Prologue.file1
昔々、ある晴れ空の日、僕たちの見ている空が裂かれた
現れたのはその奥にある黒い黒い何か
裂けた空の隙間、黒い黒いどこかからは
白く輝く手が伸びた
その手は、世界をぐちゃぐちゃに掻き回した
けど、その手はすぐに鎖で雁字搦めにされて
僕たちがいつも見ていた空より
こちらには、来れなくなった
これは、僕のひいおじいちゃんから聞いた話
今もその手がこちらに伸びようとしているけど
もう誰も気にしていない
◇ ◇ ◇
早朝、騒がしい鳥の鳴き声と共に目を覚ます。カーテンを開け、朝日を受け、空を眺める、閑静な住宅地に鳥の群れが飛んでいる。お、珍しいな、4本脚のカラスだ。
目が覚めた後のルーティーンをこなして、寝巻きから着替える、どうせ寝癖がつくような髪質でもないから、そのままポストを確認する。
「うげ……」
ポストに投函されていた、封筒を見て思わず声を上げてしまった、自身の通っている学校の名前の書かれているそれは、恐らく僕が一番学校行事の中で面倒だと思っているアレの案内だろうから。
「おはよう、今日の朝刊を貰えるかい? あぁ、栃木農業新聞ね」
ギシギシと床の軋む音で近づいているのに気がついていた為、そのまま後ろを振り向かずに朝刊の一つを投げ渡す。
「おっと、ご機嫌斜めか? 唯斗いつもなら、お父さんおはようちゅってしてくれるところなのに、高校生は難しいな」
「そんな事した記憶はないよ父さん、機嫌が悪いのは正解だけど」
乱雑に学校からの封筒を開封すると、案の定そこには「異怪領域見学学習の案内」とデカデカと印字された紙が存在していた、燃やしたら無かったことにならねえかな、なんねえなと自分の中で完結しながら、朝ご飯を取るためにテーブルに座る。
「母さん、いつものやつ来てたんだけど、行かなきゃだめかな」
「だめに決まってるでしょ、大体もう4度目なんだから、そろそろつべこべ言わずに行きなさい、前回も前々回も何とも無かったんでしょう?」
「そりゃそうだけどさ、毎回毎回嫌な感じがするんだよね」
「あらあら、お母さん由来の危機感知能力かしら、あんまり似てるところ無かったからちょっと嬉しいわ」
「まぁ、母さんの白髪は受け継がなかったしね、赤い目は受け継いだけど」
ぴょこんと頭に生えている兎のような耳を生やしている母であるが、僕にその特徴が遺伝することはなかった、ついでにその丸い尻尾も、もうそろそろ40代になるのに未だに美人なのはなんなのだろうか。
最近クラスメイトにうちの母を狙っていると言っていた奴がいてびびった。それ仮にも息子の前で言うもんじゃないだろ、胸の中にしまっておけ。
「まぁ、見学面白いのは確かなんだけどなぁ……」
異怪領域は、元々世界に存在しなかった風習、法則、技術が使われている地域であり、特別な方法がないと行き来できない地域だ、と言ってもここ数十年で世界の癒着が進み、元の世界という区分もあやふやになって来てい、行き来も楽になっている。
ここ、栃木県■#宮市♪€町も数十年前には見なかった生物を見るようになった、というか母さんがその象徴的なものだろう。
「ゆうちゃん、そろそろ出ないと遅刻しちゃうんじゃないの?」
「いや、大丈夫、今日は列車が通る日だから」
列車、といっても線路を走るようなものではなく、世界を飛び回る事によって時間を節約していると言われる。
言われているが、原理はよく分からない、ただ、乗ることが出来ればほぼほぼタイムロスなく、好きな場所に移動できる性質を持っていることだけは確かだ。
「そう、なら時間には余裕があるのね、それで、今回の見学はどこに行くの?」
「いつも通り1週間、今回の目的地は%春→県弓ヶ(市)2町だって」
朝食を食べ、ゆっくりとニュースを見ていると、スマホのアラームが鳴り始める、もうそろそろ家を出なければいけない時間だ。
「そろそろ行ってきます」
「分かったわ、いってらっしゃい、忘れ物はない?」
「うん、あ、ここに書いてあるもので無いものあったら買い物ついでに買っといてくれると助かる」
そう言って案内の紙を持ちながら、玄関を出て行く。今回の見学の目的物を確認するのを忘れてた事を思い出したから
だ。
「えっと、今回の見学の目的は……」
その街では常に路面電車が走っており、車は殆ど使われていない、それは路面電車が絶え間なく行き来しているからであり、百年以上事故が起こった事はないという。
事故がない理由は、その路面電車同士がぶつかっても、透過する性質を持っているからであろう。
けれどもその路面電車に乗った人の中にたまに行方不明者が出るという噂が流れている。
もし、その行方不明事件に遭遇できるならば、この路面電車の存在する理由も確認できるだろう。
【入り組み交わる路面電車】
◇ ◇ ◇
エタらないように頑張るのでよろしくお願いします!!