表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

08*回り道をしたせいでもう手が届かない

お題先なし。     『君のこと目で追わなくなった』彼視点。

ふとした時に目が合う。

そんな僕らはよく廊下で、その度に喋ってた。

僕が声をかけると彼女は笑う。

それがいつの間にか僕の日常になっていた。


クラスの女子の一人に告白されて何となく付き合い始めた。

それが全てのきっかけで。

僕の日常は少しずつ壊れていったんだ。


――目線が合わなくなった。


――彼女が僕に対してよそよそしくなった。


何故、と僕は思っていた。


……僕はきっと重要な選択を間違えてしまったんだ。


彼女との日常が日常でなくなった頃、やっと気付いたのは彼女への気持ち。

よく目が合っていたのは、僕が目でいつも追い掛けていたから。

その日常が壊れてしまったのは、その日常が当たり前のことで、彼女は僕にいつも笑ってくれると過信していたから。

愚かなのは、自分の気持ちにさえ気付かなかった、自分。

そんな僕から離れていってしまったのは当然。


でも、また隣で笑っていて欲しいと思う。


一度は壊れてしまった日常を取り戻したいと願ってしまう。


僕は自分が気付かなかっただけで、彼女が最初から好きだったんだ。

いつも優しく微笑んでくれた彼女が。


ねぇ…もう一度あの澄んだ鈴のような声が聞かせて。



ある時、ふと見つけた君の姿。

それは遠く、後ろ姿ではあったけれど、彼女だと断言する事が僕には出来た。

直ぐ様走り寄って、声をかける。


「……あ、久しぶり」


偶然を装う僕。何だかかなりカッコ悪い。

でも、それでも、彼女の声が無性に聞きたくて。

彼女の瞳に僕を映してほしくて。


「……久しぶり」


懐かしい愛しい彼女の、声。

笑顔を向けてはくれたけど、それは何だか前に向けられていた笑顔とはどこか違う。

そう、無邪気さが足りないんだ。

今まで彼女は純粋に笑い時だけ笑ってた。だからその笑顔は透き通ってて、綺麗で。他人なんていう壁なんか微塵も感じさせなかった。

でも今向けられている笑顔は違う。誰にでも向ける余所行きの笑顔。

僕はそんな笑顔を見たかったわけじゃない…。


そんな風に思って、気付く。

彼女は僕を『特別』に思ってくれていたのではないか?

それが恋愛感情ではなくとも、僕と同じように、あの日常が恋しいと思ってくれていたのではないか?、と。


都合の良い解釈だと笑われても良い。

確かに僕達には、他の人とは違う、もっと別の絆があったのだ。


もう僕を『特別』と見てくれてないと分かっていても。

やっと気付いたこの気持ちを持て余してしまうばかり。


「そっちはまだまだ『彼女』とラブラブ?」


……君は知らないんだね。その子とはもう随分前に別れてるんだけど、な。

『特別』視しなくなった僕のことなんて、もうどうでも良いと言われている様で心が痛んだ。


君が僕の『彼女』に遠慮なんかして遠ざかっていったのは気付いてた。

だから、僕に『彼女』なんていなかったら、君は僕の隣で又笑っててくれるかな、ってちょっと思ってたのに。


『好きな人と上手く行くと良いね。あっ、私もう帰らないとじゃあねっ』なんて直ぐに僕に背を向け去っていく君。


好きな人は君、なのに。


また、君は僕の見えないところにいってしまうの?


――僕の隣はいつもぽっかりと空いてしまっている。

……君を好きだと気付いてから。




回り道をしたせいで

もう手が届かない



(この穴を埋めるのは)

(きっと)

(彼女しかいないのに)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ