03*好きだったよ誰より
お題先『確かに恋だった』
今日は結婚式。
自分の…では勿論なくて、愛しいあの子の。
彼女の隣は何故自分じゃないのだろうと苦しんだこともあるけど、今日の世界中の誰よりも幸せそうな彼女を見て、自分の選択は間違ってなかったんだと少し、ホッとした。
彼女を好きだと自覚した時、彼女を幸せに出来るのは自分だけだと思った。
でもそれはただの思い上がりで。
自分以外の男を選んだ時は悲しみと共に少しの怒りを感じたけど。
でもそれは彼女が正しい選択をしたまでで。
おとなしく身を引くよ、なんて格好良いことも言ったけど、本当は全然納得してなかった幼い自分。
やっと今日、そんな自分とお別れ出来るような気がするんだ。
「おめでとう」
――心からの“おめでとう”やっと言えたよ。
「ありがとうっ!」
輝く笑顔の君。
今までずっと言えなかった言葉、今なら言えそうな気がする。
認めたくなくて。彼女を諦めたくなくて。
「…ずっと好きだったよ」
ボソッと彼女には聞こえないように。
「…えっ?何か言った?」
「ううん、独り言」
聞こえなくていいんだ。今までずっと君を諦められなかった惨めな自分に気付いてほしくないから。
彼女を目で追い掛けるようになってもう何年たつかな。
彼女の周りはいつもキラキラしてて、すぐに彼女がいるんだと気付いてた。
そんな彼女を目で追い掛けてた自分はもういない。
だって彼女があまりにも幸せそうだから。
彼女が幸せなら自分も幸せ。心からそう思えるようになったから。
――ずっと好きだった。
やっとこの恋を過去にすることが出来たよ。
今までありがとう。
僕は今、新しい道へと一歩を踏み出す。
好きだったよ誰より
(彼とお幸せにね)
(うん。そっちもね!)
(君以上な人なんて見つかりそうもないけど)
(ふふっ、貴方だったらきっと見つかるよ)




