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第14話 ゾンビダンス

 用意していた目覚ましが鳴ったのでモフミミと一緒に起き上がる。

 昨日と言うか今朝の夜中に起こされたのはいったいなんだったんだろうね。気には……ならないな。どうでもいいか。


 洗面所で二人で横に並んで顔を洗うとタオルで顔を拭く。当然背丈が足りないので二人とも台の上に立っている。

 

 モフミミ、そんな目で見ても拭いてあげないよ。我が家はしつけには厳しいのだ。自分で拭きなさい。タオルを渡すと素直に顔を拭いている。うんうん、この子ほんとにいい子だね。


 私は初期装備の白い天使服、モフミミは私の小さい頃に着てたスカート姿に着替えて朝食だ。


 朝だから軽くトースト、レタスとトマトのサラダ、目玉焼き、焼いたソーセージくらいしようかな。


「いただきます」


 出来上がるとモフミミがソーセージに真っ先にかぶり付いていた。こら、行儀が悪いでしょう。


「一丁食いはダメだよモフミミ」


 モフミミは他のおかずに目もくれずにソーセージを一本食べきってしまう。

 残ったのは肉なし朝食。モフミミがちょっと残念そうにしている。本当にお肉好きだね。でもしつけのためだし、分けてあげないよ。今度からは順番に食べなさい。


 私は涙を飲んで自分の分を三角食べで食べていく。まずはサラダからドレッシングはゴマドレとレモン。これがないと始まらない。

 目が玉焼きをモフミミを見ながら野菜を食べ、続いて目玉焼きに醤油をかけて食べる。卵は半熟が至高なり。

 別に私は食べなくてもいいんだけど久しぶりのパンは美味しかった。バターを塗ってカリカリにしたパンに甘いバターが十分に染みわたっていた。


「ごちそうさまでした。モフミミ、これからどうしたい?」

「※※※※」


 このままここにいても良い事態にならないと思うけれど、逃げたりしてモフミミの両親が人質になったりしたら困るのでモフミミの意思を確認したい。


 でも言語力ゼロの私に言葉なんて覚えられないし……。どうしよう……うーん……そうだ!モフミミに私の国の言葉を覚えてもらうのはどうだろう!アホな私と違ってモフミミはたぶん頭がいい……と思う!


 それに小さい頃の方が学習能力は高いとなにかで聞いたような気がする。昨日はお風呂であっという間に音階を覚えてたし……いける気がする!


「モフミミ、お勉強を……」


 そう言いかけた時、コンコンと控えめにノックされた。あれ?今までみたいに勝手に入ってきたり大声だしたりしない?どうしてだろう。

 入り口を見ると……あ、ドアの横に置いてた畳が無くなってる。取られた?別にいいけど何に使うんだろう。


「どうぞー」


 まぁ、普通に接してくるならこちらも普通に対応しようかな。

 私が返事をするとおずおずといった感じでメイドちゃんが入ってきた。いつもの誘拐団三人組の一人だ。でもやっぱりこの子だけは嫌な感じかしないんだよね。どうしてだろう。


「※※※※」


 メイドちゃんがなにかを言っている。うーん?どうしたの?モフミミ?分かるの?モフミミは頷いてるので分かってるみたい。


「※※※※」


 まだしゃべってる。長い。いや、そんなに長々話されても分からないんだけどなぁ。どうしよう。モフミミに言葉を教えるのはこれからだし、どうしたものか、困ったぞ。


「※※※※」


 メイドちゃんはポケットからキノコのような形のものをテーブルに載せた。木で出来てるっぽいね。木で出来たキノコ?木のきのこ?キノコの歌の歌詞かな?

 頭の中で愉快なきのこの歌が鳴っているけどたぶん違うよね。


「※※※※」


 今度はメイドちゃんが手足をバタバタさせだした。急に挙動不審に……。どしたの……と思ったら右手を前に左足を後ろにしたような形で止まった。そして私を見つめる。私にもやれってことかな?


 なに?こうかしら?

 私が真似してみるとメイドちゃんがくるりと反対を向いて手足を逆にしてピタリと止まる。そして私を見つめる。私もクルリと回って同じポーズを取る。


 んん?これは……はっ!ロボットダンス!?いえ、ロボットよりも動きが固いように感じるこれは……ゾンビダンスね!なになに?このメイドちゃんダンスを嗜むの?好感度うなぎ上りなんだけど!ダンスは私も大好物だよ!


「いいわよ!受けて立ちましょう!ダンスメイドちゃん!さぁ、いってみよう!」


 私は片手を腰に当てると、もう片方の手の人差し指を天に向けた。踊りたいと言うなら是非もないよ!


 いくわよ、さぁ、想い出箱(メモリーボックス)からミュージックカモン!

 取りいだしたるは世界一有名なゾンビタンスの曲だ。ダンスをやってる人も、やってない人も一度は真似て踊ってみたことがあるんじゃないかな。


 ズッタンズズタンというドラムの音やに合わせて曲と歌が流れ出す。


 ソンビダンスの始まりね!


 まずは肩を揺らしてー、ほらほら、もう一回揺らしてー


「ほら、モフミミも一緒にやりましょ」


 私がモフミミの後ろに回って肩を揺らすと……おお、モフミミも分かってくた。私の真似をしている。いいね!可愛いよ!


 次はゾンビっぽくいくよー。手首の先ブーラブラってしてー。うんうん、いいよいいよー。


 そのまま関節を曲げずに右手を上げてー 左手を上げてー


 足も曲げずに左右にピョンピョンっと キョンシーダンス!キョンシーダンス!いいね!右へ―ぴょんっ!左へーぴょんっ!


 さあ、次は両手を下げて 両手を右へふらふらー 左へふらふらー

 いいよ、モフミミ!かわいいキョンシーだね。


 でもゾンビが二人じゃ寂しいな……。バックダンサーが欲しいな……あ、何か出来そう!これは謎パワーかな?いけ、謎パワー!


 出でよ!バックダンサー!


 そう念じると畳の中からゾンビならぬちっちゃい4体のミニ天使が現れた。よし、バックは君たちに任せるよ!


 さぁ、次からはテンポあげていくよー


 はい、下で両手をふらふらー、上で両手をふらふらー、足を引きずりながら歩いてー

 

 壁ところでターン!


 バックのミニ天使たちも同じように付いてくる。


 でも一体だけはワンテンポ遅れたり転んだりさせてみた。完璧なダンスも好きだけど、こういうコミカルさが私は好きなのよね。


 さあ、次は……あれ?ダンスメイドさんは踊らないのかな?あれ、なんで?なんかムンクの叫びのポーズで固まってる。

 おーい、あなたが誘ったのよー?うーん……気後れしちゃったのかな、まぁそういうことあるよね。


 よし!じゃあこうしよう!


「ほら、ダンスメイドちゃん」


 私はダンスにムンクの叫びのポーズを入れてみることにした。こういうダンスはストーリー性も大事だからね。ソンビに襲われてゾンビになってしまうメイドさんという感じだね。

 

 私とモフミミが両手を上で広げて襲うポーズからのー ムンクの叫び!


「さぁ!ダンスメイドも!」


 私の言葉にダンスメイドが正気を取り戻した。いける?いけるね?

 

 ほらほら、行くよー!私は手を引いてダンスメイドを私とモフミミの間に立たせる。

 

 さぁ、手首の先をブラブラさせて― 右手を上げて 左手を上げて 


 左右にピョンピョン

 

 両手を上げて右にー 左に― 今度は下に下げてー 右にー 左にー


 うんうん、いいよ。このダンスメイド……動くぞ!最初は遠慮しがちだったダンスメイドだけど今は笑顔だ。よーし、こうなったらミラーボールも付けちゃおう!ここはダンスホールだ!


 ミラーボールの七色の光がキラキラと部屋を輝かせる。これはやっぱり雰囲気出るねー!買ってよかった!


 おお、モフミミが腰をフリフリしている。いいね、ダンスは自由でいいんだよ。私も同じように腰を振るとダンスメイドも腰を振り出す。


 ほらほら、モフミミ。モフミミと私でお尻とお尻をこっつんこ。


「※※※※」


 うんうん、次はモフミミとダンスメイドで 

 

 高さが合わないからモフミミを謎パワーで浮かしてっと……お尻とお尻をこっつんこ。


 私とダンスメイドでお尻とお尻をこっつんこ!


「いえーい!」


 最後に3人でハイタッチだ!いやぁ、このダンスメイドやりよるね。楽しかったよ。もう一曲いっちゃいたい気分だね。いっちゃう?いっちゃおうか。


「よーし……次は……」


 ドンドンドンドンドン!



 うわ!なんかドアが叩かれた!

 うるさかったかな?まぁ……うるさかったよね。うん、これは私が悪いかもしれない。下の部屋があるのかどうか知らないけれど大家さんはおこなのかな?たぶん激おこだよね。


 こうなったら……よし、証拠隠滅だ!ミニ天使ズは畳にお帰り。ミラーボールも回収!音楽も想いで箱にさよーならー。そして私とモフミミは何食わぬ顔で椅子に座ると……。


「※※※※!!」


 ドアから入って来たのはまたあの二人だ。誘拐姫と寸止め侍だ。

 誘拐姫の目線は私……ではなく、ハイタッチの形のまま固まっているダンスメイドちゃんへ。


「※※!!」


 そしてダンスメイドちゃんは騒音騒ぎの容疑で連行されていった。騒音騒ぎ罪で罰金だろうか。うーん……罪悪感を感じる……。ごめんなさい、ダンスメイド。後でお詫びするから許してほしい。


「※※※※」

「どうしたのモフミミ?」


 モフミミが指を指してるのはダンスメイドが置いて行った木のきのこだ。また頭の中にキノコの歌がリフレインする。


「※※※※」

「なんだろう?何かに使う道具なのかな?」


 何に使うんだろう。

 投げる?武器かな?食べるとおっきくなったり1UPしたりするということはないと思う。

 それとも置物?木彫りの熊の置物みたいなもの?きのこの置物……いらないなぁ。例え熊の置物でも私は邪魔だとしか思わない。でもせっかくもらったんだしどこかに飾ったほうがいいのかな。


「※※※※」


 モフミミは木のきのこを手に取ると椅子からぴょんと床に降りる。そのままテテテーとノブの無い扉の所まで行くとそれを扉にくっつけて回した。


「えっ……」

「※※※※」


 そーっとモフミミがドアを引くと扉が少し開いた。おお!ドアノブだ!あれはドアノブだったのか!すごいすごい!モフミミって天才かしら!


「……」


 モフミミが残念な子を見るような目で私を見つめてきた。

 そんな目で見ないでおくれ、モフミミよ。ごめん……アホでごめんよー。でも分かんないよ。それがドアノブなんて。いや、分かるのかな?普通なら。知らんけど。


「モフミミはここから出たいの?」

「※※※※」


 モフミミはドアの向こうを指してる。たぶん出たいんだろう。よし、家賃踏み倒して逃げるか……ってここ別に借家じゃなかった。そういえば誘拐されて来たんだったね、私たちは。


 モフミミがチラチラ私を見ながらドアを見る。よし、逃げよう。でも昼間は人がいそうだし今夜にしようね。

お読みいただきありがとうございます。

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