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22*残念ながらベタ惚れ

お題先『確かに恋だった』



「パン買ってきて」

「はいはいただいまー!」


財布だけ持って購買へ走る。そして彼女の為にパンを買う。勿論俺の奢りで。

――それが俺の日常。


「お前さー、あの子にあんな態度とられてムカつかねえの?」

「そうそう。あいつお前のことなんだと思ってんのかね」


彼氏を召使のように使うなんて。


こうやって遠回しに『あの子と別れろ』と言われるのも俺の日常。

でも俺は別れる気なんてさらさら無いんだけどね。

だって……


「さっき何の話してたの?」

「ん?君が死ぬ程可愛いねっていう話」

「っ、!ば、バカな話してんじゃないわよっ!」


そう言って、赤くなって照れやすい君を知っているから。

俺に冷たく接するのは、ただ照れてるだけだってちゃんと知ってるから。


「いつまで待たせるつもり?」

「え?あ、ごめんごめん」


彼女の言いたいことは自分で察する。

それが俺のポリシー。


俺は彼女の右手の指と自分の左手の指を絡ませて、キツく握り締めた。


彼女が手をブラブラさせているのは『手を握って』という合図。

彼女が俺の顔をじーっと見つめるのは『キスして』という合図。

彼女が俺の服の袖をそっと握るのは『抱き締めて』という合図。


最初の頃は全然気付けなかった俺だけど、今では誰よりも君を知ってる。

これは誇示じゃない。きっと、君よりも君のこと知ってるよ。


君は照れ屋だから言葉に出来ないんだよね。

ちゃんと知ってる。

ちゃんと知ってるから。

誰よりも俺に君自身を見せて。君のこと全て知りたいから。


「今日は俺んち来る?」


ぎゅっと繋いだ手を握られた。

『Yes』の合図。


「サンドイッチ。早く買ってきて」

「了解しました、俺のお姫様」

「……何言ってるの。早く行きなさい」


これが俺の日常。

頬が微かに赤くなってるよ、俺の愛しい愛しい彼女様。




残念ながらベタ惚れ



(君以上に君のこと)

(知っていたいんだ)



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