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 簡単に言えば、松村京谷の夢は、廃遊園地にエドヴァルド・ムンクや、それを含む退廃芸術の品々を並べて芸術展のようにしたいということだった。


「芸術展できるようになるまでどれくらいかかるかねー」永遠にその空想が現実になることはないだろうと確信している中村夢莉は、言葉の通り皮肉った。先程容姿について指摘されたことへの腹いせと仕返しかもしれない。しかし、返事は予想とは別の言葉に焦点が当たっていた。「芸術展じゃない!!」と松村京谷が声を張り上げたのだ。


 突然のことで中村夢莉も橋部琢巳も肩を震わせた。見れば、松村京谷の眼力に圧倒されて、ダンゴムシが丸くなるように防衛本能が身体を強張らせる。恐縮させた。


「芸術展なんかと一緒にすんじゃねえよ。俺が求めてるのは芸術でも自然でもモニュメントでもねえ。造り物と一緒にするな。自然の様に最初からそこにあって、風雨(ふうう)が削ぎ取り容赦ない太陽と山の水が成長させたように流動的で、尚且つ人が目にしたときに安らぎを感じるような神秘と、緑森の中に紛れ込んでしまったかのような幻覚と錯覚を兼ね備えているもんだ。俺は芸術や造り物の域を超えたいんだ。何百年も前からずっと『そこに最初からあった』かのような、自然物を造りたいんだよ」

「それは一体……」

「オーパーツだ」松村京谷は言う。「モサンミッシェルみたいな馬鹿でかい遺跡みたいな、な」と。

「お前の学部何だっけ?」と橋部琢巳が問う。「もちろん社会学部さ。逸脱論大好きだからね」いつもいつも素直に経済学部と答えてやる義理もない。面食らったような橋部琢巳を見て、松村京谷はしたり顔でこう付け足した。


「経済学は経済学で面白いんだよ。世の中の仕組みと流れを知ってるだけで、周りとは格段に差がつくからね。騙されないし。」

「橋部くんも見習って何か自分の宿題探せば?」中村夢莉が心底心配そうな目で見つめる。

「統計学とか面白いよ。視聴率とか」松村京谷は閃いたとでもいうように手を叩いた。

「まあどっちにしても、松村くんにレポート書かせるのはもうやめなね。松村くんも、橋部くんのレポートやっちゃ駄目だよ」

「それは無理な話だな」


 松村京谷がレポートの代行を頼まれるとき、がちがちなレポートを橋部琢巳の名前で提出すると怪しまれることから、彼はいつも「今日もいい具合に手を抜いてくれよ」と条件を付ける。こんな条件でやめろと言われてもやめられない。いい具合に手抜きをして、手抜きだから自分のレポートよりも時間がかからないで終わるレポートに、一万も支払ってくれるのは橋部琢巳くらいだからだ。



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