結末
オレは相手の小畑健という男のことを探偵に調べさせた。ついでに髪の毛も収集させ、健太とのDNA鑑定も依頼する。
隠し撮りさせた写真を見ると、確かに二枚目俳優に似たいい男のようだが、覇気がない。今まで女に持て囃されてきたのだろう。甘さが滲み出ている。これなら扱いやすそうだ。
高校の教師で共稼ぎ、子供が二人とのことだ。
DNA鑑定は親子関係の可能性が高いと出た。
準備は万端。いよいよ弁護士を通じて、相手の小畑健に連絡を取った。
妻の名前を出し、不倫と托卵のことを言い、慰謝料とこれまでの養育費を併せて500万円を要求する。
更に、妻の要求として、子供の認知と今後の養育費も付け加える。
弁護士の話では、小畑は話を聞き、呆然としていたそうだ。
奴は、不倫は認めたが、安全日で中に出しても大丈夫だと確認していたと繰り返し言っていたそうだが、弁護士がどちらの言い分が世間に通るか考えてみて下さい、裁判にしてもいいんですよと言うと、蒼白になって黙り込んだらしい。
向こうの嫁が理沙に慰謝料を要求してきたら、こちらの慰謝料は相殺する気だったが、隠し通そうとするなら話は別だ。毟れるだけ毟ってやる。
惑乱した奴を見て、弁護士からは打ち合わせ通り、一週間後に会うことという提案をし、奴もそれに同意する。
さあ一週間をどう過ごすか、探偵に見張らせておく。
思い切ってヤクザに頼むなど開き直るならこちらも考えなければと思ったが、奴は弁護士に相談に行ったものの思ったような答えがなかったのか、肩を落として帰ったそうだ。
日に日に憔悴して、家庭でも職場でも不審に思われているらしい。
いい気味だ。
二度目の示談の日はオレも出ていく。
奴とは弁護士の事務所で会うことにするが、こちらが先に席についていて、小畑が現れた途端に、
「お前か!オレの妻を寝取り、子供まで産ませたのは!
この外道が!人の家庭を壊しやがって、殺してやる!」
と掴みかかる。
180センチある大柄なオレに襲いかかられて、奴は恐怖に駆られたのか、腰を抜かす。
「まぁまぁ。ここは話し合いの場所ですから。」
弁護士が間に入るが、すべて打ち合わせ済みだ。
その後はこちらのペースで物事が進む。
奴からは、現金で300万円、残りは月払いで払うことで、公正証書を作る。
認知と養育費を月々5万円も約束させる。
金を受け取ると、ようやく小畑を解放してやった。
奴がこのことを隠し通せるかは知ったことではないが、教育費や住宅ローンもかかる中、大金が無くなって大丈夫とは思えない。
まあせいぜい頑張ってくれ。
理沙には結果を知らせて、離婚届に署名させ、養育費を決める。
小畑が認知して、養育費も貰えると聞き、大喜びで感謝される。
どうせ喜んで奴が払ってくれる、これなら小畑と再婚もできるかもとか考えているのだろう。
冷静になった小畑は、張本人のお前のことを恨み骨髄だと思うが、黙っている。
オレの養育費は二人で8万円、費用がかかる時は要相談、面会は双方希望したときとする。
昔は目に入れても痛くないほど可愛がっていたが、中学生となり、父親と会話するのも嫌悪した上、浮気を聞いても迷いもなく理沙についていくことにしたのを見て、愛情もなくなった。
それに理沙の血を引いているかと思うと、会いたいとも思えない。彼女達から言ってこない限り、没交渉だろう。
これで片付いたとばかり、オレは家を売払い、職場近くに引っ越す。
今までは、理沙が実家の側に住みたいというので、遠距離通勤だったのが、近くになって時間ができた。
もう暫く家族はいいかと、性欲は風俗で済ませ、犬を飼う。
こいつは絶対に裏切らないし、かけた愛情分慕ってくる。
しかし、1年経つとようやく落ち着いてきた。
娘からは何の連絡も来ない。こっちは誕生日や入学式、卒業式などにはプレゼントとメッセージを送っているのだが、ATMとでも思っているのだろう。
その頃、犬の散歩で女性と知り合う。
彼女の犬が急に倒れたときに獣医師に運んだのがきっかけで親しくなる。
彼女も夫に不倫されバツイチとのことだ。
数年かけて、だんだん会っているうちに、もう一度やり直す気が起きてきた。
お互いに痛い目にあっているのだから、相手を裏切ることはしないということを約束し、再婚することとする。
その頃、忘れかけていた元の家族から連絡が来た。
理沙はパートぐらいしかできずに親に援助してもらうが、兄弟に責められ、それを貰えなくなると今までの生活が維持できなくなったようだ。
オレとやり直したいそうだ。
オレは不倫の子供など見たくもない、アイツはどうするんだというと施設に入れてもいいと言い出した。
家庭より大事な大事な人生の記念だろうと皮肉を言うと、毎日の生活の有り難さがわかっていなかった、ごめんなさいと謝るが、全く響かない。
こういう女はまたやらかすに決まっている。
オレがけんもほろろに追い返すと、小畑に金の無心とよりを戻しに行ったらしい。その結果、前から疑っていた小畑の家族にバレ、自分が慰謝料を要求され、酷い目にあったようだ。
娘たちの養育費も自分で使っていて、家庭はグチャグチャだ。
オレのところに押しかけてきた娘からそんな話を聞くが、オレにとっては他人事だ。
「だから何が言いたい?」冷たく問いかける。
娘二人は、「お父さんと一緒に暮らしたい。もうお母さんといるのは嫌。」
と言うが、それを選んだのはお前たちだ。
「お父さんと言ってもらったのは何年ぶりだ。離婚して以来、いつでも面会すると言っていたが、一度も来なかったな。悪いが、もうオレには新しい家族がいる。養育費はお母さんでなく、お前たちに渡すから、おじいさんの家にいたらどうだ。」
娘たちもわかったのかそれ以上は言ってこなかった。
傷跡が見えたので、訳を聞くと、健太が家庭内暴力を振るうらしい。
彼からしてみれば、最初は大事にされていたのが、今や不幸の原因のように邪険にされ、腹も立つだらう。
いくらかの金を娘に渡し、医者に行けと言うと、オレは温かな家族が待つ家に帰る。
結果として、健太が出来て、真の家族に巡り会えたから、奴には感謝すべきかなどとくだらないことを考えながら。
妻や娘、不倫相手目線も書くかもしれません。