天界と転移
「繝舌け霆「蜷帙?√♀縺阪※繧」
うーん。長いこと眠ってた気がする。身体は痛いし、寝起き特有のあのだるい感じだ。不思議とすがすがしい気持ちがするのはきっと僕が寝すぎてることを体が教えてくれてるんだろう。。ちょっとした遅刻の時は本当にやばいって焦るんだけど大遅刻になると全然すがすがしさが勝つ感じ絶対あるあるなんだよなぁ。やらかした。
まだ視界がぼやけてて何も見えない。ここはどこだろう。しかもまぶしすぎて目も開けられない。日当たりのいい場所なんだろうか。眼を慣らすためにできるだけ暗い箇所を見つめる。
?
ある1箇所だけ不自然な暗さである。まるで誰かがそこにいるみたいな、、、、、
目は慣れてきた。ここで開けるか開けないか。人がいるかいないか。取捨選択を迫られる俺。開けるべきだろうか。多分だろうが、誰かがいた場合ものすごく距離が近いことになる。あまり人とのコミュニケーションが得意でない僕としてはそこにいる何かが人でないほうが助かるわけだ。
oh......
この何か、永遠に動かない。目がさらにこのまぶしさに慣れてきたため、僕はだんだんこの何かが人であると認識し始めている。だってほら!今もこの状況で視線らしきものを感じる!!きっとこちらを玩味しているに違いない!
シルエットは完全に人である。
ああ、もうしびれを切らして左右に揺れている。アホ毛までぴこぴこ揺れているではないか!
アホ毛に意志を感じる。俺は必ず動き続けるという確固たる意志が。
、、、、、、気になる。
(チラッ)
アホ毛が最上級に気になった俺は目をうっすらと開けた。
ほら!!
見てみろ。少女は立ち止まってこっちを見ているのにアホ毛は縦横無尽にぴょこぴょこぴょこぴょこ動き続けている。人懐っこい犬は目が合ったらあんな風に尻尾をぶんぶんうごかしていたなぁと懐かしみながらアホ毛を見る。頭の上に生えるアホ毛は芯が入ったような堂々とした立ち振る舞いである。
「バク転君、やっと起きた?さっきからずっと声かけてたんだけどよく寝てたね!」
!!!!!
しまった。すべてをアホ毛に気に取られて少女を忘れてしまっていた。少女は見た感じさわやか系な元気女子って気がする。白の髪とそれをまとめ上げる金色のゴムは思わず綺麗という一言でしか表せることができない。身長が低いのにもかかわらず、腰まではゆうにある髪の毛。邪魔ではないのだろうか。それよりも手入れが大変そうである。
「? まだ耳ぼんやりする?」
首をかしげながら心配そうに見つめる少女、とてもかわいい。サイズ的に小学生くらいだろうか。禁忌とされているが、僕は思わず見とれてしまっていた。
「耳はぼんやりしてないよ。それよりもここはどこかな?お兄ちゃんちょっと体操の練習したあとからの記憶がなくてね。」
「体操の練習じゃなくてバク転でしょ?それ」
おい。なんで知ってるんだこいつが。1番恥ずかしいんだが。ドキドキする心臓を抑えてこう質問する。
「?何で知ってるのかな。もしかしてみてたりする?」
「うん!ここかからずっと見てたよ!バク転君すごくおもしろいんだもん!」
おいおい。なんでみられてるんだ。しかもずっと!?冗談じゃない。人に見られたらその儀式の効果はなくなってしまうと書いてたのに。あんまりだ!異世界に行けないじゃないか!
そんなことをしゃべりながら目を輝かせる少女。めちゃくちゃかわいい。アホ毛はまたもやぶんぶん動いている。ああああ、尊い。
「それとね!ここ天国だよ!バク転君はバク転で頭打って死んじゃった!」
この娘は何言い出すんだ。今もこうして体があるじゃないか。死んでいるわけが無い。
腕も普通に動くし足だってある。念の為体に触れてみても全然貫通しないし。本当にやましいことなどないが、念の為他人に触れることが出来るか、確認してみようではないか。
僕はアホ毛の女の子にも手を伸ばす。
「あう、あう」
情けない声を上げる少女。
されるがままである。でもしかしこれで実体はあると確信することが出来た!何が天国だ!手の込んだドッキリではないだろうか。
「もう!いきなりなんなの!それと本当に天国だから!眩しいでしょ。ここ!天国だから眩しいの。天国って偉い人が集まるから眩しいらしいの!」
僕に揉まれるがまま揉まれ続ける少女を疑った目で見つめる。どうやら本当みたいだ。疑惑はまだ確実に残っている。手の込んだドッキリなら、金はかかってるだろう。乗っかってやらなければ。
「言い分はわかった。それで天国って言っても何するんだ?」
「それはね!次の世界と、世界に見合う体を作るんだよ!例えばほら!神様の国に生まれたんなら神様の肉体を創らなきゃでしょ?」
「か、神様なんて創れるものなのか、、、、?」
「でもバク転君はもう決まってるからいいよ!だってほら!死ぬ前に異世界のこと調べてたもんね!似てるような世界に連れてってあげる!ちょこっと違うかもしれないけど、そこは許してくれる?」
おお、なんという高待遇。これは本当に嬉しいかもしれない。本当に異世界に行けるとは。もし、本当に死んでいても前世に未練はちょこっとだけしかないし、今後の方が何百倍も楽しみだ。ビバ異世界!ビバ!青春!
「じゃあもう一緒に行っちゃっていいかな?この後もお仕事あるし、早めにやっちゃうね!」
「ばっちこいだ!任せとけ!」
アホ毛のぴょこぴょこがかわいい。お仕事ってお手伝いとかかな。それとも子役だったらドラマとかかもしれない
なんて思っていると少女はアホ毛をブンブンと振り回し始める。アホ毛の回転が一定の速さを超える。空気が振動する。世界は冷たく、暑いような不気味な感覚に染っていく。暗い暗い海の底みたいだ。アホ毛はいづれ見えなくなってしまった。
いつの間にか少女の手にはグローブが嵌められ、腰を入れ、腕を折り、全身全霊で何かをこじ開ける。これ本当に天国なのかもしれない。実写なんかじゃない。これ本物だ。
背中に冷や汗が流れる。本当に死んだのか?分からない。しかしただ僕は少女のすることを見ていることしか出来ないのだ。
ただ立ちすくんでその光景を見ていると本の内容を思い出す。
〜この世界の空には大気しか存在していない。否、大気しか存在してはいけないのである。それ以外の原子があるとするならば、それが異世界へ行ける唯一の手段なのでは無いのか。アニメーションや小説ではよく大気に魔法陣が書かれるのを見た事があるだろう。なぜ大気に魔法陣がかけるのか。その答えは大気の中にしか知りえない。〜
眩しいくらい明るかったはずが、いつの間にか暗くなっている。それとは逆行してこじ開けられそうな大気は歪み、白く蒼く光っていた。その歪みが僕の背丈くらいの大きさになる。
「もう大丈夫だよ!これで通れる!説明とかしたらネタバレだって怒る人おおいから向こうの世界で調べてみて!」
驚いて動けない僕。
「大丈夫、大丈夫!私こう見えて天使だから!心配だったら私も向こうまで着いてってあげる!」
放心状態の僕とアホ毛天使(?)は歪みの中に引きずり込まれる。残った世界にはただ、眩しさの残る世界が広がっている。この眩しさは今後2人を照らすことになるのであろうか。否か。
その答えは2人にしか、いや大気にしか知り得ることは無い。
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「ちょっと!帰れなくなっちゃったんだけど、、、、」
少女の叫びは天国には届かない。