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【入り組み交わる路面電車】 file,01

 案内状が届いてから2週間ほどが過ぎ、いよいよ見学学習の当日が来てしまった。1週間過ごせるだけの荷物を持ち、集合場所である学校のグラウンドに集まっている。


  この学習でやらなきゃいけないタスクは二つ。毎日の行動記録を取る事と、その街で使われている異常なモノに対する自身の見解をレポートとして提出する事。何人かのレポートをまとめて保存する事によってその異常を認識できるものに変える事が目的らしい、が。


 高校生にやらせるようなものでもないと思うのだけど、もちろん中学生にも。あの頃は3日間だからよかったものの、1週間は流石に時間を持て余すと思う。


「あー、今回は俺がお前らの担当だ、L班は皆んな集まってるかー? 取り敢えず点呼していくから、名前呼ばれたら返事しろよ」


 今点呼をし始めた気怠げそうで無精髭の生えたおじさん先生の名前は確か佐藤(さとう) (まさる)先生で、主に歴史の授業を担当している、加えて他9人の生徒プラス自分の11人で目的地に向かう事になる。


竜ノ平(りゅうのひら) 唯斗(ゆいと)、お前で最後だが、よし、いるな。それにしても何度見ても珍しい苗字だ」

「へい、それはそうと先生よくこんな面倒くさい仕事やりますよね」

「あぁ、ここら辺は俺の専門分野でもあるからな、まぁ、他にもこの学習の間の飲食代や観光代が全部学校から出るとか、そういう事情もあるがな」


 そんなに学校から補助金出てるのか、というかこの学校どうやって運営してるんだろうと思いを馳せていると、先生が車に乗るように促してきた。


「ほら、バスに乗れ運転は俺だ、ちょくちょくサービスエリアにはよるが、長旅にはなるから覚悟しろよー」


 他の生徒が小型バスに乗り込んでいく、俺の順番は最後になりそうだが。別に友達がいる訳でもないので、最後に余ってる席に乗る、そう、運転席の後ろの通路側の席である。


「よし、じゃあ出発するぞー」


 先生はそう言うと、エンジンをかけ小型バスで道路へと進ませる。学校から出発して数分、隣に座っている同級生が話しかけてきた。


「確かめっちゃ強そうな名前の竜ノ平、だったよな! よろしく!」

「よろしく、呼び方は唯斗、もしくはユイでいいよ別に。呼びづらいだろ竜ノ平は」

「そうだな、ユイって呼ぶぜ。あ、俺の名前は幸臼(さちうす)アタル、地元喧嘩最強ナンバー7の幸臼アタルだ、よろしくな」

「……アタル、なんだその地元喧嘩なんちゃらって、いや、やっぱ説明しなくていい」


 一応自己紹介をされたが、クラス替えをしたとはいえ2ヶ月もたてば流石にクラスメイトなのだから覚えているだろう、幸臼アタルはクラスの中でも目立つ方の人間だ。


 両耳にさいころ(ダイス)のイヤリングをつけているのが特徴で、ツーブロック、ショートであってもその真っ白な髪はよく目立つ、運動神経は上の下だろうか。と言っても、純人間の見た目をしている中ではほぼ最高と言ってもいい、最上位は獣の特徴を保有した奴らが占有しているか、化け物みたいな奴しかいないから。


「あー、アタル。サービスエリア止まる時起こしてくれ、俺は寝てるから」

「えー、話そうぜ、例えばうーん好みの女子のタイプとか!」

「あっちついてからでも十分時間あるんだし、いいだろ別に。てことでよろしく」


 そう言って即座に眠りにつく、どこでも素早く眠りにつけるのは俺の長所だと思う、いつも眠いだけともいうが。


「あ、おい、ちょっ、次起きたときは寝かさねえ……」


 薄れゆく意識の中でそんな声が聞こえた気がした。



 ◇ ◇ ◇



「起きろ、サービスエリア着いたぞユイ」

「……んぁ、助かる」


 目を覚ますと丁度サービスエリアへ入っていくところだった、看板には櫻%〒SAと書いてあったが、やっぱり読めない。という事は異怪領域の存在する地域に概念的な距離が近くなっている事でもある、教科書に書いてあった。


「よし、30分くらい休憩にするから、ちゃんとなんか食事してこいよ、じゃないと異怪酔いするからな。トイレも忘れるなよー、じゃ、一時解散」


 そう、異怪領域は地理的には繋がっているが、概念上の位置、レイヤーともいうべきソレが異なっている為、徐々に体を慣らしていく必要がある。ヨモツヘグイみたいなものだ、という訳で何か食べに行かないと行けない訳だが。


「アタル、行くか」

「おう、何食べようか迷うな、俺はできれば腹に溜まるものがいいんだけど」

「賛成」


 そう言ってショップを物色していく、色々と売っているがここの特産は豚らしい。肉まんにチャーシュー、生姜焼き、豚骨ラーメンなども売っていた。その中で俺は肉まんを、アタルはチャーシュー丼を選んで食べることにした。


「流石に美味いな、肉まんはシンプルなやつが俺は好きだ」

「俺はチャーシューの、この醤油の塩気と甘さのコンビネーションこそ至高だと思うぜ、白飯もうめぇ」

「不思議な感覚だが、やっぱ食べるといつもよりも体が軽くなるんだよな、なんでなんだか」

「まぁ、難しいことは俺たちには分からないからな、そこら辺は先生に聞いてみようぜ」


 そう言って俺とアタルは小型バスへと戻っていった。俺たちがバスに乗り込んだ時には大体の生徒が戻っており、最後に戻ってきたのは先生だった。


「あ、今度は寝させねえからな! ここから目的地まで暇なんだ、話に付き合ってもらうぜ!」

「分かったよ、これ以上寝てても体が固まりそうだしな」

「よし、じゃあ何から話すかな……」


 なんだか今回は長い旅路になりそうだが、これも悪くないだろう。そう思い、目的地に近づくにつれて高まって行く嫌な予感、悪寒から目を背ける事にした。




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