13*貴女にこの命と忠誠を。
お題先なし。 (元不良?)騎士とお姫様。
「ロザルハーレス=メルシア、その命をこの国に捧げよ」
「はっ」
片膝をつき頭を垂れ、この国の王に忠誠を誓う一人の男。
それが俺、ロザルハーレス=メルシア。愛称は『ロザルハ』。大抵そう呼ばれている。
俺は今日から王宮騎士となる。
国と王族の為に仕え、それを守るためなら自分の命さえ顧みない、それが王宮騎士。
騎士の中でも突飛した才能を持つ者が沢山いる王宮騎士団は、騎士の憧れ。毎年、難しい王宮騎士試験を受ける者が後を絶たないらしい。
だが、王宮騎士になれる者はほんの一握り。何万にものぼる人間が受けても、一人も受からない年だってある。
そんな超難関の試験を突破するには血の滲むような努力が必要だった。
それでも俺が、王宮騎士を目指したのには理由があって……
「ロザルハ、これからよろしく頼む。俺は隊長のカインだ。好きに呼んでくれて構わない」
「よろしくお願い致します」
「そんなに畏まらなくても良いぞ?……そうだ、お前が護る主を紹介しなければな」
「はい」
「そうそう、お前、自分で主を決めさせてくれと王に頼み込んだんだって?」
王宮騎士は王族、又はその親族の一人に専属として仕える。
その仕える相手を騎士自身が決めることなど出来ない。
だが俺はどうしても…。
王は俺の要望を聞き入れてくれた。
あの方に仕えることが出来ないなら俺が王宮騎士になる意味がない。あの方以外が主ならば王宮騎士になどならない、そう言ったからだ。
「……それが何か?」
「……いや、そんな奴は今まで居なかったから不思議だっただけだ。
それにお前の選んだ主は…殆んど表に出ることはない御方。つまり、お前も王宮騎士として表で華々しく暮らすことは出来ないんだぞ?」
「そんなことは百も承知。それに華々しく暮らすことなど、望んではおりません」
「では何が望みだ?」
「“深窓の姫君”アリーシア=ステレス様をこの手で護ること」
アリーシア…それは誰よりも美しい愛しい姫君の名前。
この汚れた手でも彼女を護ることが出来るのならば……。
悪意の視線に晒されながら生きてきた俺にとって、彼女は俺の光、希望、女神。
彼女を前にしたら必ずこう言って、この身を捧げよう。
『私、ロザルハーレス=メルシアはアリーシア=ステレス様、貴女様だけに心からの忠誠とこの命を――』
貴女に
この命と忠誠を。
(ロザルハ、)
(お前にとって姫様は…)
(誰よりも護るべき人、です)