第24話 ギターマンとゆかいな仲間たち
翌日、ギターマンは……帰らなかった。
いやいや、帰りなさいよ。もしかしてあなたも家なき子なの?同情よりお金を求めちゃったりしちゃうの?お父さんとお母さんはどうしたの?いない?それだったら……。
「仕方ないなぁ……」
ということで家族が増えました。これで4人家族だね。
家族が増えたのでギターマン用の実家も建ててあげたのだけれど……なぜかギターマンも私のベッドで一緒に寝ている。
モフミミもダンスメイドもいるのにこれは事案では、とも思ったがそんな素振りも全くないってことはギターマンは女の子?ギターマンはギターガールなのかしら?
それにしても実家が4つも無駄に並んでいるね、シュールだわー。
同居人が増えたということでギターマンにも当然畑仕事を手伝ってもらおう……と思っていたらモフミミとダンスメイドと一緒にギターマンが率先して畑を耕したり収穫したりしていた。
「とまと……とまと……」
でもちょっとトマトを見るギターマンの目が怪しい。なんでそんなうっとりと見つめてるの?そんな表情になるくらいおいしかった?もしかしてうちの野菜怪しい成分とか入ってないよね?前世でもみんな食べてたんですけど。
「いや、気のせいかな?」
気のせいだと思いたい。
まぁ働くというのであればギターマンにも1日100円のお小遣いをあげることにしよう。ギターマンは何を欲しがるのかな?やっぱり野菜かしら?だったら商品も更新しないといけないよね。
ということで商品を一新。
お肉(牛、豚、鳥) 100g 78円
お魚(サンマ、アジ) 1尾 98円
シュークリーム 1個 88円
ケーキ 1個 148円
文房具各種 1つ 98円
作物の苗 1つ 48円
野菜各種 1つ 78円
などなど
計算の勉強のために値段は中途半端にしているけど、今のところモフミミは肉しか買っていない。比喩ではなく肉以外一切買っていない。
子供らしくお菓子とか買いなさいよ。お肉ばっかりじゃ栄養偏るしね。それともモフミミ族は肉食だったとか?ネギとかタマネギ食べさせちゃダメだったかなぁ?今のところ健康に問題はなさそうだけどちゃんと様子を見ておこう。
「おにく!」
今日も元気にモフミミはお肉を食べている。まぁいいか。
ギターマンは何を買うのかと思ったら作物の苗を買ってはたまにどこかに出かけていく。家庭菜園じゃなくて個人の菜園でも作る気かな。それもまた良し。
ダンスメイドはというとお小遣いは貯めているみたい。そしてたまにお肉を買ってモフミミに餌付けしている。おのれ……その手があったか。私もモフミミにあーんとかもっとやりたかった。
そんな感じでギターマンも加わり毎日楽しく過ごしていたのだけれど……。
「えーっと……。どうもこんにちは?」
「※※※※」
ギターマン族の方々がたまに来るようになりました。
ええ、ええ、皆さんとても美形揃いで耳が長いからギターマン族だと思うよ。おい、ギターマン!あんた家族とか仲間の人いるんじゃん!なんでうちにいるの!?
御来訪された皆さんはというとトマトに興味津々みたいだ。
庭でとれたトマトをあげたら何やら天に掲げてすごく嬉しそうにしている。もしかしてギターマンは苗を彼らにあげてたってことかな。家庭菜園仲間?なんだかワイワイしてるね。
「※※※※」(トマトを!もっとトマトを!)
多分こんなことを言っているのだと思う、知らんけど。
でもただで差し上げるのもね?えっへっへ、世の中ただより高いものはありまへんでー。
「※※※※」
「あ、お金払ってくれるんだ……ってなにこれ?」
こっちが求めなくても宝石っぽい石を渡してきたけど……。もしかしてこれがお金代わりなの?ガラスなのか宝石なのか分からないけど、綺麗は綺麗だね。
「でもいりません!」
私は両手でバッテンを作る。
なぜなら使い道がないから。ダンスメイド族の硬貨とかギターマン族の宝石貰って私に何をしろと?買い物?しないよ。価値も分からないし、今のところ自分の持っているもので満足しているしね。
だからこんなものを貰ってもただ貯まり続けるだけで何の価値もないの。お金って言うのは双方が納得しているから価値が生まれるものだからね。残念ながら我が天使帝国は自給自足だし、どの国とも国交を結んでいないので円以外の貨幣は認められないのよね。
「欲しいものがあったら働いてくださーい」
……ということでギターマン族のみなさんとは畑を1日手伝ってもらったら100円あげるという契約が成立した、身振り手振りでがんばった。
ブラック企業も真っ青な低賃金だね。そのお金で苗を買ってくれたけれど……ちょっと罪悪感。
「さすがに悪いわよね……」
なので、ご飯くらいはご馳走してあげることにした。私たちとギターマン族の人たちを入れて10人かー。そうだ!人がたくさん集まったとき作るものと言えばカレーだよね。
玉ねぎ、にんじん、じゃがいもと定番の野菜を使って甘口のカレーを作るとしようかな。まずはフライパンに油をひき、玉ねぎを飴色になるまでじっくりと炒める。
焦がしてしまうと苦みが出てしまうからね。ダンスメイドちゃんが食い入るように見つめているなぁ。この子はさすがメイドと言うか家事とか料理のスキルが高いんだよね。別にスキルレベルが見えるわけじゃないんだけど確実に私よりも出来るのは分かる。
そのうち私が作るより美味しいものを作りそうでちょっと悔しいけど、美味しければ別にいいかな。
カレーのスパイスには、クミン、ターメリック、カルダモン、コリアンダーの4種類のパウダーを使うのが一般的だがけど今回は既にミックスされたカレー粉を使ってみよう。カレールーも実はキッチンの棚にあるんだけどね。
さて、にんじんも同じように中までしっかり火を通す。火を通したにんじんは甘くなるから好きなのよね。玉ねぎを炒めたときに出る香ばしい香りを出すためにも、しっかり火を通さないといけないけれど、にんじんは弱火でじっくり炒める。
野菜を炒めたら、肉を加えるところなのだけれど……ギターマン族はベジタリアンっぽいからなぁ。肉の代わりにキノコを入れてキノコカレーにしよう。
きのこのCMソングを口ずさみながらエリンギをスライスして炒めていく。炒めたキノコって結構万能食材だと思うんだよね。パスタにホワイトソースで絡めてもいいし、中華風に野菜炒めにしても美味しい。
全体にしっかり火が通ってきたら、今度はカレー粉を加えて炒める。カレー粉は大量に入れすぎないように注意してね。ブワッとカレーの香りが周りに広がってギターマン族の人たちが一斉に振り向いた。もちろんモフミミもよだれを垂らして振り向いているけど……ごめんねー。今日はお肉なしなんだよ……。
そしてここでトマト缶。そう、トマトカレーにするのだ。
先程の具材にトマト缶を投入、ブイヨンと一緒に入れると中から水分がいっぱい出てきてとろみがついてくる。
そしてじっくりコトコト煮ること20分。塩コショウで味を調えながら、ダンスメイドちゃんに味見をしてもらう。
スプーンですくって差し出すとダンスメイドちゃんがパクリ。モフミミ、あなたはなぜ横で口を開けているんだい?まぁ、可愛いから許す。
するとカレーを口にした二人が手をぶんぶん振るいながら喜びのダンスを踊り出した。くぅー、私も一緒に踊りたい!でもそんなことをしたらカレーが焦げてしまう!ジレンマ!
「それじゃ、いただきます!」
「「「いただきます」」」
「※※※※」「※※※※」「※※※※」
ギターマン以外のギターマン族の人たちは何を言ってるか分からないけど、きっと『いただきます』的なことを言っていると思う。
みんなニコニコしながら食べてるね。私もカレーをスプーンですくってお米と一緒にパクリ。
「うーん、美味しい」
トマトの酸味のカレーに大きめのゴロゴロ野菜からの甘みが噛みしめる度に口の中に広がっていく。モフミミも夢中に食べ……スプーンでカレーの中を探ってる?
「おにく※※※※」
モフミミよ。いくら探してもお肉はないよ。ギターマン族は菜食主義っぽいからね。そんな潤んだ目で見ても……見ても……くぅ!思い出箱カモン!
想い出箱からモフミミのカレーの中に直接トンカツを混入させて上げるとカレーの中を探っていたモフミミが満面の笑顔になった。甘やかすなって?たまにはいいじゃない!いつもはダンスメイドが甘やかしてるんだから!
さて、ご飯を食べながら動画でも見ますかね。我が家は食事中にテレビを見るのがお行儀が悪いとか言う主義じゃなかったからね。
ピッとリモコンを操作して私はモニターに過去に録画していたおもしろ動画集を映し出す。うん、ギターマン族の皆さんの人たちも食い入るように見ているね。
「※※※※!」
そんな時、ギターマンが立ち上がって叫んだ。どしたの?食事中に大声出さないでよ。お行儀が悪い。
ん?ギターマン族の皆さんを手招きで呼び集めて円陣を組みはじめちょ。何事だろうか。モフミミとダンスメイドも興味深そうにその輪に加わった。
……またもや疎外感。
この動画がどうしたんだろう。目の前の動画を私はテーブルに残った一人で見つめる。ギターマンが叫び、ギターマン族たちが大騒ぎした原因となった動画。
───それは前世の海外で撮影された『街角突然どっきりミュージカル』の動画だった。
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