10*僕の想いが君を壊す
お題先なし。狂愛?
――僕は狂っている。
そんなこと知ってる。
君を愛したときから…いや、生まれた時から僕は狂っているんだ。
親に疎まれ、世界に疎まれ、『愛』を知らなかった僕に『愛』を植え付けたのは君。
「ねぇ、僕が『死ね』って言ったら君は死んでくれるのかな?」
「……えっ?」
「……冗談だよ」
君の心も身体も、僕だけの為に存在すればいい。
君が囚われの哀れな蝶ならば、僕は蝶を捕らえて離さない卑しい蜘蛛。
君を危機に落としめる事しか出来ない不完全な一匹の蜘蛛。
僕のこの想いが君を地獄に引きずり込むことになると分かっていても、君を離すことが出来ないんだ。
「……貴方が私に『死ね』というのなら、私は迷いもなく死を選ぶわ」
「……僕が誰かを『殺せ』と言ったら?」
「その人を殺すでしょうね」
僕は狂ってる。
でも、彼女も狂ってる。
いや、僕が狂わせたんだ。
普通の男と普通に恋をして、普通に家庭を築き、普通の幸せな人生を送るはずだった君。
僕が君に出会って、君を愛したことによって、君の『普通』は消え去った。
だって僕は『普通』とはかけ離れている存在だから。
「君は狂ってるね」
「あら?貴方と同じよ?」
「……そうだね。でも僕と一緒にいたら、天国からのお迎えは絶対にないよ?」
「それでもいいわ。貴方が地獄に行くのなら、私はただ着いていくだけ」
「君はやっぱり狂ってるよ」
「今の私にとって最高の褒め言葉だわ」
君は笑う。狂った笑みで。
僕は君を狂わせる。
僕は君を破滅へと導く。
僕は君の――身も心も粉々に破壊する。
僕の想いが君を壊す
(いつかこの手で)
(君を殺してしまうかもしれないよ?)
(貴方の手で死ねるなら)
(本望だわ)