王都への道中 ~初めての対人戦~
その後、何度か魔物と出会ったが、レイ達は問題なく撃退することができた。
結果、1日でレイとオードリーは共にレベルが5まで上がり、ステータスが上昇した。レイは「超人類」がレベル2になり、オードリーは攻撃魔法の光の刃を覚えた。
「どうだ?大分慣れてきたんじゃないか?」
「そうだね。少しずつわかってきたかな。ただ、もっと慣れないといけないし、もっとスキルが欲しいなー。」
「私も攻撃魔法を覚えたので、もっと慣れないと。合わせるのが結構難しいです。」
「2人とも順調で何よりだ。今日はゆっくり寝て、明日に臨もう。」
「「はい!」」
そして、馬車に乗り込んでから2日たち、王都に到着する前日に、それは起こった。
「、、、!何か、悪意を感じる!?今までとは違う!人を感じる!」
「何!?クルスはどうだ!?」
「探知しました!左右に待ち伏せしているかと思います。恐らく盗賊かと。」
「そうか、賊がきたか。おそらく商人でも襲うつもりだったのだろう。2人ともありがとう。」
「どうされますか?兄様?」
「引き返すことは考えてない。戦うぞ。」
「あまり動きにバラつきがないことを考えると、練度は低くなさそうです。注意は必要かと。」
「なるほど、向こうもある程度のレベルはありそうか、、、。ただ、俺とクルスがいる。問題ないな。」
「僕たちはどうしよう、兄さん。」
「まずは、運転手と馬を狙われたくないから、ここで一旦止まろうか。恐らく、敵にも斥候がいる。すぐに、相手にもこちらの動きがわかるから、射程圏内に入ったら動くぞ。クルス、何人いる?」
「恐らく10人程でしょうか。待ち伏せの陣形的に、前衛が8人、後衛が2名といったところでしょう。」
「わかった。では、俺とクルスは敵前衛をやろう。レイは開幕1番に、新しい技で後衛を狙え。いいか、躊躇するなよ。皆が死ぬ可能性があるんだ。」
「はい。わかりました。」
「オードリーは最初は皆にバフを。その後は光の刃で牽制してくれ。当てることより、敵前衛の意識を逸らすんだ。それからはサポートだ。攻撃されたと思ったら、ハイヒール、キュアを使ってくれ。敵に接近されたら、自身を守ることを第1優先。俺やクルスへ合流しよう。それが難しいなら、自分がやられにくい距離をとれ。前衛に接近をなるべく許さないように。」
「はい。」
「よし、馬車を止めて、運転手さんは中に入ってくれ!」
リュウの指示にしたがい、運転手は中に入る。
「ではいくぞ!」
「「はい!」」
「『大いなる加護』!」
リュウの指示どおり、オードリーが皆にバフをかける。
バフと同時に、リュウとクルスが馬車から勢いよく飛び出す。
冒険者の中でも、トップクラスのAGIを持つ2人は左右に別れ、一気に敵との距離を縮める。
「なんだ、、、?すげぇスピードで向かってくる奴がいるぞ!てめぇら、構えろ!!」
「何!?、、、!あいつらか!なめやがって!蹴散らしてやる!!」
敵の斥候が2人に気づき、周りに声をかける、敵は慌てて準備を整える。
「させるか、レイ!!」
「はい!!、、、いけぇ!」
リュウの合図でレイはスキルを発動し、 ミサイルを発射した。
4つのミサイルが敵後衛の弓士を目掛けて飛んで行く。
「なんか飛んでくるぞ!」
未知の遠距離攻撃に、敵陣営に動揺がはしる。
弓士がは慌てて弓スキルで迎撃を選択する。。
「な、なんだあれは!?くそ!撃ち落としてやる!『精密射撃』!」
『精密射撃』は、命中精度を上げる弓スキルだ。
弓士が放った矢が2つのミサイルを捉える。
ドドゴーーーン!!
矢にとらえられたミサイルが爆発する。
「な、なんだぁ!?」
敵陣営がさらに動揺すると同時に、大きな煙が上がる。
「あんな感じで撃ち落とせるんだな、、、。」
リュウとクルスもミサイルの対応方法をしり、少しだけ驚きをみせる。
「!?まだくるのか!?」
ただ、残り2つのミサイルはそのまま敵弓士へ直進。木の上にいたこともあり、素早い動きもできず、敵弓士に直撃する。
ドッッゴォーーーーン!!
2発の直撃を受けた弓士は力尽きていた。
「な、一撃だと!?」
敵前衛、後衛に衝撃がはしる。同時に、残りの後衛が再度狙われまいと、木に身を隠す。
「後ろに気を取られすぎです!」
「!?」
敵前衛が後ろに気を取られていた隙に放たれていた、オードリーの光の刃が、左右の敵数名に直撃する。
「「「ぐふっ!」」」
光の刃が左右の敵前衛数名に直撃したことで、さらに敵に隙ができる。
「もらった!!『ギガスラッシュ』!!」
「すみませんが消えてもらいます。『雷遁』!」
リュウとクルスが範囲攻撃を放ち先制し、大打撃を与える。
数十秒後には、2人は敵前衛を片付けていた。
「、、、よし。クルス、そっちは大丈夫か?」
「はい。ただ、思いの外レベルが高く、生け捕りはできませんでした。」
「俺もだ。盗賊にしては、練度も高かったな。」
「ですね。、、、後1名、後衛が隠れているはず、、、。隠密スキルが高いですね。」
残り1名いるが、隠密スキルを使い、クルスの索敵を掻い潜る。
クルスも探しているが、すぐに見つかっていない。
そして、一瞬の隙をつき、移動した敵後衛は、オードリーに対して、死角から狙いを定めた。
(くそ!皆の仇!せめてこれでも食らえ!!)
スキルを放とうとしたその時、
「視える!ここだ!!」
レイは敵の居場所をいち早く感知し、スキルを発動。
腕から電撃鞭を伸ばし、鞭が敵の左手に絡みつく。
「ちぃっ!やるな、だが、、、う、ギャギャァァァアーーー!!」
鞭から激しい電撃が放たれると、敵は一瞬で気絶した。
「助かったわ。レイ、ありがとう!」
「いえいえ、でも、これで反応は消えたし、大丈夫かな?」
すぐに、リュウとクルスも馬車に合流した。
「レイ!!見てたぞ。よくやった!」
「ありがとうございます。お手柄ですね、レイ様。」
「兄様、クルス!お怪我はありませんか?」
「大丈夫。あの程度の輩に遅れは取らないさ。」
「さすがだね。あの数を2人とも1分かからずに制圧するなんて。」
「大したことないさ。しかし、レイの『ミサイルランチャー』が撃ち落とされるとは予想外だったな。」
「ですね。恐らく、ミサイルはすぐに爆発する分、魔法系の範囲攻撃と相性が悪そうですね。」
「そうだな。剣とかの近接系なら、爆風でダメージを受けそうだが、魔法を展開することで防げそうだ。」
「今回はたまたま、相手が弓だったから防ぎきれなかったね。ラッキーだったのかな。」
「そこらへんも勉強になったな。あとは、よく生け捕った。こいつは王都で引き渡そう」
初めての対人戦も、レイたちは無傷で終わらすことに成功した。