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母への言い訳

「へー、ファンクラブ入ったんだ?」

「なんか、そういう流れになっちゃって……」


 面白がる美蘭に、陽太はぼそぼそと言い訳をする。


「ミランダAって、最有力候補の二人のうちの一人ね」

「あ、そうなの?」

「それも知らずにファンクラブ入ったの?」

「だーかーらー!なんとなく、そんな流れになっちゃったんだってば!もうっ、これ見てよ!」


 にやにやしている母に、陽太は透明のクリアファイルに入れた絵を渡す。


「何?」

「和人君にもらった絵だよ。凄くね?あの子まだ小二なんだよ」


 投票の後、和人は八十八枚の絵の中から、気に入ってる一枚だと言って陽太に一枚くれたのだ。


「神様に見せるためにって、願掛けで百枚描くつって、今八十八枚で――。あと十二枚描くのも、十三枚描くのもそんなに変わらないから、友達になった記念にって……」


 住んでるマンションの屋上に日の出前に上がって、上ってくる太陽を見ながら描いたという。

 それは、屋上の手すり越しに見える街の家々を背景に、朝日に白く照らされ歌うミランダAの姿。


「――綺麗ね……。祈るように歌う姿がよく描けてるわ」


 じっくり見つめたあと、真顔になった美蘭がそう言う。


「これは……うん、絆されるわね」

「絆される――。うん、そんな感じ。ホントに真剣に、必死に描くんだよ……」


 美蘭から返された絵を見ながら、陽太は和人が絵を描く姿を思い出しながら言う。


「ふむ……。見に行く?」

「はい?何を?」

「最終決定選よ。行きたい?」


 そう言って、チケットを二枚ぺらっと陽太へ渡す。


「なんでこんなの持ってんの!?」


 申し込みはネット受付で抽選だったが、初回は申し込みが殺到して回線がパンクし、仕切り直しになったほど。

 当然のごとく、プラチナチケットと呼ばれていて、陽太は外れた――。


「仕事関係の友人にもらった」

「映画関係の仕事なんて、受けたことあったの?」


 美蘭はフリーの商業イラストレーターをしている。

 芸能関係の端っこに引っかかるような依頼も無いではないが、

 プラチナチケットがもらえるほどの関係先があったとは思いもしなかった。


「だから、私じゃなくて友人よ。この映画の製作関係に、ちょこっと引っかかってたの。陽太が大ファンだって言ったらくれたの」

「はえー、すっげえ……。あ、行きたい。俺、もらっていいの?」


 欲しかったのに取れなかったプラチナチケットに、ついつい小躍りしてしまう。

「あんたにってもらったんだから、良いに決まってるでしょ。二枚あるから、その画伯な子と一緒に行けば?」

「母さんが良いならそうする」


 母親の友人が二枚くれたのは、親子で行けるようにという配慮だろう。


「私は別にファンじゃないもの。かまわないわ」

「ありがと!」


 小躍りが止まらない陽太に笑うしかない美蘭だった。


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