21*確かなことは、彼が私を見ていないという現実
お題先『確かに恋だった』
双子の姉。好きな人も自分の彼氏も妹が好きという不幸な子。
私は"日影"になりたかった。"日向"なんかいらなかった。
私が"ひかげ"なら。
そうだったら、貴方に愛されたのに。
そうだったら、貴方は私を見てくれたのに。
「ひかげー!」
妹を呼ぶ愛しい貴方の声。
私の好きな人は双子の妹"ひかげ"の彼氏。
「何ー?」
「明日暇?デートしよっか」
「んー…明日あした…ねぇ。うん、確か暇だったかな」
あぁ、憎い。
何もしなくても傍にいられる妹が。
どうやっても"ひかげ"にはなれない自分が。
どうして私は"ひなた"なんだろう。
どうして私は"ひかげ"じゃなかったんだろう。
どうして、どうして。
「"ひなた"?どうした?」
この人は私の彼氏。
でもちゃんと知ってる。
貴方も"ひかげ"が好きなんでしょう?
でも貴方は優しいから。
あたしの傍にいてくれるのよね。
私は"ひかげ"の代わり。
でも決して"ひかげ"にはなれない。
ただ同じ顔をした、それしか価値のない、偽物。がらくた。
同じ顔なのに、全然違う。
"ひかげ"であるはずの妹は人に愛されて。
"ひなた"であるはずの私は"ひかげ"の予備。
「どうしたんだよ、"ひなた"」
貴方はいつか"ひかげ"の代わりじゃなく"ひなた"として見てくれますか?
あぁ、貴方の優しさに溺れてしまう。
――でも。
確かなことは、
彼が私を見ていないという現実
(私は今までも)
(そしてこれからも)
("ひかげ"の代わり)




