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95.何かの異変

右から3つ目の扉に入って、少し進む。

なんだか、寒気がする。なんだろう。実際寒いのかな。


「大丈夫か?」

「寒くありませんか、ここ」

「俺はむしろ暑いぐらいだが・・・。体調、大丈夫か?」


そんな話をしていたら、後ろから音が聞こえてきて、ギョッとして振り返る。

「何だ。足音か?」

「どなたですかー・・・!?」


警戒する事、数秒。


「私だ。メーメ・ヤギィと、ミルキィだ」

ミルキィ様をお姫様抱っこして、メーメ様が私たちに追いついた。ミルキィ様、少し落ち込んでいるし怖がっている。


「きみたち2人が行ってから、きみたちが心配だとミルキィが。良かった、追いつくことができて」

「はい。ただ、アウル様たちの姿が一向に見えません。・・・あのお二人は足も速い、追いつけるか心配になります」

メーメ様とトラン様が会話している。


「ミルキィ様、大丈夫ですか・・・?」

と私はそっと話しかけた。

「・・・」

ミルキィ様は眉をしかめたまま私を見て、そのままの顔で俯いた。


「メーメ様、行きましょう・・・」

「分かった」

メーメ様とミルキィ様が動き出す。

トラン様と私は、お二人の前にいるので、私たちも一緒に動き出した。


やっぱり、寒い・・・。

気が付けばつい、両腕をさすっていた。


「大丈夫か? メーメ様とミルキィ・ホワイト様は温度は大丈夫ですか?」

「私は大丈夫だが、ミルキィは具合が悪いのかもしれない。ミルキィ?」


あれ、心臓がドキドキしてきた。なんだろう。恋の動悸とかそういうのじゃなくて、変だ。

「ト、ラン様、すみません。ちょっと・・・」

「どうした」

トラン様の腕に手を伸ばす。すぐに立ち止まって下さった。


「ミルキィ?」

ガチガチ、という音がする。

「寒いのか? 大丈夫か」

ミルキィ様も、寒いみたいだ・・・。


ゴッ・・・!


急に、地面が揺れた。

「!」

「なんだっ!」


立っていられなくて思わずしゃがみ込む。

トラン様も隣に、腕を掴んで下さった。


少し揺れて、収まる。


「地震か?」

「ここは地下だ。危険だ、すぐに引き返し戻らなければ」


「違う、メーメ様・・・あの女、神殿の秘宝が狙いですわ・・・!」

「秘宝? 何だ、ミルキィ」


なんだか、気持ちが悪い。ザワザワする。

答えはミルキィ様が分かるかもしれない。


「大丈夫か、顔色が悪いぞ」

そう言うトラン様も顔色が悪い気がする。


「ミルキィ様、私、サファイア様の様子を確認しなくちゃって、思うんです」

私の言葉に、ミルキィ様はコクリと頷く。


「意見が一致しているのか」

「行った方が良いでしょうか」


皆固い顔になりながら、先に進む。


***


ゴウン、ゴウン、という音がどんどん近づいていた。

恐る恐る、だけど確かめなくては、という気持ちが強くて、通路の出口の向こう側を覗き込む。


「しつこいわね、『稲妻の光』!」

サファイア様の声がして、辺りがパッと光る。

ゴゴーン、と音が轟き、中央、何か大きなものに火花が走るのが見えた。


ドキュ、ドキュ、と音がする。

「倒れない、サファイア!」

「分かってるわ!」


何?

巨大ロボみたいなのに、サファイア様とアウル様が立ち向かってる。

サファイア様は魔法を使っているようで、アウル様はライフル銃を構えている。


「世界観・・・」

ボソッと、そして茫然と、隣のトラン様が呟いた。


同感だ。

ここは、乙女ゲームだったはず。多分。あれ? 違ったの?


「あれは、古代、巨人族・・・なぜここに!」

メーメ様が驚いている。

なんですかそれ、聞いたことも見たことも・・・。


「あっ!」

私は思わず声を上げた。

「あ、あそこ、女の、精霊? 誰か倒れてます!!」

「え? どこに」

とトラン様が目を凝らしてくださる。


「あの、巨大ロボの足元!」

「ロボとはなんだ? 古代の巨人族だぞ?」

メーメ様が指摘して来る。なんだって良いですが、はい、すみません!


「ん・・・降りるか?」

メーメ様がミルキィ様を降ろされた。


「キャラ・パールさん」

「は、はい!」


ミルキィ様がフラフラッと、私に手を伸ばされる。

「見えているのね・・・? あれは守護の精霊なの、ヴィクトリー。私にも見えるの」

「ミルキィ様・・・!」

「何も見えないが・・・」

「彼女たちにしか見えていないんだろう。だとすると、恐らくアウル様にもサファイア様にも見えていない可能性があるな」


私は、ミルキィ様の差し出す両手を握っていた。同じものが見えている同志だと思うと、つい。

前に呪われたことをうっかり忘れた。


とにかく。

「ミルキィ様、私、あの人を助けてこちらに連れて来なくちゃって思います」

「えぇ。でも、どうしましょう。激しすぎるわ・・・私、とても、あの調子乗り女の魔法の中を、行く自信が無いの・・・」

「ミルキィ、その言い方を止めなさい。良いか、思っていても口に出さないでくれ」

メーメ様が注意をしている。


「わ、私、行ってきます」

私はミルキィ様の手を握りつつ、そんな事を口走っていた。

コクリ、とミルキィ様も、まるで長年の親友のように私を信頼した目で、頷いた。


「お願い。メーメ様があなたをサポートしても良いの。あなたのトラン・ネーコ様より、メーメ様の方がきっと優秀だから」

「・・・待ってください」

トラン様が会話に口を挟んでくる。

「そうだ。ミルキィ。それぞれには役割がある。きみを守るのは私の役割で、キャラ・パール嬢を守るのはトランだ」


「だけどトラン・ネーコ様・・・」

ミルキィ様はチラリ、とトラン様を流し見て、がっかりしたように肩を落とした。

「俺の何が駄目なんですか!」

「落ち着け、トラン」

「トラン様! 大丈夫です、私一人で行ってきます」

私がミルキィ様と両手を繋ぎつつ、トラン様に力強く頷くと、トラン様が目を見開いた。


「きみは! 俺は足手まといか!?」

「いえ、そうじゃないです! でもトラン様、あの人が見えていないから、だったら私1人で行った方が気づかれないかもって」


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