初はやせっぽっちだったヒゲナシ君だけど今はちょっとぽっちゃりさんになっている。食べすぎ?いや、それならもっと肉ばっかり食べてるモフミミの方が太るよね。
「(もぐもぐ)」
モフミミは今日もお肉を食べている。
この1か月の間にいろいろあった。まずはついにオリジナル曲を作ったのだ。みんなでね。私も色々作曲してたけど、人が作った曲を聴くのはワクワクするね。
モフミミが恥ずかしそうに楽譜を見せてくれた時にはお姉ちゃん感動して涙が出たよ。
フェス会場も出来上がったということで、最近はいろんな曲を合わせている。私の曲もあるし、他の4人の作った曲だってもちろんある。
観客はいつもの森の動物たち。何匹かはモフミミの手にかかってお肉になってしまったけど……数は減っているようには見えない。君たち繁殖力高いね。特にうさぎたちは結構な頻度でモフミミにハントされていたはずなのにいつもたくさん顔を出してくる。
そんな感じでヒゲナシが来てから1か月が過ぎたある日……ヒゲナシが何やら荷造りをしていた。
「※※※※」
なるほどなるほど、どこかに出かけるのかな?知らんけど。いまだに言葉が分からないし。
「※※※※」「※※※※」「※※※※」
モフミミたちとも何やら話しているね。相変わらずの疎外感!お姉ちゃん疎外感半端ないよ!……と思っていたらモフミミたちも荷造りをし始めた。どしたの?出ていく……わけないよね。
何か理由があるはず……最近の私たちの生活の中にヒントがあるはずだよ……。
私なら分かるはずだ!これまで言葉が全く分からない中でもコミュニケーション取って来たじゃない。思い出せ。きっと最近を……。
最近……最近は……。おうちにフェス会場が出来たよね……。ヒゲナシが作ってくれたやつ。結構立派だね。森の動物たち相手じゃもったいないくらい。
私はフェス会場の舞台を見つめる。ん?森の動物たち相手じゃもったいない?
「まさか!?」
「※※※※」
バッとモフミミたちを振り返って見つめると私に向って頷いていた。そうなの?私の予想的中なの?
「フェスなの!?フェスに行くのね!?」
きっとそうに違いない!
それは大変だ。フェス見たい!聴きたい!もしかして参加とかさせてもらえるのだろうか。あの舞台はそのための物!?やっぱりコネって大切だね。きっとヒゲナシ君はフェス主催者の関係者に違いない。
いやぁ、私には分かっていたよ。うん、立派なお髭だったものね。うん、あれは立派なお髭だった……剃っちゃったけど……怒ってないよね?向こうについたら怒られたりして?ちょっと心配になってきた。
「えっと、持っていくものは楽器に楽譜に……着替えもいるよね……それから……」
いや、ちょっと待って。別に全部荷物は思い出箱に入れちゃえば良くないかな?
「……ッという言うことで!」
私はモフミミたちの荷物もまとめて思い出箱の実家に突っ込みました。そう、別に手ぶらでいいよね。
おおう……みんなそんな残念そうな目で見ないでほしい。やっぱり雰囲気が大切だった?リュックとか手にうちわとか持ってたほうがよかった?
まぁいいや、そんなわけでヒゲナシ族のフェス会場へと出発だ!
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