1枚目 夏の残り物
あなたはどんなタオルが好きですか?
このお話は『ヒマワリ商店街年末ジャンボ福引会』の4等賞景品になった『ごくごく普通のタオル』から見た人々の日常です。
『カランコロン、カランコロ~ン』
年末の冷たい空気の中で響きわたるのは、ジングルベルではなく福引の鐘の音。
ここは年末恒例の『ヒマワリ商店街年末ジャンボ福引会』の初日・・・らしい・・・
『らしい』と伝聞形なのは、僕が段ボール箱から出されて4等賞の棚に並べられたのが、ついさっきの出来事だから。
『よう、新入り。』
前にいる『少しだけビニールがくたびれた』タオルに話し掛けられた。
僕を『新入り』と言うからには、先輩なんだろう。
先輩ならば、ここはひとつ挨拶をしておこう。
『初めまして。よろしくお願いします。』
『お前ら、50枚で来たのか?』
『はい!先ほど到着いたしました。同期の半分はまだ段ボール箱の中で待機しております!』
『ふぅん・・・まぁ段ボールの中にいる時が一番幸せかもな・・・まぁ、あまり期待するなよ・・・』
なんなんだ?このひねくれた感じは?
確かに僕らは、作られてすぐに『4等賞 ヒマワリ商店街』と書かれた紙にくるまれ、ビニール袋に入れられ、段ボールに詰められここまできた。
道中は
『どうせなら可愛い子に使われたい』だの
『セコンドにリングへ投げ込まれたい』だのと、
『どんな風に使われたいか』と言う夢を、みんなで語り合っていた。
だから、世間知らずっちゃ世間知らず。
でも、僕らは使われてなんぼのタオルですよ?
それは、まだ『使われてもいない貴方』も同じではないですか?
僕の後ろにいる同期が無言になる。
『あの・・・先輩?・・・』
『あぁ、俺たちもそうだったから・・・』
自嘲するように先輩が笑う。
何でも、先輩は『ヒマワリ商店街サマージャンボ福引会』の時にここへ来たらしいが、在庫として残ってしまって、歳末ジャンボ福引会の景品となったらしい。
残り物になったコンプレックスで、ひねくれたのか?
せっかく真っ白いタオルに生まれて来たのに、くすんで見えて台無しじゃないか。
諦めたように先輩が言う
『まぁ、この時期だ。大掃除で使われて、すぐに捨てられるだろ』
え?1回で捨てられる?
洗ってまた使われるんじゃないの?
使われて洗われて使われて・・・
僕らの人生・・・もといタオル生ってそんなもんなの?
空っ風だけではない『寒さ』を感じ始めた。