崩れ行くアナクロス領
~ムノー視点~
リュウたちが家を出てから数カ月。
邪魔者たちがいなくなり、後継ぎ問題もクリアになった儂は、悠々と暮らしていた。
無能どもがいないことで、こんなにストレスフリーになるなんてな。
はっはっは!
しかし、財政や、外交、魔物の間引き等、今までは、クルスや他の執事などに丸投げしていたんだが、儂がやることになった。
需要なポジションの奴が、何故か皆辞めていったからだ。
恩を仇で返しやがって。使えない奴らだ。
儂は久しぶりに、各所からの報告を聞くことにした。
「なに?魔物を間引きする冒険者がいない!?」
「はい、、、。リュウ様が出て行かれた後、それを追うようにギルマスや冒険者たちが「違う街を拠点にする」と出ていかれました。」
「な!?リュウのやつ、引き抜いていったというのか?」
「いえ、、、。話を伺うに、今までは、そもそもB級冒険者以上はアナクロス領にはおらず、リュウ様が先頭に立ち、間引きを行っていたとのことで、リュウ様がいなった今、魔物から守れる人がいない、と皆出ていかれたようなのです。」
「ばかな、、、あいつは【剣士】(★★)だぞ!?そんな実力があるわけないだろ、、、。」
「ですが、、、。」
「え、ええい!もういい!!儂が何とかする!下がれ!!次!」
ふざけおって!リュウごとき、落ちこぼれなんぞについていく冒険者がいるわけなかろう!
この際、アホーズのレベルあげもかねて、儂が自ら間引きをしてやる!リュウなんぞでできるなら、儂でも余裕だ。
面倒くさいが、しょうがない。
次だ、次。
「はっ!財政を報告いたします。今月の収支ですが、過去最大の赤字となっております、、、。」
「はぁぁ!?どうしてそうなる!?」
「はい、、、!理由は2つです。1つは、税を上げたことで、民が反発して出ていったこと、もう一つは、、、申し上げにくいのですが、先日の外交かと、、、!」
「な!?儂のせいだというのか!?」
「いえ、、、し、しかし、高値で購買したものは全て贋作で、、、」
「ええぃ、うるさい!それだけでは赤字にならんだろう!民の方は税を上げて解決しただろう!何故また先月よりも下がったのだ!?」
「はい、税を15%あげたのですが、25%の民が出ていきました。」
「なぜそうなる!?」
「、、、理由もなく15%も上げましたので、、、。」
「ぬぅぅぅ、もういい!もういい!!! 下がれ! 次!」
どいつもこいつも、足を引っ張りおって!
確かに、この前の外交は「楽して儲けられる」
という他領の商人の言葉を信じすぎて、大赤字をこいてしまったが、
久しぶりだからしょうがないだろう!
民も民だ!15%税を上げたぐらいで出ていきおって!
もっと税を上げるしかないじゃないか!
くそっ!次だ!次、次!!
「はっ、、、先日、ムノー様より授かった案を商人ギルドに投げかけたとこと、アナクロス領からの撤退を表明されました。」
「どぉぉしてそうなるんだ!」
「我々の知識のなさと、税率の上昇、街の安全性等を考慮した結果、とのことで、今後は月に1度、訪れるかどうか、とのことでした、、、。」
「生意気な!しょっぴけ!そんな奴ら!」
「商人ギルドと冒険者ギルドは王国管轄ですので、、、」
「そんなのわかってるわ!もういい!!下がれ!!!」
この領には無能しかおらんのか!
なぜみんな出ていく!
「父上、いいですか?」
「おお!アホーズか!どうした?」
おお!儂の息子よ!儂と同じギフトをもった、アナクロス家の宝よ!!
せめてお前からはいい報告を聞かせてくれ、、、!
「父上!聞いてください!俺、ゴブリンを倒せるようになりました!!」
「おお、ゴブリンをか!そうかそうか!!、、、ん?ゴブリン、、、?ゴブリンロードではなく?」
「はい!ゴブリンです!」
こいつ、、、もしや、、、。
「、、、アホーズよ。レベルはいくつなんだ?」
「はい!レベル4になりました!」
「、、、いや、お前、ギフトもらってから約2年いったい何やってたんだ、、、。」
こいつもポンコツだったのか?
儂はクラクラっときたよ、、、。
~ドロシー視点~
困ったわ。
この数カ月でわかったことは、
旦那のムノーは、全くと言って、領主の器じゃないわね、、、。
戦闘以外、何もできないじゃない。
いままで、優秀な部下たちに全て任せきりだったから、表立ってなかったけど、
皆、リュウたちがいなくなって、辞めちゃったから
ムノー自身がやらざるを得ない状況になったけど、、、。
まさかここまで無能だなんて思わなかったわ。
【剣神】を授かり、王国の危機を救ったことで、領を授かったアナクロス家。
「王国の剣」と呼ばれる、誇り高い一族に、第2夫人として入り、早15年。
アホーズを授かっても、第1夫人のベラがいるときは、
入り込む隙がなくて難しかったわ、、、。
でも、ベラが亡くなってからは、
ユニークスキルの『房中術』で、ムノーを私の虜にし、
洗脳に近い形で、ベラの子供たちをムノーに虐げさせ、
この前、やっと追い出すことに成功したの。
それにより、アナクロス家の跡取りは、私の息子と決まったわ。
なんて名誉なことでしょう。
けど、このまま行くとアナクロス家はダメになってしまうわ。
ムノーに任せてはいられない。
私が優秀な人材を探してこないと、、、。
そうだ、この前屋敷に来た商人が「人材の紹介もできる」と言っていたから、
紹介してもらおうかしら。