表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/29

 死を覚悟した人間の顔は美しい。それは廃屋(はいおく)に置いて来た担任の顔を見て思ったことだった。美人は化粧しない方が美人だと聞いたことがある。その二つの理論を組み合わせると、美人は死にたがり、ということなのかもしれない。美と死はセットだ。そもそもが、だ。美しいと抱かせる人たちには、必ず死が絡んでいるのだろう。


 裏拍手をしてでもあなたに会いたい。舞い降りてきたあなたが、ムンクの叫びのような、ヘイホーみたいな絵面でも構わなかった。あなたに会えるまでのモラトリアム。シンギュラリティが何だと解説する学者が溢れかえる中、それよりも先にカタストロフィが来た。


 世の中は一概に否定できないことばかりだ、と何年か前の担任は言った。ラベリングして人や物の価値を量る。狂犬病を知らない若者は、「それは犬の病気じゃないの?」と疑問に思うかもしれない。角刈りで眼鏡にスーツの男性が、度を超えて礼儀正しい。風俗のボーイのようだ。そう話せば、風俗を知らない女性は「最低」「汚い」「女性軽視だ」と嫌悪を抱くかもしれない。


 嫌とかそういうことじゃない。ただ、なんとなく自分の中にできてしまった邪悪な感情を、外へ排出したかった。


 でも誰かに意地悪をするのは悪徳だと世の中は言う。だから発散させる方法がわからなかった。だから考えた。意地悪なのに意地悪だと思われない方法。(むし)ろ「ありがとう」と感謝されるぐらいの思惑を。


「アイスクリーム、か……」滑稽(こっけい)だと思う。鼻で笑ってしまうくらい。


 明日、大嫌いで大好きな二人に業務用のジェラートを送ってやろうと思う。「アイスを送った」その事実に、好きも嫌いも、善意も悪意も、くだらないだろう。アイスはおいしい、と、ラベルに書かれた名称と透明なトレイの向こうに見えるラムネ色が、我々にそう抱かせるのだから。


 だけども、もうそんな味覚も感情も、持ち得てはいなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ