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12*あの時伝えておけば良かった

お題先『確かに恋だった』          『この想いを封印するよ』彼視点。

「私ね、小さい頃から貴方のこと好きだったんだ」


そう言われて頭が真っ白になる俺。

今までだったら飛び上がるほど嬉しくて仕方がなくなる愛の言葉。


だけど今はその言葉が辛い。

ついさっき彼女は俺に言ったのだ。『告白されたんだけど、返事どうしようかと迷ってる』。つまり、この過去形の愛の言葉は決別の意志。そう捉えて良いんだろ…?


物心もつかない程昔から彼女のことが好きで、いつも傍に居た。

告白する勇気なんて勿論なくて、ただ一方的に見守り続けてた。彼女はいつも俺の隣にいて、いつも特別な笑顔を俺にだけ向けてくれていた。

でもそれは『幼なじみ』として俺を見ているからだと思っていたのに。


告白するチャンスなんていくらでもあった。

今までの関係が壊れることを恐れて、告白出来なかったビビりな俺。

いつももう一歩が踏み出せなかった。


きっといつまでも勇気を出さない俺に神様は呆れてしまったんだ。

しかも、最後のチャンスとばかりに機会を与えてくれたことにも気付かなかった。


これが最後で最高のチャンス。

ここで『俺も好き』って言えば何か変わっていたかもしれないのに。


それなのに俺は…


「……そうだったんだ。サンキューな」


そんなことしか言えなくて。

彼女の頭を撫でながら、本当に言いたいのはこんなことじゃないだなんて自分勝手に思ってた。

悪いのは、言いたいことも満足に伝えられなかった自分。


「……今までありがとう。ずっと寄り掛かっちゃってたけど、もう大丈夫だから」


彼女は巣立つヒナ。

俺を置いて飛び立つ小さな鳥。


いつまでも俺に寄り掛かってくれてていいのに。


一言も言えなかったこの時の自分に腹が立つ。


これは、罰なんだ。

神様が俺に与えた罰。


『幼なじみ』という立場に甘えて、彼女への気持ちから逃げて、勝手に自己嫌悪なんかしてた俺への罰。


「……たまには一緒に帰るか。どうだ?」

「あっ、今日用事あるんだよね…」

「アイツと…か?」

「……うん、〜〜君と」


君の口から俺以外の男の名前なんか聞きたくない。

君の隣は俺の特等席だったはずなのに。両想いだったはずなのに。


「そうか。アイツならきっとお前を幸せにしてくれるだろうさ」

「……うん」


彼女が去っていく。

彼女の後ろ姿を見つめていたら涙が一筋頬を伝っていた。


後日アイツがフられたことを知った。


今更後悔してるんだ。

何でこの時、君に想いを伝えられなかったんだろうって。

徐々に大人に近づくお前にもうあの時の面影なんか殆んどない。

もう手が届かない。


この時、想いを伝えられていたら何か変わっていただろうか?

違う二人の未来が待っていたのかな?


もう後悔しても遅いけど、俺の心にはまだ君が大きな存在として居座り続けてるよ。



あの時

伝えておけば良かった



(いつか)

(俺以外の男の隣にいる君にも)

(微笑むことが)

(出来たら良いな)

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