偽物たちが現れた!
魂の部分でミランダを認識している陽太です。
「あらら~。三人目が現れたんですって!どうするんでしょ、これ?」
TVニュースを見ていた美蘭の呆れ声に、陽太は声を返す。
「偽物!」
「あら、まぁ……。言い切るわねぇ」
面白そうに美蘭が問う。
「だって、ぜんぜん歌へったくそじゃん!体型だってガリガリのがっちがちで、動きにしなやかさが欠片もない!」
「ほー。さすがミランダ研究家!」
「母さん、面白がらないでよっ!」
マジ怒りな声に、美蘭はくすくす笑う。
完全にからかっている。
「しかたないわよ。例の映画、興行成績が良かったんでしょ?」
「百憶超えしてる」
「映画って、十億超えたら大成功なんだから、その十倍って超大成功よ。その続編作るっていうんだからねぇ……」
「……」
TV画面を見ながら、陽太は額にしわを寄せている。
ニュースが報じている騒動とは――。
陽太お気に入りの例の映画の続編が作られることになったが、その第一作に出演していたミランダと連絡が取れないことが事の起こり。
彼女を出演させたのは、監督の白木全と言う人なのだが、この人が続編を作る気はないと雲隠れ。
しかし、二匹目のどじょうを狙い、どうしても続編を作りたい配給会社&映画会社は、違う監督を据え次作の準備を始めた。
主役等のメインキャストは何とか1作目のキャストを揃えたが、端役ながら前作で人気の出たミランダも、再登場させたいのに見つからない――。
何しろ、本名も素顔も何もかも不明のまま。唯一知っている前監督は雲隠れ……。
本人にやる気がないのは、今まで出てこない事でわかっている。
でもって、一作目のミランダは冒頭で爆死しているので、再登場させると言ってもまったく同じは無理。
ということで――。
人気映画の続編で成り上がりたい人々が、「私がミランダ!」だとか、「ミランダの後継者は私!」と、名乗り出てきたのだった……。
「正直、どんぴしゃの本人じゃないってお互いわかった上での茶番よねぇ……。だから、似てなくても出てきてる感じ」
「これ、絶対仕掛けてるヤツいるだろ……」
「あら、どうして?」
続編映画が作られるからといって、それだけで自称ミランダが、こうも次々現れるわけがない。
「あー。番宣の一種だってこと?あり得るわね。でも、そういうのもわかった上で楽しんでこそ、娯楽じゃない?」
「馬鹿みてー。あのミランダでなきゃ、全部偽物だっての!」
「あら、どうして?」
「だって、あれがミランダだからだよ!」
「理由になってないと思うけど?」
美蘭が首をかしげるが、陽太はそれに答えない。
「こんなの、ありえねーよ!」
ブツブツ言いながら、不機嫌にチャンネルを変える陽太は、嬉しそうに微笑む美蘭に気が付かなかった。