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転移した世界が愛おしい  作者: ぜんぎ君
プロローグ
3/3

たびだち

「ここはどこだ?」


あたりには草原が広がっていて新鮮な風が吹き抜ける。太陽は照り、草に反射してきらきらと光っている。


先ほど少女が言っていた。「異世界に連れて行ってあげる。」と。その言葉を信用するならばここはもう異世界で、今から僕の異世界ファンタジーチート物語が始まるのである。


やばい。感動。心なしか頭もふわふわしてるし。


けどこういう時はまず焦らず、ゆっくりと行動するべきだ。


あたりを見回す。先ほどの少女はどこへ行ったのだろうか。寂しかったらついてきてくれるって言ったじゃないか!!何一つとして放置して去ってしまった。非常に遺憾である!!これではもうどうにもすることができない。


若干頭痛もするし、先ほどの転移というものは体に負担のかかるものだったんだろうか。



「あんた!やっと起きたのね!!」


足の間からちょこんと顔を出すその姿にときめく僕。サイズ感も、表情もマイナスポイントが一切見つからない。その白い髪は太陽光に照らされてきらきらと光り透明感を帯びる。このまま見つめていたい気分である。一言もしゃべらず、まっすぐ彼女を見つめる。


ふいっと顔を背けておどおどするその姿に僕はさらにときめいた。


「ちょっと、、なんでこっち見つめるのよ、、」


きゅーん//// 天使だ。本物の天使がいる。


「ご、ごめん」


そんな話をしている場合ではない。ここはどこなのか。さっきの光は何だったのか。疑問は尽きることがない。


「小学生ちゃん。さっきの転移って何だったの?そ、それとこの場所は?さっきのはなん」


「もう!質問多すぎ!そんな一度に答えられるわけないじゃない!!」

「あ、あと小学生ちゃんってなに、、、、。」


ジト目でこっちを見つめる小学生ちゃん。かわいらしい。


「え、だって君。小学生くらいでしょ?」

「ち、ちがうもん!!ちゃんと大人!大人の天使だもん!!」

アホ毛が飛ぶように揺れる。猫が威嚇するときの体制に似ている気もするがそこはいったんスルーだ。そ、それより、、、あの小学生ちゃんが大人!?プロポーション、表情、しぐさ。何をとっても小学生である。


「そ、それってほんとかな。。。。ほんとに? え、じゃあ合法なの?」


「合法って何よ!バク転君のえっち!!」


ぐほぁ!!!!!!!!!!


生きている中で一度は言われたいセリフである。エッチ!?本望だ。エッチがいい。


「そ、それよりバク転君ってやめてくれよ。僕は黛 夢(まゆずみ ゆめ)。ちょっと男らしくない名前だけど、ちゃんとおとこだよ。」


「なによ!じゃあ私だって小学生ちゃんってやめて頂戴!!」


「わかったわかったから、ところで名前は?」


「あ、あたしはルルア。ルルアよ。」


照れながら答える小学生ちゃん。本当に愛おしい。


「そんなことよりもここはどこなんだ? さっきの場所でも言ってたけどここは異世界ってことでいいの?」


「そう。ここはゆ、ゆめくんの言ってた異世界だよ!魔法もあるし、なんならちゃんとした文明まであるんだから!」


どや顔で僕に告げるルルアちゃん。やはりここは異世界だったらしい。けどこの草原を見てる限り文明とか、魔法とかそんなことみじんも感じられないんだが。というか、こんな時は町の近くにある草原とかに転移するもんじゃないのか?日本人ってこんな草原に放り出されたら確実に野垂れ死んでしまうこと確定だ。


「で、でもここがどこかは。正直私もわからないん、だけど、、、」


(それに私も帰れなくなっちゃったし、、、)


oh.........


異世界転移、初のイレギュラーである。イレギュラーの中でも今いる場所が分からないというのは最も危険なものである。水辺の位置もわからないし、そもそも文明が存在するんだったら戦争を常に起こしている国に行く可能性だってある。何を隠そう本当にピンチであるのだ。


「ルルアちゃんはここの位置とかってわかる?」 にっこりスマイルとともに


脳死二回目の質問である。


「わかんないわよ」


「ルルアちゃんもう一度聞くけどここ」

「わかんないっていってるでしょ」


真顔で答える。心なしか若干怒ってるな。


じゃあとりあえず歩くしかないのか。歩くといってもここから集落までどのくらいかかるのだろうか。歩くとモンスターと出くわすのはお決まりと約束だ。


ここが夢見たファンタジー世界だったら魔物だって出るし、なんなら魔族とかそこら辺の悪い奴も出てくるかもしれない。仮にここが日本であれば柵がしていたりするだろうか。


ここがファンタジー世界ではない可能性にかけていっそのことエンカウントしてみるか。



「あ!でも地図なら持ってるわよ!!」


ルルアちゃんはぴょこぴょこを振り回す。速度がぐんぐん上がっていき、ルルアちゃんの顔がどんどん赤く染まっていくのだ。ぴょこぴょこは次第に黒く染まり円となり、空間ができる。


「早く!手入れて頂戴!」

その中に手を入れると生暖かく、犬の口内をまさぐるような感覚に見舞われる。その感覚は気持ち悪かったが、生きるためなら仕方がない。


「ん!でる!」


ぽんっ


ぴ、ピヨピヨ。ピヨピヨ。、、、、、


「「ひ、ひよこ、、、」


静寂が広がる。


「次こそは大丈夫だから!!」


黒に手を入れる。お、今度は塊だ!!なんかちゃんとしてるぞ!


「ん!でる!」


ぽんっ


「ね!今度はちゃんとした地図が出てきたでしょ!?」


沈黙が続く。ルルアちゃんは心配と不安、恥ずかしさで僕の顔から眼を背けてぷるぷると震えている。子ウサギや、子犬の反応に近い。


「うん。でもね。見てこれ」


ルルアちゃんの視線がだんだん僕の手に吸い寄られる。


ルルアちゃんの顔は次第に青ざめ、急激に顔から生気がなくなる。


「な、なんで、、ねちょねちょの地図が、、、、、」



僕は地図を地面に置き手を払った。




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