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96.アウル様とサファイア様をなんとかしたい

こんな状況での話し合いが冷静であるはずはないけど、結果として、私一人で行くことに決めた。


そして、行くにあたっての一番危険は、サファイア様の魔法のように見える。

巨人族の脅威が分からないぐらいだ。


メーメ様が叫ばれた。

「アウル様、サファイア・ブルー様! キャラ・パール嬢を庇護対象に!」


戦闘中のお二人が私たちに気付いて振り向く。揃って頷いてくださった。


そして、私はその場に走り出した。

一刻も早くしないと、あの精霊が踏みつぶされてしまいそうで焦っていた。


「『重力異常』!」

サファイア様が魔法を使われた。

ギッ、と巨人族から軋むような音がした。

ドキュ、ドキュ、と音もする。アウル様が撃っている。


ところで私! 足が遅い!

わー! テニス部でちょっと走り回ったりしたけど、もっと早く走って自分!


緊張しているのか恐怖なのか、足が上手く動かない気がする。

「右に避けろ!」

トラン様の声に、慌てて右に走る。

ヒュッと左側に何かが落ちてきた。何!?


それでも目標に向けて走る。

上からバラバラと岩石が落ちてくる。怖い、怖いけど!

「来て!」

私は、倒れ込んでいるように見える、女の人にも見える、半透明の精霊に手をのばした。

「起きて!」


ふと顔を上げた精霊は、私を見てほっと表情を緩めたように見えた。

両手を伸ばして、私に抱き付こうとして来る。

受け止める。

最近トラン様がこうやって抱きしめてくださっていて、抵抗などなかった。


ポゥ、と淡く光って、姿が消えた。

「!」

「もう戻って、キャラ・パールさん!」

ミルキィ様が叫んだのが聞こえた。


慌てて振り返る。

目の前、ふっと暗くなり、ブン、と何かが音を立てて横に通っていった。

驚いて立ち止った。


地面が揺れている。上から、パラパラと石が降っている。

サファイア様が新しい魔法を唱えて巨人にかけた、けど、巨人の傍にいる私の目の前にも赤と緑の火花が散って立ちすくむ。


トラン様がこちらに駆けてこられたのが見えた。

ミルキィ様が両手を合わせて祈るようにして私を見ている。

メーメ様が神殿で貰った本を取り出した、私を見ている。私の周りに金色の光が満ちる。本も金色に光っている。


「キャラ・ ・・・!」

トラン様が私の名前を呼び掛けて、手を伸ばそうとしている。必死で。


我に返って、急いで駆けだす、けど上手く走れない、遅い、時間が、うまく流れない。


また黒い影がふと降りてきて、立ちすくむ。

パン、とトラン様が上を撃った。

「早く!」

私の腕をトラン様が取る。また頭上を打ってから、私の腕を持ったまま走り出す。


引かれるようにして走り出す。


***


ハッ、ハッ、ハッ、と息を吐く。

私は汗だくだ。そんなに運動していない、だけど。


私たちが退出したから、またアウル様とサファイア様が派手に戦いを広げている。


「どうする」

メーメ様がミルキィ様に声をかけた。

「ここは、頼まれたところじゃないわ、メーメ様。だって、修復と言われたの。別の、争う必要がないことだったのに」


「なら、どうすれば良い」

「戻らなくちゃ。キャラ・パールさん。メーメ様にお姫様抱っこ、今ならさせてあげる・・・!」

「ちょっと、待ってください!」

トラン様が声を上げた。なお、息切れを起こして座り込んでいる私の傍にいてくださっている。


「キャラ・パール嬢には俺がついています。あなたの最大の譲歩かもしれないが」

「すまないな、トラン。私は、具合の悪い人を運ぶのに協力は惜しまないが。ところで、アウル様たちをこのままに残していいのか?」

メーメ様の問いかけに、プイ、と嫌そうに顔をそむけるミルキィ様。どうやらアウル様とサファイア様を嫌っておられるようだ。


ポゥ、と私の胸元が光った。

何?


「どうした」

トラン様が心配して尋ねてくる。

「わかり、ません」

息を整えようとしながら、胸元に触れる。あ、通信具かお守りのどっちかだ。


2つとものチェーンを引っ張り上げると、お守りの方が光っている。

「これは?」

「お守りです。呪いのお店で買った、ネコの・・・」


カゴを開けて、壊れないようにと巻いていた布を外す。

小さなネコのお守りが、やっぱり光っていた。


だけど、布をとったからか、光が集まって人の形になっていく。だけど、随分小さい。握りこぶしぐらいのサイズだ。


『トリーは、おともだちなの。なのに怒らせてしまったの。トリーを助けて。我を忘れてしまっているわ』

声がした。

「トリーって、あの巨人ですか?」

「・・・キャラ・パール嬢。まさか話が成立しているのか? ミルキィ、きみも聞こえるか?」

メーメ様が確認すると、ミルキィ様はコクリと頷く。

自分だけじゃないとホッとした。

トラン様たちに言われた事を説明する。


「ミルキィ様、どうしたら良いでしょう・・・」

と私。

ミルキィ様は眉をしかめて、向こうの空間で戦い中の巨人を見た。


「巨人族は、死んだらどうなるかを、メーメ様ならご存知でしょうか・・・?」

「記録が正しいか分からないから何とも言えないが・・・核さえ無事なら、他のものに埋め込むことで、また蘇ることができた、という記載を見たことがある」


「核・・・?」

「そこまで私も詳しくない。私が読んだ伝承にはそれ以上載っていない」


メーメ様たちの会話を聞いて、トラン様が私に聞いた。

「それは核が無事なら、埋めればいい? きみのお守りに入っている精霊はどう言っている?」


様子を見てみる。

精霊は泣いてしまった。


「泣いてしまいました」

「ならその方法では駄目なのか。まず、アウル様とサファイア様に話を通さなくては。私が行ってくる。ミルキィを頼む」

「メーメ様が? 俺が」


「アウル様と親しいのはどちらかと言えば、年齢の近い私の方だろう。トランは銃を持っている、危なそうならそれでここから援護してくれ」

「・・・はい。ご無事で」


***


「駄目だ、全く話を聞かれない」

戻って来たメーメ様。どっと壁にもたれかかった。汗が酷い。

ミルキィ様が慌ててハンカチを出して汗を拭って差し上げている。



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