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女神様は相応しい仕事をしたい

作者: まい

「共存を望んだ魔族や人類、何もかも全てを滅ぼそうとする、魔王の城は目の前! さあみんな、行くぞ!」


『おうっ!!!』



 オレは地球からの転移者、タケル!


 いきなり異世界へ召喚(らち)されて、これまたいきなり勇者になれ! だなんて言われて(はや)2年。


 家庭事情やつまらない学校での勉強でイライラして、周りへ迷惑をかけ通しだったオレはもういない。


 色々苦労もあったけど、その中で人間として大切なものを道中で寄った先の人や旅の仲間達から教わって、異世界(ここ)でオレは真っ当に生きるんだ!!


 その為にも、障害となってる魔王よ、覚悟しろ!


「タケル様! 前魔王の娘、ムメスはどこまでもついていきますっ!」


 そう、愛するムメスの為にもオレは……!!




~~~~~~




「えええぇぇぇぇえ!!? なんでそんな簡単に更正しちゃうのぉぉぉおお!!? アンタは地球(あっち)で札付きのワルだったじゃーーん!!!」




 絶叫が木霊(こだま)するここは、クジャーナと呼ばれる()()御座(おわ)す神域。


 そこでクジャーナは、もう何度目かも分からない、数えることすら飽きるほどの回数悶絶していた。


「なんでぇぇ!? 私、いつも魂が悪に染まっている悪いのを、問題のある別世界へ送ってるんだよ!?」


 彼女こそあの、正義の勇者たるタケルをかの世界へ送り平和に導くのみならず、数多くの異世界で起きる問題を解決できる人材を様々な世界から見つけ出し、(つか)わした偉大な女神である。


 これで女神に見出だされた人材を育てた世界の神は、光栄に思い笑顔で人材を送り出す。


「本来()ばれたり転生する予定の奴に操作して割り込んで、毎回悪人を沢山の世界から(さら)って送り込んでるのにぃ!!」 


 魅惑的な紫のウェーブロングヘア、心の深さを表す深緑色した切れ長の瞳、全てを見惚(みと)れさせる美貌(びぼう)のフェイスラインに程よく厚みを備えた唇と、見るものの理性を試す艶ぼくろ。


 悩ましいのは(かんばせ)だけではない。

 ボディラインも完璧で、細すぎず太すぎず、程よい肉付きと均整のとれた御姿。



 クジャーナは治める世界を持たぬ珍しい女神で、司る権能(けんのう)は、時空。


「それがなんで、あいつ()すーーぐ更正して良い子ちゃんになって活動して、アレだった世界がまともな世界へ変わってくの!!?」


 そして数々の世界を救う一助となる功績により、いつの間にか身に付いていた慈愛と成長。


 更に特異な経歴として、()邪神であった。


「悪い魂を捕まえて、時間が物凄く遅く流れる世界で素質を磨かせて、その記憶を消してから絶望の尖兵(せんぺい)として送り込んでるのに!」


 転生や転移時に、神から直接特別な力を授かるやり取りの有無に関わらず、まずクジャーナの薫陶(くんとう)を受け(肉体まで含む)下地を作ってから各地へ送られる。




「悪い子を使って世界を混沌(こんとん)と絶望に染めて、私の世界として奪い取ろう……なんて考えているのに、なんでいつも上手くいかないのよぉぉぉぉおお!!!」


 ひとしきり悶えたと思ったら、今度はカーペット代わりにしている畳へ、うつぶせで寝そべって無慈悲な両手平手打ちを連打。

 両足も微妙にビチビチさせている様は、とても愛らしい。


 この様子をクジャーナに仕える者達が見ているが、音声は彼女が他者に聞こえないよう空間をいじっているため、配下達には全く聞こえていない。


 その為に、配下達は今回も世界を正常化出来た嬉しさで、ゴロゴロバンバン子供みたくはしゃいでいるものだと判断して暖かい目をしている。


 あんな完璧な美しさを持つ女神が、こうやって無邪気な姿を見せる。 そのギャップに陥落した配下は数知れず。

 その中には、邪神にしか仕えない種族がいると言われても、違和感を感じない。


「私の配下達へ、送り込んだ異世界の連中に悪事を働かせようと仕向ける命令しても、ロクな成果があがらないし!!」


 更正しかかっている異世界人を見計らい、再び悪の道へ引き戻さんと配下を送り込む。


 実際、配下達は全力で女神の命令を遂行する。


 その結果、異世界人達は己自身の過去やってきた(おこな)いを見直し、改心する。


「私の計画が失敗すればするほど、現地の神から感謝されて、アンタの世界を奪いたいのよって雰囲気的に言いにくいし!!

 勇気を出して言ったら、またまたご冗談を……って笑いやがって! 本気だっつーの!!

 感謝の所為で失敗した配下を叱るに叱れなくて、余計イライラするぅ!!!」


 嗚呼、素晴らしきかな女神様。 人の振り見て我が振り直せ。


 それを意識させて悪の芽を摘んでやろうと、敢えて悪人の異世界人へ試練を与えるのだ。


「神から世界を譲るって言われても、正常な世界なんか欲しかないわよ! しかも他の神が持つ世界を奪ってこそ邪神!!

 あーー、世界が欲しいぃぃぃいい!!!」


 クジャーナは功績により、数多(あまた)の世界に存在する神々から主神として招かれているにも関わらず、全てを断り特定の世界を贔屓(ひいき)しない慈悲深さは本物だ。




「私は邪神のはずなのに()の字がいつの間にか消えてるし、禍々(まがまが)しくてお気に入りだったオーラが、キレイ過ぎて目の潰れそうなオーラへ変わってるし!!

 なんで何もかも上手くいかないのよぉ!!」


 今日も良い世界へ導けたと喜ぶ女神様を配下達は見て、満足感と誇らしさを胸に、女神様の為にもっと働こうと決意するのであった。


「ああ、もう良いわよ! 最近神としての力が増してきてるし、混沌の極地……集団異世界転移をしてやる!! 次に狙う世界よ、せいぜい絶望するが良いわっ!!!」


 おお慈悲深い女神よ、今までは多くても数人だったのに、より多くの悩める異世界人を導こうと言うのか。




 此度(こたび)の女神の決意を知った神々も、我ら子羊の様に涙したと聞きます。

女神クジャーナ

 クジャーナ→くじゃあな→じゃあくな→邪悪な

 何をやっても(世界にとって)良い展開になってしまう運命をもつ、元邪神。

 本人はなにがなんでも邪神でいたい。


クジャーナの配下達

 本物の善神だと崇拝しているものがほとんど。

 一部邪神としての心意気に()かれて仕えているが、悪い事して神々から感謝されるこの職場も悪くないと考えていて、このままでもクジャーナが邪神に戻っても、正直どっちでも良いと思っている。


タケル

 とくに設定は用意されていない。


ムメス

 ムメス→むめす→むすめ→娘 ただそれだけ。


神々

 クジャーナの本心は知っているけど、運命を見通せる女神によって悪事が出来ない邪神だと見抜かれ周知も済んでいるため、脅威と見られていない。

 むしろウェルカム。 すすんで利用する気満々。

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[一言] これは紛れもなく女神ムーブ
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