98.至る
メーメ様がミルキィ様をお姫様抱っこをして、元来た道を急いで戻る。メーメ様って、意外と体力があるなぁ。
ミルキィ様は泣いている。
「白じゃないくせに酷い」
という事を泣き漏らしている。
その後を、私と、岩を持ってくださっているトラン様がついていく。
岩、きっと重いのに。
すみません。持ってくださって有難うございます、トラン様。
***
扉がたくさんある場所まで戻って来た。
「待ってください、ここ、やっぱりちょっと」
自分でも何を言っているのか分からない。
とにかく、ここで休まなくちゃ、と思ってしまう。
私が足を止めてしまったので、トラン様とメーメ様も立ち止る。
「どうした。早く戻った方が良いんじゃないのか?」
「はい、でも、なんだかここにいた方が良いような、分からないのですが」
「ここか? ・・・ミルキィ。私たちは修復を頼まれたはずだが、それはどこなんだろうな」
「・・・分かりませんわ」
「そういえば・・・来る時に扉を閉められてしまったが、まさか修復を完了しないと開けてもらえないのだろうか」
トラン様の言葉に、メーメ様も驚いている。
「まさか。もしそうなら、私たちはこの扉の先を全て調べないといけないが」
「すみません、あの、上手く言えませんが、あの、ミルキィ様、ここ、気になりませんか?」
私はミルキィ様に助けを求めた。分かってくださるのでは、なんて期待している。
ミルキィ様は首を傾げて、私をじっと見つめた。
それから、しばらくしてから、口を開かれた。
「どう思われますの・・・?」
「その、この部屋で休みたいって思ってしまいます・・・」
「メーメ様、降ろしていただけますか・・・」
「あぁ」
ミルキィ様は部屋を見回して、それから床で視線を止めた。
「何かあるというのなら、私は、下が気になります・・・キャラ・パールさんはいかが・・・?」
「あ、そうかもしれません。扉の方は気にならないんです。そっか、だから座りたくなるのかもしれません、下が気になるのだとしたら・・・」
ミルキィ様と私で、座り込んでみた。
ん?
丁度、間に少し窪みがある。
何かが外れたのかな?
指で触れた。
カチ、と音が聞こえた。
そして、宙にバッと白いモフモフ・・・じゃなかった、ケセランが舞った。
「ケセラン!」
メーメ様が驚いて声を上げる。
幻想的な光景・・・。
***
「あれ」
瞬く。白いフワフワが溢れている。
傍にミルキィ様もおられる。下を見て少し驚いておられる。
視線につられて下を見れば、ツルツルした金属の板の上に乗っていた。
「適任者を選ぶものに似てる・・・」
少しだけ困ったように呟いたミルキィ様は立ち上がり、数歩前に歩いた。
ケセランがフワフワ一緒に動く。
私は床の金属の床を撫でてから、あれ、と気づいて周囲を見回した。
「トラン様・・・? メーメ・ヤギィ様?」
白いフワフワは一杯いるけど、お二人の姿が見えない。
あ、胸元の通信アイテムが震えている。トラン様だ。
ギュッと握る。
『大丈夫か! 今どこにいるんだ!』
「大丈夫です。どこかは・・・分かりません。ミルキィ・ホワイト様もおられます」
『周囲に何がある。どこにいるか分かるか?』
「えー・・・と、ケセランが一杯出ていて、真っ白いフワフワで・・・あ、」
ミルキィ様が私の傍に来て、袖を引っ張った。
「え、なんでしょう?」
『どうした!?』
「ミルキィ・ホワイト様が、私の袖を引っ張られただけです」
『そうか・・・』
ほっとしたトラン様の声。ものすごく心配してくださっている。
その間にもミルキィ様が引っ張られてついていく。
数歩で、白い壁が崩れているのが見えた。
「これ。大変・・・」
ミルキィ様がため息をついた。
『キャラ・パール嬢?』
「あ、ミルキィ様が、多分直すところを、見つけられました。・・・え、これ? 本当に?」
『どうしたんだ?』
「ものすごく、」
答えながら、どこか茫然と見回す。
「大きい壁です・・・これ、直すんだ・・・」
***
私とトラン様が使っている通信アイテムは、使用者本人にしか使えないようになっているらしい。
だから、ミルキィ様やメーメ様からの言葉も伝えながら、状況を確認する。
どうやらメーメ様は、婚約者のミルキィ様が「白」だから、神殿にも色々詳しいようで、助かった。
多分、私とミルキィ様は適任者だから、修理の場所に転送された。
ただ、サポート役が残されてしまったのは、そういうものなのか分からない。
そして、私もミルキィ様も、目の前に広がる壁が、直すべきものだと思うから、それできっと正解。だからここで修復作業に入る。
ただ、多分これは数時間で直せるようなレベルじゃない。多分、泊まり込みしないといけない。
そこで、メーメ様とトラン様は一度、神殿の人に会って、以前の状況を確認してきてくださることに。
加えて、トラン様は岩を持っているから、多分、神殿の人なら私とミルキィ様みたいに精霊の声が聞こえそうなので、神殿の人に事情を話してお渡しすることになった。
そして、私とミルキィ様は、コツコツ修復に手を出す事になった。
***
『岩は神官に渡した。精霊の声も聞こえていた。驚いていた。別の人たちが対応するという事だ』
「はい」
トラン様から状況を教えていただく。
『それから、物資が転送できるはずらしい。食料などを取り急ぎ送ってみる。他に必要なものがあったら連絡してくれ。どうも、終わらないと出れないらしい』
「そうですか・・・」
なんだか酷い話だけど、ここで言っても仕方ない。
「分かりました。ありがとうございます」
ポワ、と後ろが光った。見れば、豪華な食事が載ったテーブルが出現していた。
『メーメ・ヤギィ様が、ミルキィ・ホワイト様に、『長期戦になるようだから、無理をせずに』とおっしゃっている』
「はい」
「・・・『はい』とのお答えです」
少し待ってみたけど、それだけなのでとりあえず答えを返しておく。
『きみも無理をするなよ』
「ありがとうございます。トラン様も」
『あぁ』




