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第3話 天使の能力

 よくよく見るとその姿見には見覚えがあった。


「これって私の部屋の鏡……だよね?」


 それは毎日私が朝起きて自分の顔を写していた鏡だった。

 私の部屋にあったやつだ。毎日使っていたのだから忘れるはずがない。いったいどこから出てきたんだろう。


 姿見を触ったり持ち上げたりしてると……姿見が消えた。え、なんで消えるの!?


「……あれ?今の感覚は……?」


 中空の姿見が消えた辺りに手を伸ばすと手がすっぽりと見えなくなる。でも痛みはない。私は目を凝らして手の見えなくなった辺りを凝視すると……。


「私の家だ!」


 手の消えた中。異空間とでもいうのか今いる場所とは別の空間に私の住んでた家がまるごとあるのが見えた。


「もしかして……」


 私は空間に突っ込んだ手で我が家の食堂のテーブルに置いてあるしょうが焼きの皿をつかむと引っ張り出す。


「わっ!出た!」


 目の前には出来立ての豚のしょうが焼きが美味しそうな香りを放っている。これってもしかして異世界転生定番のアイテムボックス的なものかな?神様的なアレが入れておいてくれたとか?でも今はお腹空いていないんだよねー。


「これで6食分くらいは食料確保……ってことでいいのかな?」


 家族6人分がテーブルに並んでいたし、冷蔵庫にも目一杯食材がある。野菜類は倉庫に結構な量があったはずだし、家庭菜園もやっていたから種から育てることも出来る。


「お腹すいてないからこれは戻してっと……あれ?」


 しょうが焼きの皿を空間に戻そうとして私はその異常に気づいた。


 空間の中にある食卓から1皿とったので残りは5皿のはずなのに取ったはずのしょうが焼きの皿が減ってない……?私の手には1皿。空間の中に6皿。最初に見た時から何も変わっていない。


「おかしいわね……じゃあ」


 手に持った皿を空間に戻してみると……。


「うーん……」


 それでもお皿が増えることもなかった。まったく変化しない。アイテムボックス的な空間に家が丸ごと入ってると思っていたけれど違うらしい。


「それなら……」


 今度は私の部屋にある愛用のピアノを引っ張り出す。片手で引っ張り出せるか心配だったけれど簡単に取り出せた。

 森の中にピアノを設置。森のピアノってなんか神秘的でいいよね。

 

 それでも空間の中にはまだピアノは残ったままだ。さらにもう一つピアノを引っ張り出そうとすると……。


「二つになっちやった!」


 なにこれ、いくらでも取り出せるじゃない。でも戻しても中で増えるわけじゃない……。ああ!何となくわかった気がする。


 これはアレね。神様的なアレの仕業ね。そっかー。家族をよろしくってお願いがこれになったのかー。ジェスチャーで家を表現したものね……って意味が違うし!でも……それはそれとして……。


「便利そうだからいいかな」


 まぁ深く考えることはないでしょ。収納箱(アイテムボックス)というよりは想い出箱(メモリーボックス)って感じね。


 さて、お次に確認するのはいよいよ背中の翼。

 これの機能は確かめなければいけないでしょ。果たして飛べるのだろうか。空を飛ぶのって憧れるよね。あの大空に自由に飛んでいきたいとか歌でも歌ってたしね!なんで翼なんて背中についちゃったの!とか思ってたけど前言撤回。やっぱり飛んでみたい!


「さぁ!いってみよう!」


 右手を突き出して私のいつものポーズ。演奏の初めにはこれをやってるんだけど、まぁ私の動画を見てる一部の人しか知らないのよね。閑話休題。


 まぁいいや。まずは翼をパタパタしてみよう。


 うーん、浮かないね。勢いが足りないのかな?もっとパタパタしてみる。これでもダメ?じゃあもっともっと……。もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと!


 ビィイイイイイイイ。


 もはや翼の立てる音じゃない……虫の羽レベルの勢いと音になっているのだけれど……ついに……。


「おおっ!浮いた!浮いた……けど……はぁ……はぁ……」


 なんか違う!

 一センチくらいしか浮いてないし、うるさいし!ちなみに息切れは気分的に息をしてるだけで体は全然疲れてなかったりする。そもそも息をしなくても苦しくならない。


「こう、ぴょんっピューン!って感じで飛べたらいいのになぁ」


 そんなことを考えながら次は助走をつけて走りながら地面を蹴って飛び上がってみた。


「……!?」


 やった!飛べたよ!

 何か分からないけど揚力とは違う謎パワーで!

 

 うん、すごいね、謎パワー!『謎パワーってなんだよ』って話なんだけど謎パワーは謎パワーだ。考えても仕方ない。息をしなくていいのもきっと謎パワーだ。私は細かいことは考えないのよ。


 しばらく空の散歩を楽しんだあともとの場所へと戻ってくる。正直すごく楽しかった。空を自由に飛びたいという夢が叶ってしまった。


「次は身体能力チェーック!」


 なんか楽しくてハイテンションになってきちゃった。どんどん確認していこう。


 結構動き回ったのに全然疲れてないから見た目は六歳児並みの体の割には体力がある気がする。


 次に確認するは腕力だ。ピアノを片手で持てるんだから結構あるでしょう。

 よし、とりあえず正拳突きでもやってみようかな。空手なんてやったことないけど見よう見真似で……。


「せい!」

 

 私の両足を広げて不格好な正拳突きモドキを目の前の大木に放つと……拳が木に突き刺さり、バキバキという音と共に木が倒れてしまった……。


「あー……えっと……パワーヨシ?」


 いや、そんなことより自然破壊!自然破壊しちゃったよ!なにこの力!?ごめんなさい大木よ、君をこんなにするつもりはなかったのよ。傷は浅いわよ!折れてるけど!

 どうしよう……治るかな?木はもともと生命力高いしもとに戻せばくっ付かないかな?


 他の木に倒れかかってしまった木を押して元の位置に戻してみる。治れー、治れー。くっついてー。


「あ」


 おお、何か治った。生命力の強い木だったのね。よかったよかった。ってこれも謎パワーかな?もうみんな謎パワーのせいでいいや。


 さて、ここでこまでの整理してみましょう。能力についてね。


 体力や腕力:たぶん熊より強い

 飛行能力:楽しい

 想い出箱:実家から記憶にあるものを取り出せる?


以上!




お読みいただきありがとうございます。

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