出発
3人はムノーへの報告を済ませ、小屋に戻った。
レイたちが小屋に戻ると、3人のメイドのクルスが待っていた。
「おかえりなさい、リュウ様、レイ様、オードリー様。出る支度は済ませました。ベラ様への挨拶は済ませましたか?」
「ただいま、クルス。準備ありがとう。母さんへの挨拶は大丈夫。そろそろ出るとしようか。」
「はい。私もご一緒させてください。皆様がいなければ、私もここにいる意味はないですから。」
クルスは元々は捨て子だった。森でベラに拾われ、育てられた。
その為、クルスはベラに忠義を誓っており、屋敷で唯一のレイたちの専属メイドだ。ちなみにアホーズには5人のメイドがついている。
「クルス、一緒に来てくれてありがとう。嬉しいわ。」
「はい、オードリー様がお嫁に行かれるまで、側に居させてください。そうでないとベラ様に顔負けできません。」
「ふふ。お嫁に行ったあともずっと一緒にいたいわ。」
クルスが一緒に来てくれることが、特にオードリーは嬉しいそうだ。
「さて、母さんへ挨拶も済ませたし、行くとしよう。俺は冒険者ギルドに顔出してから行くから、3人は先に城門に行って、馬車の手配をしておいてくれないか。」
「OK、兄さん。」
リュウがそう言って先にでた。その後、レイ、オードリー、クルスは城門に向かい、馬車の手配を済ませていた。
しばらくすると、リュウが合流した。
「ごめんごめん、待たせたな。」
「全然大丈夫だよ。では、いきますか!」
4人が荷物を馬車に積みあげ、出ようとしたとき、アホーズが息を切らせながら走ってきた。
「おい、ちょっとまてぇ!」
「何だよ、これからって時に。挨拶をする仲でもないだろ。」
リュウが少し苛立ちながら、そう言った。
アホーズなんかと話すのも、時間の無駄だと思っているのだろう。
「う、うるさい!!ちょっと待て!お前たちも追放されて、寂しいと思うから、僕が最後に稽古をつけてやる!」
「、、、雑魚に構っている時間はないんだよ。、、、お前、全く鍛錬してないな。レベル3しかないじゃないか。そんなんだから、学園にも入学出来なかったんだぞ。いい加減気づけ。」
リュウはアホーズを鑑定すると、ため息を吐いた。
「う、うるさい。学園は、たまたま試験の日が調子悪かっただけだ!【剣士】ごときが【剣豪】の僕に指図するな!」
「はぁ、、、。そうだ、レイ、相手してやれよ。」
「僕?うーん、面倒だけど、わかったよ。」
「わかってると思うが、こんな奴でも、殺すなよ。」
「了解。」
「はっ!バカが!!いつも僕にやられているのに、勝てる気でいるのか!?いいだろう、レイ、かかってこい!」
アホーズが剣を構える。
「レイ、剣貸そうか?」
「うーん、必要ないかな?素手で大丈夫。」
「そうだな。もう一度言うが、殺すなよ。」
レイは笑顔で頷く。
それを聞いてアホーズが激昂する。
「バカが!!ぶっ殺してやる!しねぇーーーー!」
開始の合図も聞かずにレイに襲いかかった。
「この!このっ!しねぇ!!」
アホーズが剣を振り回す。
しかし、レイに掠りもしない。
アホーズの動きが、レイには全て視えていた。
「はぁ、はぁ、、、。くそ!逃げ回ってばかりで卑怯だぞ!」
「いや、開始の合図を待たずに襲ってきた奴がよく言うな」
「はぁはぁ、、、。うるさい!ちくしょう!なんであたらないんだ、、、。」
「レイ、そろそろ出発したいから、終わらせていいわ。」
「そうだね。」
「生意気な!貴様なんぞに、、、ぶはぁ!?」
そろそろ終わらせようと反撃したレイの拳がアホーズの腹にめり込む。
続け様に2~3発殴ると、アホーズは失神していた。
「うん、こんなもんかな。さて、行こう!」
レイはリュウたちの馬車に乗り込んだ。
「よし、馬車をだしてくれ。」
そして、寝ているアホーズを尻目に、レイ達は出発した。